1話 入国
==1話 ==
レポラル自由国家の首都までは二週間ほどかかる、ロード王子曰く馬車では記録が残ってしまうため徒歩でと言われている、二週間……長い、しかも身体強化の状態での移動での計算だからかなり着くまでに疲れそうだ。
今日で十日、もう国境は越えた。国境を越えるのは大変だった、なにせ俺は身分がない、ただロード王子の書簡を持っているということしかない。ロード王子は隊長クラスの人にのみ伝えていると言っていたからその人が出てくるのを待つのは難しかった、二時間くらい粘ったな……
あと少しだ、という状態のなか大きな問題に直面した。ヤバイくらいに絡まれた……め、面倒くさい……
「おうおうおうおう! ここは俺達の領土だぜ! 許可無く通って貰っちゃ困るぜ兄ちゃん!」
「ぎゃはは! 分かるだろ? だすもんだせや!」
ガラが悪い……これが盗賊……いや、荒くれ者か
「なんか言ったらどうなんだ? あぁぁん?」
棒立ち状態で立っているんだが誰か奇跡的にここを通るとかないかな? ……ああ、俺不運神の加護あるから……無理じゃん! 正当防衛になるかな? 倒して良いかな?
「なんもしゃべんねぇなら奪っても良いんだな?」
「やっちまうぞ!」
そう言って持っていた剣を抜いた……抜いた! これで正当防衛だ! って俺は戦闘凶か!
「燃れ燃れ、赤きな華と散れ 紅華」
赤い花が俺の頭上にできた、花弁が落ちてくる……あれは触ってはいけないやつか……
そう思っていると二人の男が降ってくる火の花弁に似た火の粉に当たりながら突っ込んでくる。
熱くないわけないよね……ここにいるのは六人、内一人があの花を出して二人が突っ込んでくる、後の二人はサポートかな?
まぁ良いかと思いながら身体強化の魔法を心の中で発動して基礎能力を上げておく、忘れてはいけない、あの国では強くても外に出ればただの雑魚になる。ロードに何回も言われた言葉の一つだ。
「くらいやがれ!」
重い音……斧じゃないな……振りかぶりの音がしたのほうから聞こえる、剣にしては風の当たり方が違うしな……メイスかな? 初めて使う人と会ったかもな
そう考えながらとりあえず過剰なまでに距離をとっておく。
「【火弾】……ちっ」
やっぱり連携していたか……危ない危ない
「面倒だが外には出さないぜ」
「囲み囲みまつらうせ 風刺囲み」
法術! あれって詠唱が鍵なんだよね……じゃあ使えるのかな?
そう考えている内に風でできたとげが周囲から飛んできた。俺はそれを上に跳んで避けた。
「貰った!」
「鉄刀」
型は使わないでメイスと思われる武器の軸に当てた
「――!?」
「【火弾】」
「うお!?」
避けられた、結構良い感じにできたと思ったが……ああ、上からの攻撃が来るな
「【風弾】【爆】これで良い」
花ごと吹き飛ばせた、位置固定みたいなのができるのだったどうしようかと思ってたが良かった。
「大将、奴面倒でっせ」
「俺の棍棒と打ち合う程の力があるっすね」
メイスじゃなかった! カッコいいワードの武器だから使いたかったのに……いや、口に出す前ならセーフか
「情けない……俺達の使命を果たせねばならないのだぞ」
「全力で行くと殺しまで言ってしまうかもなんで」
「そうなんすよ」
「俺も出る援護はするなよ」
「了解」
こそこそと言うほどじゃないけど何か話しているな……距離あるし実験するか
「連々と連なり空を糧とし連装と成せ 連層矢」
「な! あいつ法術を使えるのか!?」
「「「「…………」」」」
何も起きない……あれ?
「ふえ? なんだ?」
「で、出ない……」
「やったことが無いの使おうとしたのかよ!」
「的確なツッコミ!」
場が緩んだその隙に大将と呼ばれていた男が急接近にして来た。
「――となれ 火塵爪」
俺の顔を掴むギリギリで熱を帯びた、これは温存とかじゃないな
「銀月流 肆之型・繊月凶鳴」
それなりに力を込めて刀を振ったが斬った感触はない
「そうか……お前が報告にあった奴か……」
「ん?」
「関係ないな、うん。滾ってきた! おまえら絶対に手ぇ出すな」
そう言うと返事を聞くわけで無く手を鋭くなるように細めて突き出してきた。型を使うために竜眼使ってなかったら危なかったな……
「かか、今の避けるか……先に話しておくか、俺達はギルドから派遣された者だ、お前はヒロトと言う名前で違いないな?」
「ああ」
「よしよし、じゃあ俺に付き合えよ」
「派遣されたんですよね? なにか目的があるんじゃ?」
「お前を連れてこいとのことだが関係ねぇ、今この刹那の心の高揚に勝る事柄など無きよ!」
「……つくづく運がないな……」
「俺は幸運だ! 連縛を解き白日に晒せ 燼装爪」
空気が少し熱く重くなった?
「行くぞ……死んでくれるなよ……かか……」
シュッという音が俺の耳に聞こえるときにはもう目の前の男の手は俺の後ろにある、俺の目がさっきまであった場所に鋭い爪がある。
「かか! よくぞ避けた! 楽しみがいがある!」
不味いな……
「た、隊長! さすがに殺しは駄目ですよ! 紹介させた人なんですよ!」
「ミト、黙っていろ。第一弱い奴はあそこに行っても意味ないしな」
最初は意識が声を出した後衛の男の方に向いていたが最後は挑発か……
「俺は法術を知らない、だからできる全力で行く」
「お? 来い来い!」
「銀月流 捌之型・滅烈孤月」
「かか、いいなぁ……」
そう言うと横に避けられた、その勢いのまま突っ込んできた。
「鋭爪」
「銀月流 壱之型・三日月 ぐ!」
爪に当たるとこっちだけが吹き飛ばされた。
「かか! 蛇爪」
ブレるように見える爪の突き
「【粘体】銀月流 陸之型・燕目閃月」
普通に避ければ爪の突きによる衝撃波が出る、なら速度を下げれば良い
「かか、なんだこれ? 爪が開かん、しかも地味に重いな」
「返し技を余裕で躱すのかよ」
「良い技だ、まだまだいけるだろ?」
「はは……やべー」
かか、と言うと後ろをとって今度は拳できた
「銀月流 玖之型・雲脚弄月」
拳をぶった斬ってもおかしくないくらい力を込めて振ったが斬れなかったが、さっきとは違って俺だけが弾かれることはない。カウンター気味に腕を狙っても腕も硬い、腕に切り傷を付けられるくらいだ。
「かか、俺が纏も使ってない奴にキズを付けられるとはな。ここからはもっと――」
「やめろやい!」
後衛だった二人の男の内の一人が手刀で目の前の男を気絶させた、慣れた動きだったな……
「すみません、ヒロトさんですね」
「は、はい」
「俺らはギルドに所属している者です」
「……ああ、やっぱりそうなんですね」
「案内します」
そう言われて整備――そこまで綺麗じゃない――された道を外れて少し行くと馬車があった。
「乗ってください、今の時期入るのに結構時間がかかるんでその対策です」
「何かあるんですか?」
「あーやっぱり情報が行かないですね……もうすぐ大会があるんで」
「大会?」
「武闘大会です」
この世界にこんなのあるんだ……
「見てみると結構面白いですよ。あ、乗ってください」
◇◇◇◇◇
馬車に揺られながら色んな話を聞いてみた。
まず、この荒くれ者だと思って人達は冒険者ギルドに所属しているパーティでBランクらしい。隊長はAランクらしく異名として赤爪と呼ばれているらしい。
次に武闘大会は色んな国から参加者と観客が来るらしくレポラル自由国家はこの時期は特に盛り上がり国としては国庫が潤うため年々派手になり今ではその期間中街が暗くならないと言われているらしい。――俺がそのことを知らないと言うと引き気味なまでに驚かれた――そのため今の時期レポラル自由国家の首都は入るのにかなり時間を食われるらしい。
そんなことを教えて貰っている間に着いた
レポラル自由国家の首都も王都と同じく円形に作られているがでかい、さらに街との境を作る壁がひたすらに高く作られている。
「街の中に武闘大会の会場があるのか?」
「はは、何言ってんだ? ヒロ、そんなわけねぇだろ」
「俺達がぶっ壊しちまうぜ」
馬車で一日半かかったがその間にかなり仲良くなった……最初はわりかし怖かったけどね……
「じゃあどこに?」
「外だ外。この時期になると作るんだよ街を」
想像以上の規模の大会かよ
「マジで?」
「マジマジ、闘技場は常にあるがその周りには普段は大きな街というのは無いんだ、野営ができるくらいだな、そこにこの時期に街作って貴族でも泊まれるようにするんだよ、本当に豪華だぜ」
「ヒロト、手紙持ってるか?」
「ああ、持ってる持ってる」
「こっち来い、その手紙で時間短縮ができる」
「へぇ~」
「早く行ってこい」
馬車の荷台から御者台に移った
「うわ! すげー行列」
「この中にはでかい商人とかもいるぞ、貴族は代わりの者が先に来て貴族本人は待たないで入れるようにしたりしているんだ」
「優先とかしないんだな」
「昔はしてたが今はそんなことできる余裕がなくてな、貴族の反発もあったらしいがじゃあ来なくて言いって言ったらこうなったらしい」
「ホントボスは肝が据わってら」
御者台からでなく荷台の上からの声だ。
「大将、本当にそこ好きですね」
「狭いんだよ馬車ってのは」
起きてからすぐに馬車の上に行ってしまいそれ以来ずっとそのまま、怖くないのか? 結構揺れるけどな~
「さて、入るか」
新しい街に入るのはやっぱりわくわくするものだな。
どうも。ロキュです。
さぁ頑張って書いていきます、第三章!
三章は戦闘が多くなる予定です、がんばろ
この物語の続きが気になる、この物語が面白いと思って頂ければ是非ブックマークと評価、感想をくださいよろしくお願いします。
ではでは。