11話 氷弓
二章五話を少し変えました。また変更するかもしれせん
S→AAの変更
==11話 ==
先を行った皆に合流できたがもう限界が来ている。今まで大きな移動というのをしてこなかった皆に原界外来ている。多くの人が肩で息をしている状態だ。
「お兄ちゃん、このままはキツいよ?」
「分かっているけどこのままじゃないと王都から出られなくなる」
王都から出るには手っ取り早く門から出るのが一番楽で効率が良い。だが休めばその門に騎士が集まってしまう。そうなれば門を使っての脱出は遅れることになるし、魔物の軍団を相手しなければ王都が魔物達によって蹂躙される。
「門が見えてきた!」「やっと出れる!」
多くの人が喜び始めた。
「カイ、カナ、ここで皆をサポート」
「グリースは?」
「門兵を眠らしてくる」
そう言った後何も聞かずに門をめがけて走った。
◇◇◇◇◇
「おい! 貴様! 止まれ!」
「手形がない者は通せない!」
門兵がこれ見よがしに鋭利に見えるように加工された槍を見せつけながら言ってきたが関係ないな
「銀月流 壱之型・三日月」
急停止して威力を上げながら槍の先を斬った。上向きに斬るのは案外難しいな
「な! こいつ……」
「門を閉じるぞ! ここに今の騒動の元凶が来ているらしい」
「もう来ている! 応援を!」
門の中から騎士が出てきて気になる言葉が出てきた、来ているとなぜ分かった?
「俺がいるからだ」
後ろを振り返らなくても危険な存在だと分かる
「……いつから」
「見事な剣術だ、さっきも俺の矢を斬られたしな」
さっき俺をめがけて撃ってきた奴がもうここに……移動が速い
「門兵を眠らせるのだろ? 手伝おう」
「――! どういうことだ?」
「この門から出るってことは魔物を狩るつもりなんだろ? 利害の一致だ」
「助かりますが……ここでは必要ないですね、先に狙撃ポイント探して良いですよ?」
「はは、生意気なことを言うね。面白い」
そう言いながら離れていった。
なんなんだ?
「1人で相手すると言ったのか貴様……侮辱に――」
口上が長くてついつい斬ってしまったよ、もちろん峰だがでだが
「話を聞かないとは酷い……」
「いや、敵が目の前にいるのにペラペラと話すことの方が酷いぞ?」
そう言いながら刀の峰で騎士の首を思いっきり当てて気絶させていった。
「グリース! もう終わった?」
「あとは中を見るだけだ」
「ヒロ! もう来るよ魔物!」
「ああ、皆をここに籠城させておいて俺は前に出る」
「なら俺も」
「そうするとここの守りが」
「ここに魔物の軍団が来ていると知ればそうそう人は来ないでしょ」
「そうだな……カイは来てくれ、カナは保険としてここまで来てしまうかもしれない魔物を討伐してくれ」
「「分かった」」
閉じかけになった門を開けて外に出た。
「ヒロ、刀は魔術で作った物しかないのならばキツいと思うよ?」
「……代わりになる刀がない」
「やはりそうか、俺が刀を作ろう」
「変わるのか?」
「灰素を使って作られた物の方がそれより硬いだろう」
「分かった、作って」
「その内教えるよ。灰を介とし刀剣に型を得せ 灰刀」
詠唱……前世の記憶があるからこういうのハズい……
「ハズいとか思わないでね? 詠唱が必要なこともあるんだから」
できた刀をこっちに突出しながら言ってきた。
「ごめんごめん」
「来たな」
「じゃあカイ、あっち」
「分かった」
カイと別れて魔物の軍団と対峙した。
「銀月流 捌之型・滅烈孤月」
原理不明な型、刀を腰から地面ギリギリを掠るように上に振り上げ斬擊を飛ばす型、放ったところから離れて行くにつれ斬擊の本数が増える。
これで殲滅できればいいんだけど……
斬擊が巻き上げた砂が晴れると半分くらいには数が減っていた。もう少しいなくなっていると思ったが……
「氷々と凍えし蓮を成せ 氷蓮蒼矢」
上から声が聞こえた。さっき門の前で会った人だな……
放った矢は放物線を描く矢と地面に平行な軌道でカーブしながら飛ぶ矢で合わせて六本。魔物の軍団に当たるとでかい睡蓮の花が咲いた。氷でできているからか前世で見た睡蓮の花より遠目からなのに美しく見えた。
「この距離からそこまでの範囲攻撃の型を持つなんてすごいね」
門の上に立っていたはずなのに飛び降りたのか? 門はかなり高いが……
「今の弓の攻撃もすごいじゃないですか」
「ありがとう。君は犯罪者なのか?」
「知りませんよ、犯罪者かどうかは国が決めるらしいので」
「良い皮肉だな。俺も同感だ、犯罪か罪かってのは国や上の人間が決めるんじゃなくちゃんとした検証、そして本当に見ていた人の意見を反映させるべきで権力だのなんだのが裁きに関与することこそ犯罪だと思うよ」
「言葉に重みがありますね」
「……まぁね」
「早く片付いたのであっちに行きま――」
言いかけた瞬間目の前の人が思いっきり俺を蹴って後ろに跳ばしてきた。
俺が立っていたところに刀が刺さっていた。
「オゥオ?」
鎧を着た人型の魔物が立っている、二メートル近い背丈だ。
「こいつ……なぜここに」
そう言うと弓のお兄さんは後ろに距離をとろうとしたが落ち武者の魔物は俺からあの人に標的を変えたようだ、動きを追っていて弓を構えれない。
「ぐ……ぐぐが?」
地面に刺さった状態から刀を思いっきり振り抜いた。周りの地面が岩のように塊になって飛んでいる上に斬擊もできている。型はなくとも力で攻撃しているのか
「蒼々と壁を成し我が身を守れ 蒼壁球」
詠唱……俺が今まで関わってこなかっただけで攻撃の主流なのか?
薄い青の膜が六角形がつながって球体を作っていて飛んできた物を全て防いでいた
「氷糸生成 連々と連なり空を糧とし連装と成せ 連層矢」
人差し指と中指に糸が張ったと思ったら詠唱で矢ができてそれを放った。糸を張って放つまでの時間があり得ないくらい早い、よくあんなに口が回るな。
放った矢は放った瞬間は一本だったのが瞬き一回するごとに倍になり更に倍にと増えて落ち武者の魔物に当たり吹き飛ばした。
「クソ……吹き飛んだだけか」
「大丈夫ですか」
「警戒しろ! 自分命を考えろ! あれは普通じゃない」
普通じゃない? どういう……
「あが……あが?」
飛んで行ったハズなのにもう目の前に来ていた!? 腐りかけている頬の肉が少し上がったように見える。
横の薙ぎ払いをして来たが勘で刀を軌道上に持って行けたがかなりの勢いで吹き飛ばされた。
地面に叩き付けられる、身体が軋むように痛い。刀も罅が入って折れた。
あの人は俺に接近して来て吹き飛ばされる一連の動きでできた一瞬に近い時間で距離をとれたみたいだ。
「氷々と凍えし蓮を成せ 氷蓮蒼矢」
門の上で構えていた弓を持ち同じ技を撃っていたがさっきと違いもう次の技を撃とうと詠唱を始めていた。
「氷連蒼々点練装羅 轟氷点矢」
離れた距離にいるはずなのに冷気を感じる、それにパキパキと凍る音が響いて聞こえてくる。
落ち武者は氷でできた睡蓮を向け出していたがすぐに来た氷の矢に当たり大きな氷塊ができた。
「はぁはぁ、大丈夫かい? ヒロト君」
「……な、ぐっ、なんで俺の名前を知っているんですか?」
「俺はここの第四王子のロード王子の護衛で来ているからな、第五王子のマイン王子と会ってねマイン王子から君のことを聞いている」
「俺のこと死んだことになっているはずですけどね」
「それも聞いている、まぁマイン王子は君のことは死んだなんて思っていなかったけどね」
「マインらし――」
ピキッと割れる音がした
「な! まだ動けるのか」
「あれはなんなんですか?」
「あれは落ち武者って魔物のハズ……だがここまで耐久力があれば違うのか?」
「出てきますよ!」
「連々と連なり空を糧とし連装と成せ 連層矢」
さっきの矢が増える技を上に撃った。
「離れるぞ」
「はい」
できるだけ離れるように痛みに耐えながら走った。
ピキッと一段と甲高い音がすると氷塊が崩れ中から出てきた。
「あはははは……がぁぁああああ」
吠えると今の状態を理解しているのか上に咆吼を放って上から落ちてくるはずの氷の矢を粉々にした。
目らしき部分が赤く光りながらこっちを見てくる。心なしかこっちを見て笑っているように見える。