4話 半年の動き―前半―
==4話 ==
Sideマイン
――半年前――
王子の位を持っていても無罪の人を救えなかった……
「マイン様、気をしっかりしてください」
「チヨ、今は一人に……してくれ」
「……マイン様」
何か言いたげだったが何も言わずに部屋から出て行ってくれた。
……クソ、王子の位を持っていても王を目指すことなく動いていたツケが回ってきたのか?
そもそも王宮でのうのうと生きている奴らは王都が攻められたと分かった時点で動けなかったじゃないか、それで動き出せば国民を守ることなく自分たちを守るために動く、自分のことしか考えない奴ばかりじゃ無いか……人の為に動いた奴が損を受けるなど、間違っているだろ。
『そうそう、間違っているでしょ』
「【風纏】」
誰もいなくなったはずの部屋から急に声がして咄嗟に風纏を発動した。
『警戒なんて無駄無駄♪』
そう聞こえると風纏が消えた。
「――!? 何が……どこから」
『ん~? 姿が見たいなら見してあげるよ』
そう言うと俺自身の目から出てきた!?
「う、うわ!」
『あはは、驚かないでよ~』
褐色の肌に長い瑠璃色の髪を持つ小さめな子供がケラケラ笑っている。
「だ、誰だ?」
『ん~名前っていうのはないな~僕を呼ぶなら審眼かな?』
なに? 審眼って俺の魔眼の名前だろ?
「どういう……」
『僕は君が生まれた時にこの世界に生まれているんだ~まぁ突き詰めれば僕は君だし君は僕って感じだよ♪』
わ、訳分からん……
「な、なにがなんなのかわからない……」
『まぁまぁ深く考えない深く考えない、重要なのは君がこれ以上魔眼の力が欲しいなら対価を頂戴! って事言いに来たの~』
「対価……」
『そうそう、対価。今の君が使っているのは僕の力のほんの一部なんだけど、これ以上引き出すには僕からも要求したいんだよね』
「例えば?」
『レベルによるよ、まずは契約を、これで魔眼は強化されるし、その上で僕の力を使うならその都度に必要な物を言うよ、主に髪とか爪とか、君の身の丈に合わない物だと要求がでかくなるけどね。最上級だと命とかだよ』
命……
「命もかかるのか……」
『アクマ的でしょ~まぁそうそう命なんて要求しないよ』
「……君の力って何?」
『質問が多いな~まぁ良いけど。僕は審眼だからできることは少ないけど小さな事で言えば物質ではない物に触れるようにできるとかかな』
「物質でないもの?」
『あーじゃあ僕に触ってみてよ』
? 疑問に思いながら触ろうとしてみると触れずスッと手が通り過ぎてしまった。
「な!?」
『僕は存在してるよ、でも物質としては存在してないのさ、こういった存在は一杯いる、というより丁度よかったかもね、この国もう危ないよ』
「な、何が?」
『この国に目を向けまくってる存在が牙をむけつつあるし、魔物がもうすぐここに来ると思うよ』
「そんなことが分かるのか?」
『まぁなんとなくだしいつ来るかとか分からないんだけどね~』
「契約しただけならば俺に損は来ないのか?」
『まぁそうだよ』
「じゃあしよう」
『ありがと! じゃあ僕の名前付けて』
「名前を考えるのが契約なのか?」
『うん、お互いに名前を付け合うの』
「へー」
どうしようかな……んー
「ラズリってのは?」
そう言うとニコっと笑って
『良いね~名前! 僕はラズリね! じゃあ僕からはティティスで』
「ティティスね」
俺に名前がつくと長すぎないか?
そう思っていると目の前にいるラズリが光っていた。
『んーはは』
笑ってる……
「大丈夫か?」
『うん、大丈夫。さてと、契約できたし戻るね!』
「うん……」
そう言うとフッと俺の目に入ってきた。
これ結構怖いな。
「マイン様、ピーナ殿下が……」
「チヨ、分かった。行こうか」
扉を開けるとチヨの隣にアインがいた。
「アイン……」
「殿下。殴っちゃ駄目ですよ」
「分かってる」
◇◇◇◇◇
俺の住んでいる屋敷の中にある応接室は全部で五つある、応対する相手によって変えねばならないときがあるからな。ライン兄さんの屋敷には八つもあるらしい、ライン兄さん曰くほぼ四つは使い方分からんって言っていたが……
ピーナ、この国の第三王子、俺より位が上の存在だ、しかも王子。使うの部屋は上から二つ目に贅沢な部屋に通されている。こういう部屋通しはチヨが担ってくれている。
「やーあ。マイン殿下!」
部屋に入るとソファにドカっと座っているピーナが声をかけてきた、その後ろに二人いる、一人はピーナの執事だな、もう一人は……騎士か、騎士が王族に会うときの服装だ。それにしても白々しく殿下と付けてくる……これは煽りと分かっていてもイラッとくる。
「ピーナ第三王子、私の屋敷にお越し頂きありがとうございます」
第三を強調してみた。
「いやいや、届ける物があってね」
「何でしょう?」
向かいのソファに座るとすぐに言ってきた。礼儀をギリギリにして俺のボロを出すつもりか? タイミングが絶妙だ。
「おい、あれを出せ」
そう言うと騎士の方が懐から一枚の封筒を出してきた。
「それはあの罪人の遺書だな、馬車の中で書かしてやった」
「……そうですか」
「ああ、奴自身の血で書かれている本物だ、安心しろ」
は? 血で書かれている?
「それはどういう……」
「ん? 当然だろ? 書くのは良いが奴は凶悪犯、ペンを持たせて私が狙われてはこの騎士の責任となってしまうが俺としては奴にも遺書を書くだけの温情を与えようと思ってね、血で書かしてやったのさ」
ギリギリと歯が鳴っている。
わかっている、ここで殴ればこいつの目論見通りだ。でも怒りが……収まらない!
『反応しないで頭の中で反応してね』
ん? この声はラズリ?
『目の前の奴に魔眼の強化を使ってみて、僕の名前を心の中で呼んで指から血を出してくれれば魔眼の強化ができるよ』
本当かそれ!
『本当だよ。まぁそれも検証するためにやってみてよ』
ラズリ、魔眼の強化を
『対価は血を』
そう言って後に血を出すと血が流れる感じはしない、何かに吸われるみたいだ。
魔眼で見てみると心の変化が今までよりはっきりとそして広範囲に分かる。
「そうでしたか、ありがとうございます」
「では、失礼しよう」
そう言って立つが、立つ瞬間にピーナはニヤっと笑っていた。魔眼で見ると更によく分かる。こっちを完璧にバカにしてきている。何なんだよこいつ! って後ろの騎士は気まずさを感じているのか? なぜ?
「チヨ、アイン。ピーナ殿下をお送りしないとね」
そう言ってピーナを送ると言いながら変な物置かれないか監視しながら後ろを歩き屋敷から出るのを見送った。
「殿下、よく耐えましたね」
「ご成長なさいましたね」
「まぁな、それよりピーナの後ろにいた騎士の事を探っておいてくれないか?」
「分かりました、私が探ります」
「ありがとうアイン」
「それで遺書の方は?」
「ああ、ちゃんと読むさ、多分だが後を追うなよ、とか書いてありそうだがな、リン宛てに」
「ヒロトならそういうこと書きそうですよね」
「チヨ、リンとフランを呼んでくれ」
「かしこまりました」
そう言うと二人とも俺の部屋の近くまで一緒に来たが部屋の前で離れて行ってくれた。
◇◇◇◇◇
「リン、フラン。これがヒロトからの最後の言葉だ」
二人が来てからピーナから渡されたヒロからの手紙を読んだ。
「ヒロ……」
「マイン、それだけなの? 代わりに復讐しろとかなかった?」
物騒か!
「ないよ、まずまずヒロは俺達にそんなことをしろなんて絶対に言わないだろ」
「……」
リンは見たままの動揺、フランは見た感じは変わりなく見えるけど心の中では自分を責めている、この魔眼がなければフランがここまで自分を責めているとは気づけなかったな……
「リン、君にはこのまま上の学校に進級してもらう、俺からの推薦で学費もそこまでかからないようにしてある。フランもそのまま上がるならば俺から手助けをしよう」
「……なんでマイン殿下はそこまで余裕なんですか……その手紙だってヒロの血で書かれているって行ったじゃないですか! 何でそこまで淡々と次の話ができるんですか!」
リンが八つ当たり気味に言ってきた。
「淡々とね……俺も内心じゃキレているよ。ピーナやここに攻める形を作ったギールを恨んでるしね。でも一番キレたいのは自分自身なんだよ……いままでこの第五王子として居座り続けて王を目指すことなく自分の手柄もライン兄さんの手柄として動いていた、いままでの功績を自分の物だってしておけばもっと発言に力があった! なのにこのざまだ! 無実なのに、国民を守ったのに罪をかぶらされる友を指をくわえて見ることしかできない! 淡々と見えるならそれは目標がちゃんと決まってからだよ。俺はこの国の王になる、そしてこの腐った形を壊す。だから、淡々と前に進むしかないんだよ」
ついつい熱くなってしゃべりすぎたけど言葉にすると頭の中で考えるよりはっきりするな。
「……そのために力が欲しいから僕たちを進級させたいの?」
「それもあるが、公務が多くなれば心労も多くなるから学校に行けば安心した存在に会える状況にしたいのと目をはなすとピーナを襲撃しないか不安だからな」
そう言うとフランが目が泳いだ。本気でやるつもりだったか……
「分かりました。その言い方ならばいつかピーナに復讐できますね?」
「物理的は無理かもだけどな」
「いえ……十分です。マイン殿下を信じて何も行動しないでおきます」
あ……リンもやるつもりだったのか……目がいつの間にか据わってる!
目の前にいる女子二人の怖さを改めて実感した。
どうも。ロキュです。
なんとかできました。半年前のとこからなので次にも続きます。できれば明日にでもあげれると思います。休日サイコー 息抜きの時間だー!