転生悪役令嬢と、空気の読めない侍従
勢いで書きました。
ヒロインの【髪】に疑問を持ったので、書きました。
ついに、この時がきた。
イベントが間近で見える、ファン垂涎の夢の場所、
私が将来、断罪させる場所、〇〇学園に。
門をくぐり、思い出すは、これまでの事。
嬰児の時に思い出した、前世。
何番煎じだと思って、否定しようと国土を調べて、絶望した。
その日から、(断罪されて)追放されても生きていけるように頑張った、勉強と武術と他国へのコネ作り。
(断罪させて)処刑されないように頑張った、領地経営、不正摘発、商会経営、(乙女ゲームのエピソードに書かれていた内容を思い出しての)災害対策。
何番煎じなら、できるかもしれないと思い、手に入れた侍従(攻略対象、暗殺者、将来私を………)。
駄々をこねても無駄っだ、婚約者の無能第一王子。
そして、何故かやらされる、王子の仕事。
本人、逃げ回って遊んでいるのに。
手懐けようと努力した、義弟。
全ては無駄な努力だった。
なぜなら、学園の中庭に、ヒロインと、それに群がる攻略者候補(第一王子、側近候補(脳筋/天才魔術/宰相候補)、義弟)に加えて、見た目のいい男子生徒達。
始まる前から、勝敗は決していた。
私が努力している間に、彼女は男達を手玉に取っていたようだ。
勝負にすらならない。
このまま家に帰って、国外逃亡の準備をするべきだ。
そう思いながら、(気付かないふりして)通り過ぎようとすると、従者の気配が、
(!!まさか、)
そっと後ろを見ると、ヒロインを凝視している。
(これが、シナリオ補正。)
打ちひしがれながらも、凛とした態度で、
「気になるの?」
「………はい。」
「そう。」
「………」
「それなら、彼女に仕えたら?
貴方は公爵家の侍従で、向こうは男爵家の養子、喜ばれると思うわよ。」
「お嬢様。」(目立つからやめてほしいけど)片膝をついて、
「あの日、貴方様に拾われてから、私の主人はお嬢様だけです。
生涯、お嬢様にお仕えする所存です。」
「彼女の事を凝視していたのに?」
「見ていたのは、別の物です。」
「そう。 何を見ていたの?」
「髪です。」
「………髪フェチだったの?」
(帰ったら、こいつの部屋を徹底的に掃除するように、女性の侍従に言っておこう。)
「いいえ、違います。」
「?」
「お嬢様、彼女の髪ですが、おそらくは鬘だと思われます。」
世界が止まった。
「………そんなわけ、ない」
「貴様、今なんと言った。」
「殿下!!」
「彼女の美しい髪を鬘と見違えるなんて、余程目が悪いようだな。
後で公爵に、解雇するように通達しておこう。」
「………殿下に具申します。」
「髪や爪などの毎日延びる部分は、栄養状態や毒、ストレスなどの影響が出やすくなっております。」
「それがどうした。」
「彼女は元平民、それも、田舎の村出身です。」
「だから、それがどうした。」
「2・3年前に起きた、飢饉。」
誰かの小さな言葉で、その場にいた(まともな人)全員が察した。
「は?」
「髪が伸びるのは、一月で約1センチ。 一年で約12〜13センチ。
ご令嬢が養子になられましたのは、ごく最近。」
「丸ハゲにしたとしても、時間が足りません。」
「戯言だ。 彼女の髪はサラサラのフワフワで、鬘はありえない。」
(撫でたんだ。 婚約者でもない人の髪を。
私には会いにこないのに。 こちらに仕事を押し付けているに。)
「いいえ、私は嘘を言っておりません。
確認は、そちらの、影の人にお尋ねください。」
「ちっ。」
(流石は一流暗殺者予定のキャラ。
王家の影をあっさり見つけるなんて。)
「確認はとれた。」
「だが、彼女の髪は本物だ。 それは、私が保証する。」
「そうでしたか。
不躾なことを申しまして、申し訳ありませんでした。」
「待て。」
「はい?」
「今の貴様の目、気に入らない。
貴様は、彼女の髪が綺麗な理由を知っているのだろう。」
「予想はついております。」
「それなら、彼女の髪が美しい理由を説明しろ。」
「私がですか?」
「そうだ。 この場を騒がせた責任を取れ。」
(無茶苦茶だ。)
「よろしいのですか?」
「ああ。」
「それでは、説明させていただきます。」
「田舎の村で女性が一人で生きていくためには、どんな形でも保護が必要です。」
(まさか、このバカ。)
「その保護の形は、ある程度の美しさまでですと、村人の娯楽兼、村人の数を減らさないようにするための、【村の所有物】になります。」
「ふざけるな。」
「そうです、私、そんな事をしていません。」
「あなたの美しさなら、そうでしょうね。」
「なので、貴族に売るように飼われていた。 と予測されます。」
「てめえ、ふざけるなよ。」
「私、本当にそんなことしてません〜(泣)」
(あ〜あ、泣き出した。
でも、彼女に集まっていた男子生徒の顔を見るかぎり、思い当たるフシはあるみたい。)
(それにしても、エゲツない手を使うな。)
「それ以外ですと、新薬を開発しましたか?」
「「は?」」
「ですから、新薬です。
効能は、髪を綺麗にする、でしょうか?」
「!!そうです、そのとおりです。」
(あ〜あ、ひっかかった。
まっ、転生者なら仕方ないかな。)
「そうですか。」
「それで、それの商品登録はしましたか?」
「は?」
「商品にすれば、伯爵になれるほどの金とコネを手に入れられますよ。」
「!!」
「はっ、何を馬鹿なことを言っているんだ、お前は。」
「たかだか髪を綺麗にする程度の薬で、金もコネも手に入るわけがない、」
(!!やば。)
「殿下、それ以上言ってはなりません。」
「無礼者。 いくら婚約者とはいえ、私が話している途中で、横槍を入れるんじゃない。」
「ですが、」
「黙ってろ。」
(よし、これで私は被害者の側になった。)
「殿下。」
「なんだ、お前も邪魔をするのか。」
「周りをご覧ください。」
「ああっ」
「ご覧ください。」
「ちっ、何だっていんだ!!」
(やっと気付いた、女性生徒どころか、女性教師まで敵に回していることを。)
「殿下。」
「………」
「男性貴族が武力や知力を鍛え、国を護るように、女性貴族は、見た目と他人との繋がりで、経済を廻しているのです。」
「ちっ、行くぞ。」
ヒロインと殿下と取り巻き達が去った後、
「やりすぎよ。」
「申し訳ありません、お嬢様。」
「まっ、スカッとしたからいいけど。」
「ありがとうね。」
「勿体ないお言葉です。」
数年後、
女性に理解が無い+不貞を働いた+仕事をしない(侍従が暴露した)+ヒロインが不特定多数と交わったせいで、誰の子か解らない子供を妊娠した+国庫を私的に使った。
結果、第一王子は女性からの支持率がマイナスとなり、オマケに多くの男性貴族跡取りも評判が下がった。
第一王子は廃嫡になり、婚約も解消された。