8話 無者と二戦目
==8話 無者と二戦目==
次の日
「それではヒロト様」
「あ、はい」
そう言われてついていく俺の二戦目だ
「んな!」
「お!?」
「お父さん!?」
「あれ? ヒロ? え? 幽霊?」
「いや……生きてます……」
まさか無者って俺のお父さん!?
「驚いたな……アルトからクシャクシャになった手紙が届いたのに生きてるのかよ」
「いや……まぁというか冒険者だったの? しかもAAランク」
「おー国を超えるには冒険者になると色々便利なんだ」
「ま、まさか過ぎる」
「まぁでも、手加減しないぞ?」
そう言うと存在感がいつもと違う感じになった。怖さが増した
「やばいな……」
「一度戦ってみたかったからな、お前とは」
「驚きですね」
「最初から行くぞ」
「第二回戦第二試合始め!」
「道化之王我が身に纏を」
「月夜に舞いとらん衣よ顕現願う 月羽衣」
父さん、いや、トドロも纏を使った、と言うことはあの街にいるときは隠していたのか
父さんの纏はピエロの様な見た目だ、肌とかは白くなるわけでもないが格好はピエロだし左目に星のマーク右目には丸のマークがある。
「纏が使えるのか」
「まぁね」
「はは、道化の選択」
そう言うとトドロの前に多角面体の箱みたいのが浮いている
「父さんは多才のスキルじゃないんだな」
「前はそうだっただけだな」
「へー」
『さーさー今日のオススメは! ダン! ダラララララ……タラランラランララ――』
「早くしろ」
「……銀月流 捌之型・滅烈孤月」
地面を軽く削りながら進んで行く、これなら当たるか?
『はい!』
「イマイチだな」
『そういう保証はあいません!』
ギリィィィと金属が何度も当たる音が聞こえた
滅烈孤月が巻き上げた砂塵が落ち着くともの凄い長さの剣を持っていた。
「なが……」
「逃げなくて良いのか?」
「え?」
そう言うとぞっとした。一瞬で長い剣が生き物の様に目の前まで伸びてきた、いや伸びたんじゃなくまっすぐになったのか
ギリギリを避けれたが耳をかすめた
「よく避けたな!」
そう言って腕を振るとシュンシュン言いながら剣が蛇がのたうち回る様に迫ってくる。
「くっ!? 危険な武器だな!」
「暇を与えないで使えるのは良いな」
そうか、多才のスキルが前と言うことはどんなものでもできるが進化してどんな武器でも扱えると言うこと、あの武器の長さとか関係ないのか
上、右、うねりながらの前…………手数が多すぎる、毎回捌くのでギリギリだ
「くっ……鉄刀、銀月流 漆之型・燕飛刀擊」
遠距離攻撃、間合いに入られればこれだけの長さじゃ対応でないはず
「考えたな」
そう言うと腕をうねるように上下させ軽めに横に振ると攻撃の流れが変わりながら自分に向かって来ていた刀をはじきながらすぐに攻撃に戻ってきた、攻撃と守備の繋ぎが鮮やかにつながりすぎていて休憩をくれない。
この武器を何年も使っているかのような動きだ。
「イマイチだな、もう一歩で倒せそうだが」
「く、銀月流 玖之型・雲脚弄月」
「……よっと」
型を使うとすぐに攻撃をゆるめにしてくる、それは多分どうなろうとすぐに対応できるようになんだろうな
攻撃を流し後ろにやりながら前に進むがこれ以上は危険と感じる場所がある
「はは、よく分かっているな」
「……」
「そこが間合いだよ。でもそこを維持はさせない」
そう言うとぐっと腕を退きながら近づいてきた
「間合いギリギリなら逆に入れないとね」
「肆之型・繊月凶鳴」
「千獄剣牢」
周りを弾くつもりで型を使うとトドロは剣で牢の様な形を作り逃げ場を無くしてから手元を軽く振ることで攻撃をしてくる、こっちが不利すぎる!
「銀月流 参之型・災烈月下」
「おっと」
「はぁはぁ」
「逃がしたか……」
不味い、もう一歩とかじゃなく普通に届かない
「はぁはぁ」
「休みはリングの外でだな」
ギリギリギリと金属がぶつかりこすれる音がしている、長い剣を巻いているんだな、何をするつもりだ?
「さ、ラストかな?」
そう言うと巻いた剣が広がるタイミングでグッと前に押してきた。一瞬で剣の渦に囲まれた、通り過ぎたところが広くトドロの方が細い、それがドンドン全体的に細くなってきている。
ここまでか……いや、まだ……
『――規定量のエネルギーに到達、能力レベル二を解凍します』
なんだ? この声
『レベル二解凍により竜眼との接続を開始……接続完了。思考加速と接続開始……接続完了。……レベル制限により次の接続不可、思考加速と竜眼の接続開始……接続完了。……以上により解凍データを保存……完了』
なんだ? 分からない
『:※:からのエネルギー貸与を確認、銀月より力の解凍……完了。現状の打破に必要なものの解凍終了』
え……終わった? 説明なしかよ!
ギリィィィという金属が擦れ合う音が耳に響く、不味い……終わる
『終わりません』
え?
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
一瞬気が飛んだ感じになっただけだと思ったがいつの間にか剣のトンネルを抜けていた
「あれを抜け……そうか……」
「どういう……」
『データは送りました、エネルギーの蓄積を優先するためスリープモードに入ります』
あ、結局話を聞けないのか……
だけど頭に、身体にさっきまでできなかったことができるような感覚がある
「そうか……卵の覚醒……俺の子が卵の覚醒までやれるとはね」
「……卵の覚醒ってもうしてるんじゃ?」
「……まぁ一段階目はしてる奴が多いな」
「ん?」
「はい。お話終わり」
ビリと首に電気が走ったような空気感、また感じが変わった?
「道化之王よ、我の魔糧とし御力の一端を我に貸した与え給う」
いつの間にかあの長い剣が消えていたがそんなことよりも問題は今の状態か……
「It's show time!」
そう言って服から出したコインを上に弾いた
と言うより英語?
そんなことを考えている間はなくなった
呟きが聞こえた後細い針みたいなのが何本も飛んできた、何本かは外している感じだが本命は目と腕を正確に狙ってきている
「――!」
細かい攻撃だと思って避けたつもりが見づらい角度で脚も狙われていた?
「脚が!?」
「泊まってる暇はないぞ」
接近? 針が今の武器じゃないのか? もしかしてそのときそのときで武器を変更できるのか?
「銀月流 肆之型・繊月凶鳴」
「ちっ 爪弾き」
爪? 接近の仕方的に距離は爪の攻撃の間合いまで来てなかったよな? もしかして……
「くっ」
考えている間がない、一瞬でも間が開くと地面の砂でも石でも何でも武器になっている
離れた隙に武器が杖に変わっている、周りに魔法陣が浮かんでいる、カイの灰素陣みたいに浮かんでいる紋は灰色じゃなくて赤色だ
紋から炎の弾が乱発して来ているその攻撃を捌くだけでも難しいのにトドロが移動しているのが邪魔だ
「その攻撃、さっきまでなら捌けなかっただろうな」
そっちか!
「銀月流 壱之型・三日月」
「道化は信じるものじゃないぜ」
逆!?
「銀月流 陸之型・燕目閃月」
「また情報を信じたな」
いや遠い!?
「ショット」
「ん、がぁああ二之型・月障転蓋」
ギリギリで火の弾の乱射を弾くことができた
これまでの攻防が終わると一度距離ができた。
チィィンとコインが落ちる音が響いた。
あれ? そんなに高くコイン弾いてなかったのに?
「ここまで対応されると困るな」
見た目に関して言えばほぼ変わらないトドロだったがさっきまでとは俺にとって大きく違う
軽くだが肩で息をしている
これは大きい、さっきまでどれだけこっちが動こうが長い剣を振るだけだったか息がしていなかった、という道理がない、あの剣は軽々振り回せるものじゃないはずだ、剣と刀が当たればこっちが弾かれる、その分だけの重みは少なくともあるはずになる。
それなのに今の攻防――あっちの一方的な攻撃だったが――で軽くでも息が上がった、これは大きい。
この物語の続きが気になる、この物語が面白いと思って頂ければ是非ブックマークと評価、感想をくださいよろしくお願いします。
ではでは。