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サン・エドゥーノースの黒刃  作者: ワガドゥー男子
2/3

プロローグ:中

「ここからが踏ん張りどころだーーー!女王様の王城に侵入される前に絶対に奴等を追い返すぞ!」

「「「「おおおーーーーーう!」」」」


兵を鼓舞するように声を張り上げたサン・エドゥーノースのゴルドン将軍は手本を見せるように、金髪ショートを汗が流れていくのにも気にせずに、


バシャーーー!!

「ぐおー!」


バシャー!グシャー!

「うぐ!がっー!」


次々と敵である聖国軍兵を屠っていく。


「くー!舐めんじゃねえぞーー!小国カスの分際で聖なる我がネリティーシス聖国軍を相手に粋がるなー!これでも喰らえ!【中爆炎渦激ヴァールニォル】!」


ここは後ろにある王城へと続く町の大通りで、防衛に当たっているのは魔力保持量がAクラスのゴルドン将軍が直々に率いる第2師団という部隊だ。他に王城へと通れる道路もいくつかあるので、第2師団を複数のチームに分けて防衛任務に当たらせているんだけど、ここのメイン通りだけが将軍直属の大隊が引き受けている要衝だ。


その要衝を、前方100メートルから敵の魔法旅団による【中爆炎渦激ヴァールニォル】という火力申し分ないの魔法砲撃が放たれ、轟轟と唸る紅蓮の炎が

大渦のようにオレンジ色の川として大通りを呑み込まんとする。


「せやーーーー!」

ビョヨーーーーーーン!!!


フシュ―――――――――!!しゅうううぅぅぅ........


そんな莫大な火の川が本流として向かってきた凄まじい魔法砲撃だったのに、涼し気な顔を浮かべるゴルドン将軍が何の焦りも見せながら冷静に彼の愛用の魔剣、イグリシアスの刃に自身の魔力を通して一振りしただけ。


たったそれだけの動作で、自分の魔力が纏われた魔剣イグリシアスが苦も無く【中爆炎渦激ヴァールニォル】をまるで実害のない霧みたいに打ち消し、消滅させたのである。


「なーー!?ななーなんだ、あいつは!!?」


前方の魔法旅団の指揮官であるロチャード准将が驚きを隠せずにいるようだ。それも無理のない話だ。

何故なら、彼と部下の魔力すべてを含めての1500人分の【中爆炎渦激ヴァールニォル】が一切の効果を成していないからだ。


「じゅじゅじゅじゅ准将閣下!どどどどうしますかそれーー!?全然効いてないじゃありませんか!??」

「もももーもしかして俺達ピンチなのか!?」


各々に諦めの心境が入っているか、部下が恐怖のあまり口調が変になってしまった。


「え、えいーー!こうなったらまたぶっ放せばいいだけだ!何度でもな!またも魔力を貸せ!空になるまで聖国のために尽くせ!」

「いや、それには及ばないぞ?」

「えー?」


ゴルドン将軍が敵の魔法旅団の指揮官にそれだけいうと、

バサーー!


喉を切り裂かれた指揮官であるロチャード准将だけが血を噴出させながら倒れていく。


「なななーーー!?ロチャード准将閣下ーーー!?」

「なにびっくりした顔になってるんだ?次はお前達の番だろうが」


それだけいうと、次々と切り刻まれ倒されていく聖国軍の魔法旅団の兵士達。


..................


........



サン・エドゥーノース王国のエドゥーサンテ王城の謁見室にて、ホール中央に堂々と映し出されているのは魔法映像による戦場中継だ。

ついさっき、ゴルドン将軍率いる第2師団に殲滅されている敵軍の魔法師団の死体の山が映されているのだ。


「さすがはゴルドン将軍だね。いい戦いぶりをしているようで何よりだ~。これで時間を稼げるのが確実だな」

「...確かに彼の働きは想定内の範囲なんだけれど、油断は禁物よ?」


10代後半らしき少女が映像を横目で見ながらゴルドン将軍の戦績を褒めているところに、玉座に腰を下ろしている30代前半の女性が意見を述べている。


どっちも肌が白くて頭に金髪をしている。少女のそれは後ろのロングヘアーを三つ編みで束ねながら、前髪はボリューム感あって横髪に至っては少しぐるぐるとドリル型をしているようだ。


でも、玉座に腰かけている女性の髪はさらさらとあっちこっちで流れていて、束ねずに腰の辺りまで伸びるロングヘアーをしている。


「ふふ、お母様ってば~いつも慎重すぎるんだよね~?だから前からも言ってるじゃない~?我が軍の誇りであるゴルドン将軍だけじゃなくて、私と英傑女王とも謳われるお母様の力を合わせれば十分だって~!」

「だといいのだかれど...」


バコーーーーーーーーーーー!!!

「へえー?お前ら二人だけでオレを止められるとか、本当に思ってるって訳?寝言は寝てから言うんだな!」


「「ーーー!!!??」」

いきなりそこの謁見の間へと続く城のドアがぶっ壊された。それにつれて、二人のどっちかが発動したと思われる【魔法映像エクレンス】の魔術も注意が途切れたことによって解けてなくなった。


「誰だ貴様はーー!?」

警戒するように自分の母親らしき女性を庇うように前へと立ちはだかって剣を構えている10代後半らしき少女がそう聞いてくるが、


「おっとー。これは失礼。オレはロデリックだ。ロデリック・フォン・ネイーズグラントだ。サン・エドゥーノース攻略作戦における我がネリティーシス聖国軍の最高司令官だ」



「ロデリック・フォン・ネイーズグラント...聖国軍でもあまり有名な方ではない気がするんだけど...」

「聞いたことないんだね。貴様、どうやって大軍をつれて地下の転移装置を通ってきたのか?こちらからは封鎖されるように禁呪詠唱がかけられてるんだけど...」

王族らしき二人の親子による疑問に、


「くくく...軍に入って数か月間で前の第2師団の将軍に決闘を挑んで勝ち得たポジションだからね。オレのことを知らなくて当然だ。それより、確かに禁呪がかけられていて転移装置を使えなくされているようだが、テルノイズ遺跡ってところ知ってる?」


「テルノイズ遺跡?国境を越えて距離も近いアネツ渓谷の南の麓にあるそれ?」

「そう。あそこの地下でこの首都ペテライネスへと続く転移装置を発見できてね、でも向こうには禁呪詠唱がされていて転移できないようになったんだよね?

それで、オレは自分の魔力の80パーセントを費やして無理やりにあそこからこじ開けるように魔力注入したんだよ」


「ーーー!?」

「ば、バカな!禁呪詠唱、【禁行メルドサイード】はそう簡単にごり押しの魔力でこじ開けられないはずだ!どうやって貴様がそれを!?」

疑問を声にした少女へ、


「さあな?オレが強すぎるからかな?くく....」


「ーー!【聖白潔実オールレーン!絶対防衛の巨大魔力障壁エールメラグリア】ーーーーー!!!」

少女とロデリックの会話が終わらぬうちに、警戒感最大限な顔になっている母である女王らしき女性がそんな詠唱を唱えた。


シャー――――ン!

すると、聖なる白い光で構成された綺麗な文様が描かれている魔法障壁が親子二人を身を包み始めている、それも半径10メートル以内に。


「ほう?心が清き、無実なる意思だけが纏える5倍率で上乗せできる全能力向上の【聖白潔実オールレーン】に、そしてまたも第6階梯として最高級の

【絶対防衛の巨大魔力障壁エールメラグリア】までも同時に自身達へかけられるとは....さすが英傑女王様といったところかな?くくく....」

「これで、貴方からは何も出来ないようにしているのよ。さあ、我が娘オデットよ、もっと側へ寄りなさい。ゴルドン将軍が外の敵を片付け終えるまでに待とう。そうすれば、戻ってきたら3対一で彼を圧倒できるわ」

「承知しました、お母様」


とロデリック将軍からの攻撃が絶対に届かないと安心しきった表情をする女王に、

「それはどうかな、英傑女王さん?何故なら、こちらへ侵入する前に、巨大魔獣ランダルファーズを解き放ってやったぞ?お陰で今頃はお遊びの最中だろうよ、お前達が希望を託したあの将軍って....さあ、そろそろオレの魔力も回復しているところだし、お前達のあの【絶対防衛の巨大魔力障壁エールメラグリア】でも転移装置の禁呪と同じ要領でごり押しの我が魔力全てでこじ開けさせてもらうぜ」


それだけいうと、手の平の先を金髪女性である彼女達へと向けようとするロデリックなのだが、


「いいえ、『それはどうかしら』といえる立場は我々にあるのよ、ロデリック将軍よ」

「お母様?」


「確かにロデリック将軍は妾達より強いかもしれないわ、オデット。まともに戦えば、ゴルドン将軍なしでは妾達だけで凌げるかどうか初めて不安になっちゃうぐらいよ。だから、お出で、ルイージアよ。【異界の召喚術メールメライ】を使うわ」

「かしこまりました、女王陛下アブリエール様」


まるで最初からそこにいるかのように、透明化魔法らしきものを解いてやっと障壁の中で姿を見せる女神官のような出で立ちをしている銀髪の20代前半らしき見た目の女神官。


「別の世界から救国の勇者を召喚しようね!」

高揚した面持ちで、期待に満ちた眼差しを女神官や自分の娘にだけ向けて、慈愛に満ちた笑みを浮かべる英傑女王であるアブリエールだった。


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