閑話α 到着
==4話 ==
ガラクンナーバのおっさんの巣から出て三日間ずっと森を進んでいる。
遠い、暗い、そして周りが強い。この三日間で会った動物は全員俺を見るなり攻撃を仕掛けてきやがる。まぁ良い食事になっているから結果的には良いのだが。
「まだ着かないのか……また飛ぶか? でもな……」
この森に入ってから蝙蝠から得た声帯の練習の結果、言葉を話せるようになった。
最初は調子よく空の旅を続けれていたのだがこの森に入ると空を飛ぶフォームを維持できなくなってしまっている。だんだん身体も重くなっているしなんなんだろ、ここ。
「止まれ!」
急に話しかけられてビックリしてしまって二足歩行を失敗しそうになった。前世の赤さんみたいになってる……
「だれですか?」
「貴様の持つその紋、貴様が持っているより私が持っている方がこの世の為となる、さぁ寄越せ」
えー、すげー自信満々に寄越すだろ? って態度と顔なんですけど……
「嫌ですけど?」
「なに? 私に渡すつもりがないということか?」
「それ以外にどう捉えるんですか?」
「そうか……なら貴様から奪うか」
今まで姿が見えていなかったが木の上から降りてきた。
兎の耳のようなものが生えた熊が出てきた。……あ、違った、ただの太った兎か……
「貴様のような弱い種族が進化した私に口答えなど許さないわ!」
「進化……それで太ったのか」
「……殺す!」
それ地雷かい!
軽く飛んで身体が地面と平行になったところで空気を蹴って飛んできた、かなり速い。
ギリギリで避けれた、危ない、見た目と違って機敏だ。
「これを躱すとは……中々やるな……」
「……」
言っていることはカッコいいのだが木にぶつかって痛がりながら言ってくるのはやめて欲しい
「大丈夫ですか?」
「くっ、う、うるさい! 私はその紋を持って伝説のビーストマスターに会いたいのだ!」
「伝説? ビーストマスター?」
「なに? それを持ちながらその紋の意味を知らないのか?」
「え……突然会った怪鳥に先生の様子見てきてくれって言われただけなので」
「怪鳥……名前は」
「ガラクンナーバって言ってた」
ピタっとデブ兎が止まった。
「も、もしかして鷹王ガラクン様!? う、羨ましい!」
目がキラキラしている
「鷹王って何?」
「貴様、何も知らないのか?」
「な――」
「しょうがないな~私が教えてやろう」
こっちの返答聞く前に言ってきた……
「まずビーストマスターから教えてやろう、あ、移動しながらにしよう」
そう言って歩きながら語り出した。
「ビーストマスターってのは人間なんだが私達動物に心から寄り添ってくれ愛情を注いでくれた方だ。今は彼女の元には我ら同胞はいないとされているが冒険者といったかな? その役職というのに着いていたときは多くの我ら同胞が彼女を助けていたのだ。人間と我らは繋がれると教えてくれたのだそれこそ伝説と言われるゆえんだ」
「へー、なんで今はいないの?」
「人間としての寿命が終わりに近くなると多くの同胞にここに寄るなと言って外に出してしまって彼女の側近だった御方達はそれ以来心配でも近くに寄らなくなってしまってね。特に今なんか私達が近くに寄れないように結界まで張っているのよ」
「そこまで……」
「しかたがないのよ私達が押し寄せてしまえばあの御方は親愛を注いでしまうらしいから」
「それで結界って」
「でも、貴様が持っている紋があれば中に入れるのよ」
「だから欲しいのね」
「そうよ。だから頂戴」
「やだ」
即答で返してみた。
「なんで中に入りたいの?」
「彼女の側近は全員王なのよ」
「ん? どういうこと?」
「貴方王も分からないの?」
「ああ」
「じゃあ、説明してあげるわ。王ってのは文字通りその種族を纏める存在、私達には絶対の法がある、『弱肉強食』王はこの頂点に達するの、私で言えば兎王ね、私はそれを目指しているの」
目をキラキラとさせて話してくれる。
「王ってのがいない種族もいるんじゃないのか?」
「いるわよ、例えば兎王の称号を最後に持ったのは五十年前っていわれてるわ」
「いないとどうなるの?」
「絶対の強者がいないからいない状態が続くと他の種族に消されるわ」
こわ!
「……ビーストマスターのとこに行けば王になれるのか?」
「分からないけど王を多く連れていた人なら手がかりを知ることができるはず、だから紋をちょうだ――」
「やだ」
「ここまで教えてんだから良いじゃん!」
「というより二人で行けば良いだろ」
「……あ」
「よし、決定な」
固まっていたけど関係なく進んで行く
「わ、私はラニって言うの、貴方の名前は?」
「俺は……」
あれ? 前世の記憶があるのに前世の名前が出てこない……
「どうしたの?」
「お、俺は……まだないんだ」
「へー、じゃあビーストマスターに付けて貰いなよ」
「あ、ああ」
なんで名前だけが出てこないんだろ……
◇◇◇◇◇
ラニと会ってから二日、この間にもラニのように俺の持つ紋を狙ってくる奴は多くいた、結界に近づくとラニもそうだが普通に言葉を話す奴が多い。
「ああ、それは私達は進化すると人間みたいに言葉が話せるようになるんだよ。貴方もそうじゃないの?」
「いや……俺は違う方法だと思う」
「へぇ~?」
不思議な課程だな。
この森に入って五日でやっとたどり着いた、ガラクンナーバの先生の所に