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いないないばあ

いつもはたくさんご飯を食べようとするばあさんが、ご飯の時間になっても部屋から出てこない。不思議に思った俺はばあさんの部屋に向かった。

その部屋には何も無かった。

つい数時間前までばあさんは居間でいないないばあを見ていたのだ。

きっと外出にでも行ったのだろう。

俺はばあさんを探しに街へ繰り出した。


歩く、歩く、歩く。

それでも一向にばあさんは見つからない。ばあさんを探している間にも日は暮れていた。

ばあさんは飯を何度もせがんだり、いないないばあを見て喜んだりするなど、ボケが進んでいる。

だから、俺が見つけ出してやらないといけない。何も分からない不安な状態で街をさまよっているだろうから。


夜も深くなり体も冷えてきた。

「見つけたぞ!」

若い男の声が聞こえた。きっとばあさんを見つけ出してくれたのだろう。やはり体力では若者には勝てない。

しかし、その声の主は俺に懐中電灯の明かりを向けた。


不審に思った俺は迷わず逃げることにした。何とか若い男は撒いたが、知らない女は懸命に俺を追い掛けてきた。

あんた誰だ?

俺はそう問いかけた。

「私ですよ、私です」

名前も名乗らないとは怪しい。きっと今流行りのオレオレ詐欺といったやつだろう。


その女が顔を上げる。

どうも、昔のばあさんに似てる気がした。

「おじいさんもう帰りましょう、お腹も減ったでしょう」

女は俺を知っているかのように振る舞う。知らないやつにホイホイ着いていくのは馬鹿とボケがやることだ。

それに実際腹は減ったが俺はばあさんを探さないといけない。


すると女は顔を伏せてこう言った。

「おばあちゃんは一昨年亡くなりました…」

ばあさんはもういない。

いない


ない


ばあ

忘れられたとき人が死ぬというのなら、多くを忘れた人の周りは死人ばかりだろう。

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