5話 半年の動き―中―
==5話 ==
Sideマイン
ヒロトがいなくなってから一ヶ月経った。
今は第四王子のロード兄さんの屋敷に来ている。この前王城で会ったときに今まであまり話しかけられた事がなかったのに急に話しかけられてビックリした。
「マイン、君……王目指す気になったのかい?」
ライン兄さんは継承権をもつ王子の中で唯一王都に屋敷を持っていない。実際にはあるにはあるが屋敷と言うより普通の家の少し大きいくらいの家を持っている。
今いるのはロード王子が治めるルラックの街だ。ここはアルウェムス王国の中でも随一の森林がありそこには多くの魔物が生息しており辺境伯が治めている領地に近い位の重要な領地だ。
「なぜですか?」
「いや、まぁ昔から俺は君を押していたんだよ、王家の中でも珍しい魔眼の所有に加えて魔眼以外の見る目があるように思えてね」
きゅ、急にそこまで褒められても……なにか裏があるのか?
「急にベタ褒だと裏があるのではと疑ってしまいますよ」
「そうかい? 君の場合その目で見れば嘘かどうか分かるんじゃないか?」
「……ここまで来させて更にこの部屋には誰も入れない。真っ先に疑ったのは俺を殺すことかと思いましたが見ればそんな感じでもない、そして本気で褒めてくれている。俺には真意がつかめませんね」
そこまで言うといままで表情がないのか? と思う程変わらなかった顔が少しだけ笑っていた。
「あはは、そうか、もう魔眼は進化したのか」
「ー!」
「警戒しないでくれよ、別に何かをするつもりはないよ」
「いや……今進化って」
「ああ、そっちか。君は昔から進化論を考えていたね、あれはずいぶん昔から見つけられているよ。スキルは進化するし魔眼だって進化するさ、まぁどうしてなるのか、条件は全て同じなのか、といったことは分からないがな」
「国はそれを隠しているのですか?」
「ああ、この領地はそういう事の秘密を守っている。だから俺は知っているんだが」
「守っている? 何からですか?」
「はは、興奮しているね。そういう知りたいことにまっすぐなところも買っているとこだよ」
「はぐらかさないでください」
「まぁ秘密にしておきたく思っている理由くらいなら教えてあげよう。後は自分で探せ」
「……」
「秘密にしたがっている理由は簡単だよ。王系のスキルの発現を恐れているんだ」
「王系?」
「ああ、スキルが進化すると~之王ってスキルになるらしい、ここまで進化すると一般のスキルでは中々簡単に相手できる物ではなくなる、そうなれば自分の立場が保てなくなると恐れているんだそれが理由」
「自分の保身のためにそこまで重要な事を……」
「まぁ、ここには進化なんて常識だがな」
「え?」
「森の魔物はスキルを持っているんだ。自然と伏せておける事じゃなくなる。魔物の方がスキルの進化が起きやすいらしくてな、ここを出るときは他言を禁止する呪術をかけることになっている。まぁここにいる多くが冒険者やハンターだから中々出て行くことはないが」
「じゃあなぜ俺にそこまでの情報を?」
「この国を変えるつもりだろ? 最初の一歩は知っておかないとって思ってね」
「なら全部教えてくださいよ」
「それは無理だよ。自分で知るって事が重要だろ」
「そうですか」
「今のところ王都に秘密があることには気づいているか?」
「それに対して答えてくれるんですか?」
「焦っているのか?」
「焦ってますよ、友をなくしたんですから。普通の国にしたいんです」
「あせ――」
会話を切るように警報が鳴った。
「丁度良い、良い物見せてやる」
そう言うと俺をおいて部屋から出て行った。
「失礼します。着替えを用意させて頂きました」
この屋敷のメイドに案内されて着替えをさせられた。
何なんだ?
「よし、行くか」
着替えが終わり部屋を出るとロード兄さんが待っていた。
「何があったんですか。しかもこの服はなんですか?」
王族として暮らしていればそれ相応の服を着ることになる、理由としては自分が王族であることの表明とその服を買うのにお金を国民に流すといった様々な理由がある。
だが着替えとして用意されていたのは丈夫そうなただただ普通な地味目な色の服だった。
「まぁ王族として金を落とすために高い服を買わないといけないのだが……それは破れても良いように着替えてもらっただけだ。といってもそれも高いがな、有名な付与師が付与を施している」
「へぇ……」
着てみて身体に合うように変化したのはそれでか……防御力を上げるためか?
「ちなみに付与は着る人の身体に合うように変化するというものだ」
「それだけ!? 必要!?」
そうツッコむと「はは」と笑ってそれ以上言ってこなかった。
◇◇◇◇◇
「ロードさん、そいつ連れてくつもりですか?」
「やめといた方が良いですよ、今回のでかそうですよ」
ライン兄さん連れられて行った場所には冒険者らしき人が何人もいた、全員装備をしっかり整えている感じだ。
「俺がこいつお守りしながらやるから良いよ」
「ロードさんも一つの戦力なんですよ? それを欠きたくないんですよ」
「こいつもまぁまぁやれるよ、それにこいつは俺の異母兄弟、一応王子だ」
「ここじゃあ関係ないでしょ?」
「一応言っておいた方が良いかなって思って言っただけだ」
「はぁ? まぁ良いですよ、割り振りを少なくしますがそのガキ守るために俺らは動きませんから」
「ああ、それでいい」
話について行けない……というか王子ってことに誰も反応しなかったな
「ここじゃ、王子なんて看板意味がないんだよ」
「どういうことですか?」
「ここは実力主義、強者が全てを持てる、逆に弱者は何も言えない」
「それでここを治めれるんですか?」
「ああ、ここは特殊だからな」
そう言いながらこの街の外を目指して歩いている
「説明お願いできますか?」
「ああ、ここの近くに大きな森林があるのは知っているな?」
「ええ」
「あの森は少し……いや、かなり特殊でね……あの森林の中央はまだ誰もたどり着けていない、それの理由に森林の中腹くらいに中心を囲んでかなり強い魔物が巣くっていてどのルートでも何かしらの魔物にあたってしまう。困ったことにそいつらの影響なのか中腹から逃げる魔物が外周に来て暴れる時がたまにあるんだ、そうなると今度は外周の魔物が逃げるんだがそいつらにとって餌が多いところに逃げたいのかルラックの街に来るんだ」
「それがさっきの警報ですか?」
「ああ、それでこれはその逃げてきた魔物の討伐隊」
「この街に冒険者が多いのって」
「これがあるってのと森に入ればかなり良い仕事ができるからな、離れてその日暮らしをするよりマシって考えなんだろう。まぁ実際冒険者や狩人がいなければこの街は成り立たないがな」
「警報から少し経ってますけど急がないんですか? この間に街に接近しているかもしれないんじゃ」
「ああ、それは大丈夫だ、狩人達が出ているからな」
「その狩人って何ですか?」
「ん? 狩人ってのは獣討伐専門の集団のことだ。王都には……ああ、そういえばいないか」
「冒険者との違いってあります?」
「かなり違ってくるぞ、狩人と冒険者の違いというと討伐した相手への対応が違う。冒険者は討伐した相手が魔物なら素材として扱ったりするが狩人は基本埋葬する、自分たちの武器の為に素材をとったりするが基本は埋葬になる」
「強さで言うとどうなんですか?」
「一発の勝負ならば狩人に軍配が上がるがそうでないのなら冒険者だな」
「へぇー」
「ついたな。全員準備しろ!」
さっきライン兄さんに反論していた人が指示を出していた。俺がこの街に来たときとは反対の門の前だ。
「森に少し入るな……」
「何か問題でも?」
「纏魔法使えるか?」
「? はい」
「どこまで?」
「業風ノ衣は使えます」
「……どのレベルだ? 見せて」
「? 【業風ノ衣】」
「……ギリギリだな」
「ギリギリ?」
「ここじゃそれは基本レベルだ。基準ギリギリ」
な! 王都では結構強い部類に入ると思っていたのだが……
「まぁマインは戦うわけでもないしいいか。それを絶対に解除するな。いいな?」
そう言ってくる目は命が掛かっていることを言ってくる
「なぜですか?」
「森には纏を使い続けれなければ森の力に犯される。そうなればかなり面倒になるからな」
そう言うとブツブツと会話でなく何か呟いている。その呟きが終わるとライン兄さんの周りに透明な物がついているように感じた。
「それは――」
「行くぞ!」
質問しようとしたが隊が動き出してしまい聞けなかったが、ロード兄さん以外の人も皆が同じように何かを纏っていた。それに……ヒロの纏魔法より魔力量が多い、じゃなければ俺が魔眼なしでも気づくレベルじゃない。
森に入った瞬間身体がこの森に入り続けることを拒否するように動けなくなった。
「やっぱり駄目だったな、ロードさんちゃんとお守りしておけよ」
ロード兄さんに反論していた人がやっぱりなと言わんばかりの言い方で言ってきた。
「ああ、マイン……やっぱり駄目か」
「こ、これ……これは?」
「まぁ正しいよ、何も感じないでズカズカ進めるよりこっちの方が正常だ」
「はぁ……はぁ」
「辛くても纏だけは維持してろよ? こうなる理由には魔素の質が違うからと考えられているんだよ。ここの魔素は格段に豊富で凶悪だ」
そう言うとライン兄さんは俺を背負ってくれた。
「すみません……」
「大丈夫だ、まぁ分かるか? ここまで力の差がここにはあるんだよ。王都で規制していることのほとんどがここではない。それがここの人の強さにつながっている……いた」
少し離れた先に大きな熊がいた。まだかなり離れているこの距離からしても俺より大きいと分かる。
「さすが狩人だな、結構削っている。一班はあの標的以外を警戒しろ、二と三班で狩人の加勢に、そのほかは狩人達の怪我人を見ろ、誰一人死なすな! いいな、行け!」
そう言うと指示に従って散って行った。
「ロードさん、参加できないか?」
「ああ、まぁでも大丈夫そうじゃないか?」
「まぁそうだが狩人達が削ってもまだあそこまで動いているとなると厳しいことがあるかもしれん、準備しておいてくれ」
「了解だ」
そう言うと熊に向かって走って行った。
「あの人は?」
「この街にいるAクラス冒険者の一人だ。ついでにこの街を支えている人の一人で突撃部隊での信頼度はかなり高い」
「へー」
Aクラスというとフルトさんやテンマさんくらいの強さか、かなり頼りになるな。
「……多分ここ以外のAクラスと比べるのは良くないぞ?」
「え?」
「ここはグラベル都市国に認定されている危険指定地だ、ここでAクラスを名乗っているのは外でAAクラスを名乗っているレベルだよ」
「じゃあ、あの人はこの街で一番強い人?」
「いや……そうではない……ここにいる人達の中で最強はAAクラスの人だよ」
そう言うと目の前から甲高い金属音が響いた。冒険者の攻撃を熊が爪で弾いた音の様だがこれほど大きい音は不味いのでは?
「まずいな……」
「他の魔物が来るんですか?」
「ああ、そうなると厄介だ……ああ、さすがだな」
そう言うとさっきのAクラス冒険者の人が熊を両断していた。
「ここを速く出ねば……」
そう呟いているが俺には魔眼があるため分かるが、もう結構来ている……
「もう結構来てますよ。あっちはまだ数が少ないですよ」
「分かるのか? って魔眼か」
「はい」
「あいつらに言って急ごう」
◇◇◇◇◇
なんとか魔物達に完全に包囲される前に抜け出せ全員無事に帰って来れた。
「まぁあれだな、これに付き合わせたのは先を見せるためだ」
帰ってきてから食事を食べているときに言われた。
「先とは?」
「俺は王になるつもりがない、ここにいる戦力はお前の味方になる。まぁお前専属の集団ってことにはできないが……必要な事があれば俺達は駆けつける」
「……それはライン兄さん貴方の協力をもらえるってことですか?」
「ああ、分かっていると思うが……」
「ええ、王都に襲撃の兆候が見えたときにですね」
「それに気づいているならいい。もう一つあるのは?」
「分かってます。探って自分の目で確認します」
「長くなりそうだな」
「王になると決めたので」
この後も少し離した後一泊して王都に戻った。
どうも。ロキュです。
最悪なまでの忙しさ! 毎日死にながら動いております。もう毎日お腹も痛いし睡眠時間も7時間が五時間半に、もう辛いです……という言い訳をしまくりますけども!
やっと作品を作る時間がとれるようになったので、できるだけ書き溜めをしておきたいですがどうなるか……
少し間が空いたことで作品の感覚がずれてしまっているかもしれないので気をつけながら書いていきます。
ではでは。