5話 予選
==5話 予選==
アドベルに来て一週間が経った。今日武闘大会本戦に出場する選手が決まる。
「おいおい、こんなガキに何ができるってんだ?」
「おい、ガキ、無駄な血を流すこたぁねぇ。家に帰んな」
待合室というものが闘技場には六室ある、これは本戦の時に必要となるために六室だったらしいが無駄に広く作られている。闘技場を作ったときに予選選手をしまい込むのに部屋が必要になることを見越して大きく作ったらしいがこうやってガラの悪い輩に絡まれることも想定してほしいものだな……
今日は重要だ、と思って早めにここに来たまでは良かったが開始の三十分前になるとこうしたガラの悪い人が来て俺を見るやすぐに絡んできた。面倒くさい。ちなみにこの部屋での戦闘行為は禁止となっており発覚すれば即退場だ。 だからやり合うなら言葉でやるしか無い。
「うるさいな~光が反射して顔が見づらいな……ああ、そういう対策か、賢いな~」
絡んできて輩の一人がスキンヘッドだったからとりあえずそこを突いてみた。
「……ぶふ!」
「おい、テメーまで笑ってんじゃねぇよ!」
「いや、センスあると思って……ぶふ」
「クソ! おいガキ、テメーの顔覚えたからな! 後で後悔させてやるからな!」
テンプレかよ、ここにいる人達は全員今から戦う対戦相手だ。本戦にいけるのは全部で十二人、全てこういった予選から出る。どんなに手を回してもここを自力での突破ができないと上には行けない。
六室の部屋を結構ギリギリまで人を入れている。これが午前と午後で同じ規模で行われる。それはつまりこの武闘大会がそれだけの規模であることを表している。
「なんだあの子、初めて見るがあの二人に喧嘩売ったぞ」
「あの二人あんな態度だけど次Aランクになるって噂になっている二人だろ?」
「ありゃー終わったな」
「ここまでで見たことない子だからコネでしょ? もったいないわ」
色々な声が聞こえてくるな……
どれも俺を心配している声ではないな、むしろ俺が倒された時にあの二人を攻撃しようと企んでいる人もいた。
まぁ俺にとってはそこが心配じゃない。問題は俺の加護だろう。不運が全力発揮してAAランクがここにいるとかになると怖くてしょうがない
「失礼します! 第四グループの皆様移動をお願いします」
ざわざわしていると伝令をしているお兄さんが来て移動を促してきた。ついに始まるのか……
◇◇◇◇◇
一グループに約二十人、それが十二グループ、ここではまだ二百四十人は残っているわけだが一番最初から考えるとかなり減っているらしい。
そしてなぜでしょう、このグループで闘技場に行くとほぼほぼの人が俺……いや、俺達の方を見ている。
目の前には早く始めろよと言いたげな顔の男が二人がいる
「ガキをさっさと終わらしてと言いたいが一瞬では終わらせねぇ、最初に動けないようにしてから遊ぶ」
「そうだな周りで漁夫ろうとしている奴が多いからな」
「最後は正々堂々とやるってことで良いな?」
「ああ、お前と俺の実力はほぼ同じ、最後は真剣にやる」
顔をこっちに向けたまま口が動いている、まぁスキルがあるから俺には全部聞こえているが……
「では、第四グループ。始め!」
お、始まった。
「もらったーーーーーーーーーーー!」
「あ、そういうの良いです」
普通に近づいてきたから刀を抜くことなく鞘のまま振ってきた剣を弾いた。
「んぐ!?」
「ばかが、油断してんじゃねぇよ」
そう言って男の後ろから風の塊――これは風弾かな?――が来たが魔力にムラが多い……Aランクがどうのこうのって言われている割には弱いな……そういう作戦?
飛んできた風弾も鞘のまま斬った。
こう……刀を持つならやっぱり腰に差したいな……と関係ないことを考えながら横から飛んでくる流れ弾の法術を避けながらとりあえずの気分で二人の男の前に移動した。
「本当に次にAランクになるって噂なのか?」
「て、テメー……」
「ちっ、炎々と燃ゆるそ――」
「この至近距離で使わせるわけないでしょ?」
そう言った後に鞘のまま男二人を場外に飛ばしておいた。この戦いでは殺しの禁止、負けの判定は戦闘不能と闘技場の外にいる高ランク冒険者が決めると負けになるのと闘技場の外に脚が着くと負け。この戦いは本戦前の予選の為一般人は見学もできないからこそ場外がある、本戦では結界があり場外というのができない。
吹き飛ばし壁に叩きつける感じになると結構な音がした。
周りで俺がやられている間にあの二人を倒そうと考え共闘していた人も普通に戦いを繰り広げていた人も突然の音に手が止まっていた。
「ま、不味い、あいつ強いぞ!」
「い、一斉に行くぞ!」
そう言って漁夫の利を狙っていた人達が一斉に来たが……あんまり強い人いないな……珍しく俺の不運神の加護で強敵を引き連れなかったのか? まぁそれを考えるのはこれの後か
「銀月流 肆之型・繊月凶鳴」
峰での繊月凶鳴、当然斬擊を周囲に短く飛ばす型だから峰でも肌は切れるが致命傷になることはない。強い人だけが残るな、と思いながら撃つと想定外に自分以外全員が場外になっていた。
「あ、あれ……」
「第四グループ。そこまで」
開始の時と同じ声が響きこの大会の係員の人達が一斉に場外になった人達の元に行き手当と移動をさせていた。
俺の所にも一人来たが移動先が違うのでそこへの案内人だった。
◇◇◇◇◇
「やあ、ちゃんと勝てたさね」
「ギルドマスターが一人一人話すのか?」
「結構常連の人もいるしまずまず冒険者集めるとか危ないさ」
「それもそうか……」
「説明と言ってもそんなに無いけどね、とりあえずこれからの話をすると、まず出場者が決まってからこっちで厳正にくじで対戦相手を決めるさね、その後対戦表にして届けるさね」
「本戦はその後になるってことね」
「うん、そうそう、で今年は優勝者にはSランクと戦える権利が……いやまぁその後にやるんだけどあるさね」
「Sランクというと聖剣っていう人?」
「惜しい、剣聖さ。彼もSランクさねけど今回は刃老斧という人さね」
「……どなた様?」
「はは、彼を知らないとはね~まぁそういうのは自分で調べるさね、冒険者になるんさからね」
「……分かった、話はこれだけ?」
「君からの質問がなければね」
「俺のグループにBランクの人いたか?」
「あの二人のことさね? あれを上に上げないために君をあそこに入れたさね」
「え?」
「はは、Bランクまでは努力しなくても着実に依頼をこなせば上がれるさ、でもさAランク以上は違うさ。実力が必要さね、目に見えるレベルの。彼らにはまだそれがないさね、なのにチヤホヤされ図に乗っているからさお灸を据えて貰いたかったさ。まぁこれを実力が裏付けされている人じゃ駄目だったからさ君にやって貰おうと思ったさ」
……意外とこの人腹黒か?
「さ、これくらいにするさ。じゃあ期待しているよ」
「……本心か分からんな」
「はは」
笑っているが本心は本気で分からないな……
「こちらからお帰りください」
ここに連れてきてくれた案内役の人が外まで誘導してくれた。
あの腹黒ギルドマスターが何を考えているか分からないけど本戦は楽しみだなと思いながら今自分が泊まっている宿に帰った。
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ではでは。