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7話 地下から


 ==7話 ==


 いや……なぜ来ない……


 魔力の過剰放出をしてからもう三日なんですけど……何も考えれなくなってきた……


 過剰放出したあと一度はそのままだったが少し経つと俺は違う牢に入れられた。一日中幻覚を見せられ頭も身体も感覚が麻痺して何も考えれなくなると実際に鞭で打たれたり殴られたりした。思考力だけは残った状態のところに注射を打たれると幻覚と違うリアルな痛みで気が狂うかと思って……実際もう気が狂っているのかもしれない……


 俺の牢は地下奴隷全員を無理矢理詰め込んだ牢の前だが、俺が入れられてから常に監視をしている人がいるためしゃべりかけてきたりはしないがこっちを心配そうに見ているというのは微睡みの意識の中で気づいた。


「あははは、入れたわ! ラル、こんなにいるなんてね!」

「ちょっと~声がでかいわ、一応秘密よ」

「あら! いけないわ、ここに入るまでが楽しくって!」


 この場に場違いなほどの明るい声が聞こえた。


「おい! 貴様ら何者だ! ここに誰か来るとは聞いていないぞ!」


 監視役の人が立ち上がり鞭を持ってここにやって来た人物の前に立った。


「あら? はぁ……ラル……これキモい」

「筋肉だるまは私も趣味で無いですわ」

「そうよね……消す?」


 王都で魔族と対峙してから感じることの無かった殺気が周りを漂ってきた。


「お、おま、お前ら何者だ!?」

「うるさい」


 そう言うと監視役が反応できない速度で顔を掴んでいた。


「がぁあ、あ、あああ」

「ばっちぃ」


 そう言うと掴まれていた監視役の人は意識だけがなくなったように倒れた。


「ラル、ここ頑張って入ったわいいけどここ自体が汚いわ」

「しょうが無いわよ、ここ牢なんだし」

「本当こんなか弱い女の子をこんな場所に送るなんて酷いと思わない?」

「一応リーダーが言ったことでしょ? 言うこと聞かないといけないわ」

「私が恩を感じているのはあいつじゃないのよ」


 ブツブツと一人で会話しているように見える……見えないけど声は聞こえてくるのだから見えない何かがいるのか?


「……あら?」


 殺気を放っていた少女がこっちを見た。


「どうしたの?」

「……タイプ」

「「え゛」」


 こっちをキラキラした目で見ている、本気かよ!?


「ちょ、ちょっと、こんなのボロボロなだけよ?」

「ちょっと? ラル~? 私の好みに何か言った?」


 また殺気が出ている。怖い!


「好みに対して言ったのではないわ。こいつボロボロなのだからどこが気に入ったの? って聞きたかったのよ」

「あらら? 私ってば早とちりしちゃったわ。こんなにボロボロなのに目が諦めてないわ、こんな目をするなんて惚れるしかないわ」

「要するに一目惚れね」

「ええ、恋は突然よ」


 やばい、こいつやばい……こっちの意思確認してこない。


「俺の意思は聞かないのかよ」

「ワタシヲフルツモリ?」


 首を曲げながらこっちを見てくる顔は恐怖そのものだ。


「ワタシヲアイシテクレナイナラケスシカナイ」


 ええ……こっちの話聞いてね……


「ちょっと待って!」

「ワタシヲアイシテクレナイナラケス【嫉妬之王(レヴィアタン)】」


 目の前の少女の背中から黒い手のようなものがこっちに来る。


「灰素陣 双滅」


 俺に届く前に目の前に灰色に光る魔法陣が入ってきて消えた。


「ヒロ! こんなとこにその友達って奴はいるのか?」

「カイ……」


 カイがゆっくりと近づいてくる


「もう少しで死ぬとこだったんだけど。遅くない?」

「邪魔が入った」

「私の攻撃を消すなんて……」


 目の前でショックを受けている人がいるが関係なく話を続けている


「さっきのは?」

「こっちの言葉だ、なんで死にかけてるの?」

「分からん」


 俺に付けられた枷を外してくれた。


「私を愛してくれないのに生きているの? なんで? 幸せの形を残しておかないと」

「あれ? パイオン!? 何でここに?」

「げ……」


 げ? パイオン?


「ラル? 私の愛を邪魔する忌々しいこいつを知っているの?」

「私の夫よ!」

「違うわ! というか何でここにいるんだラヴィア」


 誰に話しかけているんだ?


「ダーリンになってくれないならケスシカナイ」


 やばいですけど! カイさん!? こっち!


「ま、待って!」

「マタナイ【嫉妬之王(レヴィアタン)】」

「愛してるとかじゃないだろ? 一目惚れされたことは分かったがこっちも愛してるかとか確認しろよ!」


 愛してるとかハズすぎるワードだ……


「た、確かに……いや、それだけじゃない。私のことを考えてくれるのね! これはもう結婚するしかないわ!」


 話の跳躍が酷い!


「パイオン! 探したのよ、じゃあいつ結婚式する?」

「文脈って知ってる?」


 あっちも困ってる……


「貴様なぜ外に出ている!」


 豪華な服を着た男が服に合わないような焦った顔で立っている。


「今私のダーリンに貴様とか言った?」


 首を倒しながら言っている目が怖い……


「何だこのチビは、どこから入った」


 ブチッという音が聞こえた気がした。


「殺す」

「チビが何を言っているんだかな! 【無状】」


 少女から出ていた手が消えた。


「――!?」

「はは、遠距離系は発動させなければ雑魚なんだよ! 【供給貧】」


 弾みたいなのが飛んできてる? 


 スッと軌道上に入ってみた。


「がぁあああ!」

「ん? 貴様を狙ったつもりでは無いはずだが……」

「だ、ダーリン!?」


 ああ、そうか。あの弾みたいのが攻撃か。


「貴様にはもう効かないと思っていたが仲間の迎えで回復したのか。俺の〈過裕者〉の前にひれ伏していろ!」


 そう言い高笑いしている。


「お兄ちゃん! 大丈夫!?」


 牢の中から二ニナの声が聞こえる。


「ダーリンへの好意……殺す」

「いや、短気か!」


 誰にでも反応するのかよ!


「なに! もう解除した!?」

「あれ?」

「ヒロ……なんで効いているんだ?」

「ん? どういうこと? カイ」

「〈過裕者〉ってスキルヒロに効かないと思うぞ」

「「ん?」」

「そこの灰髪の貴様何を言っている、俺のスキルが効かない人間なんていないんだよ!」

「バカだな……そのスキルは人の運気や持っている物を過剰に奪うのが基本だろ? ヒロは不運神の加護があるんだから人より効かないどころかほぼ効かないと思うぞ?」

「灰髪の貴様は分かっていない、この数日間そいつには効いていたぞ。スキルの事を()()()()()()とか()()()な!」


 あ、地雷だ。


「そうですね……バカです、知識が無いのに無駄にしゃべってごめんなさい」


 牢屋に向かって体操座りでブツブツ言ってる。


「パイオン、大丈夫よ、私はそんなとこも好きだわ! ダサくないわ!」


 慰めの声が聞こえているけど問題は少女の標的が二ニナになっている


「ダーリンに好意を寄せる者は消さねば」

「あ、あわわわ」

「貴様ら俺を無視するな!!!」

「「どうでも良い」」


 カイを慰めている声と二ニナに詰め寄りだしている二人の声が揃った。


「んぐぐ、俺は俺を無視する奴が許せないんだよ【集裕改装】」


 周りの空気が軽くなった?


「あぐがぁあ」「んん……」「あぁぁあああ」


 隣の牢の中から呻き声が聞こえてきた。さっきまで中で立ってみていた人達が地面に伏している。


「何を……」

「くっくっく。力を奪っただけだよ。まともに動けなくなっても問題ないやつが多くいるここなら俺は最強だ!」

「多分牢屋の中の人の力を無理矢理奪ったんだと思うよヒロ」

「ほう、さっきまでデタラメばかり述べていたくせにまともなことも言えるのだな」

「ぐは!」


 言葉が心に刺さったみたいだな……実際に「ぐは!」って言う奴初めて見たけど……


「ここのルールは俺自身! 脱走は死刑!」


 腕が二ニナのように変形している。


「私の恋敵を勝手に痛めつけてんじゃねー! 【嫉妬之王(レヴィアタン)】」

「はっ! 無駄なんだよ! 【無状】」

「ちっ! ラル!」

「駄目よ。ここで使えばバレてしまうわ」

「でも!」

「バレて捕まると面倒なのよ、逃げましょ」

「逃げれると思ってるのかよ!」


 距離を詰めてきて殴りに来ている。


「【鉄刀】。銀月流 壱之型・三日月」


 腕をぶった切った。


「ぐ!」

「だ、ダーリン! 私を守ってくれるのね! これは恋ね! 私に惚れてくれたのね!」

「まずまず……名前知らないんだから恋とか以前じゃない?」

「はっ! わ、私名前を言うの……忘れていたわ!」

「貴様! 何だその剣は!」

「剣じゃない、刀だよ」


 確かに刀はマイナーらしいからな……


「ちっ」


 あいつは舌打ちをするとギュルッと音がしながら腕が生えてきた……


「「キモ!」」

「黙れ……貴様は許さん、俺様の腕を……腕を!」


 目の焦点が合っていない気がするが何だろうこいつは何かが変だが竜眼で見ているのに何も感じないなら気のせいか?


「私の名前はラーニャ、よろしくねダーリン。あっ私のことはハニーって呼んでくれ良いわよ」

「じゃあラーニャあいつは俺が斬るからこの牢に入っている人を逃がしてくれないか?」

「ハニーって呼んでくれたら」

「分かった、じゃあ俺の()()しているカイにたのむ――」

「私がやるわ!」


 簡単に乗った……


「うううぅぅっぅうう……がぁぁああ!」


 飛びついてきたが見ている以上捌ける


「銀月流 二之型・月障転蓋」


 わざと峰で当てる。


「くっ! それだけの動きをなぜできる……クソ!」


 そう言いながら後ろに跳んでいる。


「できるものはできるんですからしょうがない!」

「まっすぐツッコんでくるとはバカの極みだ! 【強制落禍】」


 カイ、信じるぞ! 


 あいつが何をしてきても俺に効かないと信じて突っ込んだ


「銀月流 壱之型・三日月」

「ぐがぁ! な、なぜ……ってあれ?」

「……」


 斬った感じがしたが変な感じがした。


「斬られたのに痛くないな……」

「――!? どういうことだ……」

「ヒロ! 退け!」


 カイの咄嗟の声でギリギリ避けれた。



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