決裂。さらば都より
皆々様。おはようございます。または、こんにちわ。はたまた、こんばんは。作者で御座います。
投稿の間隔がひらいてしまい申し訳ありません。
今後とも、宜しくお願い致します。
秀高の上奏である都再建計画は関白の近衛稙家から帝に伝わる。稙家から話を聴いた帝は『明日、再度皆を召集せよ』と勅令を出して翌日、公家達は再度集まった。
『此度はどうしたのか』
『昨日の件かの』
『少将の上奏で何かあったのは間違いないの』
公家達が様々な思考を巡らせているなか、秀高は内心冷や汗だらだらだった。
「(昨日、関白殿下が帝に伝えるって言ってたけどそれの件か?いや、帝が俺の進言を受け入れる訳、、、、ないよな?)」
そして、関白の稙家が入室し関白の席に座る。その直後
『天子様の御成りでございます』
と侍従の声が響く。
最上段から侍従の声が響き渡ると、下段の公家達(秀高も)は一斉に頭を下げた。
そして上段と下段の仕切りをしている簾の奥に帝が座る。
『皆、面を上げよ』
帝の優しく落ち着いた声が簾奥から聞こえる。その声に反応するように公家達が頭を上げる。
『関白よ』
『はい』
『奥に居るのが堺少将か?』
『はい。その通りでございます』
『ふむ。堺少将』
「はっ、はい」
名前を呼ばれた秀高は驚きながら返事をする。その為、少し声が裏返ってしまった。
『ふふふ。面白き者よ。どれ、関白の所まで近う寄れ』
「そ、それは、恐れ多い事かと」
『良いのじゃ。朕がお主の顔を見たいのだ。さぁ、近う』
「はっ、はい」
秀高は言われた通りに稙家の所まで前に進み頭を下げた。
『上げよ』
帝がそう言うと、侍従達は仕切りをしている簾を巻き上げていく。その瞬間、稙家達が席を2つ分ほど更に下座側に動く。
そして簾が全て巻き終わると、帝は立ち上がり、秀高の前に改めて座る。
『堺少将。面を上げよ』
「はっ、はい」
秀高は少し頭を上げる。
『よいよい。朕の顔が見えるくらい面を上げよ』
「はい」
秀高はゆっくりと顔を上げて遂に帝の顔を見る。
「(すげ~。俺、天皇陛下の顔を間近で観れてるよ。しかも目元が平成天皇陛下に似てる)」
『少将。直答を許す。答えてくれるな』
「はい」
『昨日、関白より都の再建の上奏がお主より出されたと聞いた、しかも費用は他の者達も出資か殆どお主が出すともな』
『それで、お主はまた、平安の都と同じように創るのか?それを聞きたい。忌憚なく答えよ』
「は、はい。では正直なところを申しますと平安の都を再現するのは不可能に近いと思いまする」
『少将、お主、昨日は再建すると言っていたではないか』
『左様。それが何故、出来ぬと申すのだ』
秀高の答えに他の公家達から異論がでるが
『これこれ。そう、捲し立てるでない。少将。理由を言ってくれ』
「はい。理由としては曾ての平安の都は言ってしまえば防御力の無い張りぼての都です」
秀高がいい放つと、場は静かになった。
『続けよ』
「はっ、はい。なので、曾ての柵だけでは易々と侵入を許してしまいます。なので新たな都は堀と石垣で囲む必要があります」
『堀と石垣とな』
『その様な大掛かりな事を』
『だがな』
『確かに。あの応仁の戦を考えるとな』
公家達は都を再建させようにも、曾ての応仁の乱で都が戦場になってしまったことを思い出す。
「曾ての応仁の大乱にて、内裏をはじめ戦禍に巻き込まれた建造物は多々あります。これ以上、都での戦をさせない為にもこの京の都全てを創り直さなければならないと思います。消失した建造物は当時の場所に再建致しますが、それ以外は全て造り直します」
『なるほどの~。町の造りは決まっておるのか?』
「はい。曾ての平安京と同じように朱雀大路の奥に内裏を中心とした宮城と城下町を築城します」
『宮城とな』
「はい。内裏を城の本丸とし、公家の皆様の屋敷を纏めた二ノ丸、武家屋敷などを三ノ丸とし、その外側に城下町という構造になります。そして城下町を城壁と堀にて囲う。というものであります」
秀高の宮城、城下町建造の構想を聴いた帝と公家達はその規模に驚いていた。
『その様な大規模な普請をするのか』
『その間、我々は何処に住むのだ』
『どうするのだ少将』
「それに関しては、一時的ではありますが、洛外か私が治めております堺に仮住まいしていただく形になります」
『洛外か堺にかと言うことか』
帝の一言で、広間がまた騒ぎ出す。
『少将。まさかとは思うが天子様を京から出すわけではあるまいな』
『その様な事、罷り成らんぞ』
『天子様。都から出るのはお止めください』
『どうか』
『天子様』
『天子様』
公家達の発言で更に場は騒然となる。そして
『この様な暴挙、断じて見過ごせん。天子様。この堺少将を地位を剥奪し追放を御命じくださいませ』
『左様。鷹司卿の養子とはいえ元は尾張の下級武士。その様な者がこの場に居るのが的外れと言うものです。天子様。どうか御決断を』
ついには公家達による秀高を糾弾する声が出てきてしまった。それを聴いた帝は困った顔をしてしまう。そんな顔を見てしまった秀高の頭の中で何かが切れた。
「では、追放すればいいでしょう」
『『『!!!』』』
今まで聴いたことの無いドスの効いた秀高の声にその場の空気が固まった。そして秀高は言い続ける。
「私はこの日の本の為に先ずは都を再建し天下静謐を目指そうと思っておりましたが。皆様の言うとおり、私は尾張の武士出身です。身分が不相応なのは理解しております。それでも、日の本から戦を無くそうと私は考えているのです。
皆様はこの会議はただ世間話をして時間を潰すためのものではないのは御承知のはずです。この国の行く末、方向性を決める為に皆様方は集まっているのでは無いのですか?それをたかが少し家から離れるだけだというのにこの騒ぎよう。
皆様は民達が戦禍に巻き込まれ家を転々としてる事は御存じか?民達が明日を生きる為に必死になっている中で皆様は何をしていましたか?『金を出せ、税を納めろ、勤皇に勤めよ』等々、下の者達から搾取するだけではありませぬか。陛下が泰平を望む中、皆様は地位や名誉、金に目が眩み御政道を蔑ろにしています。 、、、まぁ、私はどうやらこの場で天下静謐を語る資格は無いと知りましたのでもう関係ないですね。陛下。私は、近衛少将と守護の地位を返上致します」
『『『!!!』』』
「何も驚くことは御座いますまい。皆様が言った通り、新参の田舎武士出身者の邪魔者が皆様と同じ立場で物申すこと事態、御門違いと言えましょう。なれば私の官位も意味がありますまい」
「陛下。申し訳ありません。今の某では、どうやら力不足のようでごさいます。堺に戻り、天下を統一するまで私は京には一切、近付きません。統一後に再度、拝謁致します。では、邪魔者はここでお暇致します。失礼いたします」
秀高は頭を下げたまま部屋の隅に移動し戸を開けて退出した。
その間も広間に居た帝をはじめ、公家達も呆然と見ているしかなかった。
秀高は御所を出ると直ぐに馬に乗り鷹司屋敷に戻る。そして屋敷に五万貫と兼輔と忠冬に宛の置き手紙を残し、連れてきた部下達と堺に帰って行った。
後にこの話は洛中、洛外で話題となり【堺少将の三日上洛】【堺様、御所にて乱心す】と言い伝えられるのであった。
ーーーーーーーーーー
京から堺に戻った秀高は足早に自室に戻った。
『おい。見たか?総統の顔』
『えぇぇ。凄い形相だったわね』
『都で何かあったのかな?』
『それ以外、考えられんだろう』
秀高の様子を見ていた他部署の者達も秀高がこれほど早く帰って来たのもあるが、それより秀高の怒り、後悔、焦り等々、複雑な顔をしていたのである。
『秀高様(あのような顔をするなんて)』
小梅も秀高の顔に驚きつつも、秀高の部屋に静かに入っていった。
部屋の中に入った小梅は執務机で俯く秀高を見る。
「ああああああ。くそっ」
秀高は机をバンッと叩いて顔をあげると、秀高の正面に小梅の顔が視界に入る。
「うわっ。小梅。脅かすなよ」
『ふふふ。あなた様もその様なお顔をなさるのですね。まるで父のようです』
「義父上様か?」
『はい。お父様も朝廷でうまくいかない時は屋敷に戻ってから唸っていましたから』
「そ、そうなんだ」
『で』
「ん?」
『何があったのですか?』
秀高は小梅にこの三日間の上洛での内容を話した。
初日は、屋敷で近衛晴嗣と義兄弟になったこと。
二日目、朝廷にて、挨拶と都再建の上奏を出したこと。
三日目、帝から再度参内を請け、帝を含めた場にて再度都再建の話をする。しかしその途中で公家達と対立し地位を返上すると言って、帰って来たこと。
『ふふっ、ふふふふ』
小梅は秀高から話を聴くと微笑んだ。
「なぜ、笑うんだ」
『そ、それは。秀高様も子供のような行動もするのかと思いまして』
「だからそれを今、少し後悔してるんだよ。言いたいことだけ言って去るなんて、本当に子供と一緒だってね」
『ふふ』
「ふっ、ありがとう小梅。君のお陰で元気がでたよ」
『当然ですよ。私はあなた様の妻なんですから』
「そうだな」
この後、今まで通り、執務机で仕事を捌く秀高を見た他部署の者達も心を撫で下ろし仕事に戻っていった。
秀高も黙々と溜まっていた仕事を片付ける。
翌日にあることが起こるとも知らずに
誤字、脱字等ありましたら、ご指摘願います。出来るだけ速く修正致します。
宜しくお願い致します。