閑話α 斜め上の人とよく分からないやつ
==5話 ==
結界の中にはすんなりと入れた。
結界の中心には一軒の小屋が建っていて周りには畑があって小屋の入り口には花壇があった。畑には野菜が成っていた。花壇には見たことのないような花が何輪も咲いていた。常に火花が出ている花、水が出ている花、何秒かに一度色が変わる花などがあった。
小屋の前には地面にまで伸びた長い髪の性別が分かりにくい背の低い人がいた。
空を見ていてまだ一度も動いていない。
「あ、あれが伝説のビーストマスター」
「……」
反応なし。え……そのまま死んでいたりしないよね? というか、ビーストマスターは寿命がどうのって話じゃないの? めちゃくちゃ若く見えるけど……
「……いらっしゃい。よく来たわね」
呟くように言ったはずの言葉はこの距離ではっきり聞こえた。
「ビーストマスターですか?」
ラルはわくわく顔で聞いている。
「ふふ、昔は……そう言われていたわね。私はネイよ」
「ふああ」
すごく嬉しそうな顔している、相当会いたかったのか
「あなたは跳兎族ね、名前は?」
「わ、私はラニって言います!」
「そう……ごめんなさいね、もうあなたを育てられることはないの、私はもう長く生きられないから……私に憧れをもってここまで来てくれたのなら申し訳ないんだけど……」
「わ、私は確かに王になりたくここに来ましたが貴方に会えたことで心が満足しています、お気になさらないでください」
「ありがとう」
少女は話しながら近づいていてそっとラニの頭を撫でていた。
「……」
ラニは照れた顔をしていた。
「……ああああ、可愛い! うん! すごく可愛いいいいいいいいい!」
「「うえ!?」」
ユラッとしていて神秘的なものを感じていたのに全てをぶち壊すように抱きついていた。
「ふわふわしてる! かわいい! うんうんうん」
ラニの身体に顔をスリスリしている。
ラルは気持ちいいのか顔がふやけている、なんか……すごい光景になってきた、謎だ、少女が兎にほっぺスリスリ、普通に見たらかわいらしい光景でもこの人寿命がどうのって話じゃ……
◇◇◇◇◇
十分後に堪能し尽くしたのか離れた、ラルはその場でピタッと止まった……いや、固まったのか
「ごめん、可愛い子を見るとついつい……」
ほっぺに手をやって自分でクニクニしている、見た目が少女だから似合っている。
「ガラクンナーバという鳥から貴方のことを見てきてくれと言われて来ました」
「ああ、ガー君! 元気だった?」
「まぁ元気だったと思いますよ」
「そっか……良かった」
「死にそうなおばあちゃんを想像していました」
「ああ、これね、私は神になりかけているからこの姿なのよね」
「か、神?」
「それよりも君は面白いね、見たことがない、感じたことのない感じがする」
「それも聞きたいことです、俺はなんなんでしょうか」
「うーん……」
「俺は前世の記憶があります、元々は人間でした、気づいたときにはこの姿でした」
そう言って元々のトカゲの姿に戻ってみた。なんか二足歩行よりこっちがしっくり来るってなんか複雑な気持ちだ。
「これは……新種かな?」
「新種……」
「そう、それに多分その記憶があるってのは転生者ってやつだね、昔も君みたいにいたよそんな風に記憶があるって言っていた人間がいたよ」
人間で転生した人がいたのか
「面白いよ、君は、色んな種族の感じがする」
「あ……食べたからですからね?」
「へ~捕食還元の力があるんだ、スキルかな?」
「スキル……」
「そうだな……ちょっとこっちに来て」
そう言われて近づくと頭をポンと触られたと思うと一つ映像が流れてきた。
「この魔物を食べてきて、ここから南に少し行ったところにいるから」
「なんなんですかこのレンズみたいなの、手が生えているし」
「それはレンカン・ポイって名前の魔物で面白い魔物だよ、これ以上は自分で味わってきて」
「はぁ~? 分かりました」
そう言われてからすぐにここを離れた。
◇◇◇◇◇
空を飛んで十分くらいで渡された記憶と同じ姿のレンズみたいな魔物を見つけた、ただ記憶として渡されたのはその姿だけで大きさは分かっていなかった、まぁこれくらいだろ、みたいな予測を勝手につけていたが想像してた大きさと違って大きかった。
レンズだし十五センチくらいかなとか思っていたけど実際は二メートルくらいの円盤が浮いている。
今の俺は二足歩行の姿だと一メートルくらいしかない――トカゲの姿だと十五メートル――大きさでは負けているな。
ヒュィィィィンと音がし続けている、レンズの周りに金属みたいな円盤三つがゆっくりと回っている。どれも同じ方向には回っていない。
とりあえず攻撃をしてみるか。歩行練習と飛行練習の二つと同時に練習してきたとっておき!
「ぅがぁああ!」
ブレスという憧れの技を会得した、今放てるのは水のみ、喉の奥をスライムに部分擬態させ水を作っている、スライムは見た目のみじゃなくて水を作る事ができるという素晴らしい能力があった。
俺のとっておきのブレスは当たるかと思ったが突然レンズの周りの円盤三つの回転が上がりブレスの流れを回転に飲まれてしまった、水の球体になったと思うと回転を止めてこっちにブレスを打ち返してきた、俺以上の速さで。
「わああああ!」
ギリギリ避けれた、あ、あぶねねぇ
俺にそれ以上の攻撃をするわけでなくまたその場でヒュィィィィと音をさせながら円盤がゆっくりと回転しだした。
「な、なんなんだこいつ……」
こうなれば回転を止めてみるか、さっき回転が止まったとき僅かにだけど浮いている高さが低くなるように落ちていった、回転が何か関わっているのかも知れない。
熊の姿になって回転を止めようと近づいて行ってみた、熊の姿は三メートルくらいの背になれる、地面から一メートルくらい浮いているだけの奴になら届く
そう思いながら近づいて行くとある距離から一歩進むごとに回転が速くなっていく、手が届く距離になる頃には砂埃がたつくらいの回転の速度になっていた。
触ったら腕がもげるな……
熊の姿で回転を止めるのは諦めて距離を戻した。元の位置関係になるとまたゆっくりとした回転になっている。
「こいつ、何がしたいんだ? 逃げもしないし、攻撃もしてこないし」
「面倒くさいからな」
「しゃべるんかい!」
金属が響くような高い音でしゃべってきた
「騒々しい、面倒くさいのだ逃げるも攻めるも、生きるも」
「極限なまでに面倒くさいのかよ」
「あー呼吸が面倒くさい、でも死にたくない」
「生きたくもないけども死にたくもないと」
「しゃべるのも面倒だなー」
クルクルとレンズ部分も回り始めた
「何やってんだ?」
「俺自身が回転しないように固定するのが面倒くさくなったから自然に任せているだけだ」
「自分自身も回っている状態が普通な状態なのかよ」
「お前は何しに来たんだ?」
「よく分からないが……人に言われてきた、喰ったら面白い魔物がいるって」
「ああ、そうかーそうだな、お前が俺を喰えば鑑定というスキルが得られるだろうな」
「おお、鑑定ってのがあるんだな」
「あるぞ、ちなみにこの鑑定を使うことで俺はお前の動きを読める」
「え……」
「ついでにお前の今の力では俺を喰うことはできない」
「え……」
「でも俺は面倒くさくて動く気がない」
「じゃあ何度も当たるしかないか」
「やっぱりそうなるかー」
顔という部分はないんだろうけど声から分かる、めっちゃ嫌そう
「もう一度ブレスを放てば倒せるかもしれないな」
「いや、放たなくていい。どうせ意味がない」
「どういう意味だ」
「鑑定は相手の力量が分かる、自分との差が分かるんだ。今君と俺とではかなりの差があるんだ、どんな風に来ても意味がない」
「……鑑定があるとそんなことが分かるのか」
「俺の持つスキルの鑑定での話だがな」
「まだ分からないだろ? 一%でも可能性があれば戦うさ」
「……」
「俺は空腹が嫌だからな! 今俺はお前を見て空腹だ」
「ぷぷ、っはは、面白い、鑑定の性で意味ない意味ないと思って生きていたけど君は鑑定を超えた面白さがある」
「お? おう」
「喰って良いよ」
「うえ?」
「生きる意味がないって言ったでしょ? 君の力になって生きる方が面白そうだ」
そう言うと言ったことが真実であると証明するように回転が止まった。
「い、いいのか?」
「面白いことに忠実に生きていたいからな、鑑定の性で俺は自分自身がココマデなんだって分かってしまった、それから生きていても味がしないんだよね。君は鑑定を持って自分の限界を見ても関係なくそれを壊してくれるんじゃないかという期待が持てた、これからよろしく」
「……ありがとう」
「どう……いたしまして?」
スライムの姿になってレンズの魔物、レンカン・ポイを覆うようにして喰った。ボリボリ端から徐々に喰っていく気にはならなかったから一気に喰らう方法だ
「――!」
熊を喰ったときのように身体に変化を感じた、背は変わっていない、なんだ?
疑問は感じたが確認方法に近くに水辺があるか分からないし一度帰るか。
俺は来た道を飛んで帰った。
どうも。ロキュです。
閑話はあと一か二話くらい続く予定です。
αは全十話で作りたいと思っているんですがもしかすると十も行かないかもと思っています、無駄に長々しい話にする必要もないからカットでいいか、と自分で納得しています。
αシリーズはストックを作ってあったので結構連続で投稿出来てホクホク気分です。
この間に本編のストックを、と思っていたのですがなぜ計画通りで調子よくなるとリアルが忙しくなるのでしょう……
いつの間にかブックマークをしてくれた方が1人増えていましたありがとうございます、こう見てくれている人がいるというのが分かりやすく見えるのは嬉しいものですね、作品を書くモチベーションになります!
ではでは。