燻った火種は容易く大火となる。
皆様。お元気でいらっしゃいますでしょうか?作者です。
多忙に付き長らく投稿出来なかった事、深くお詫び申し上げます。
一段落しましたらまた投稿を出来るだけ早めますので、宜しくお願いします。
今回も少し短いですが、どうぞ。
1549年。7月
堺での興奮がまだまだ冷め止まないこの時。突如それは訪れた。
大御所、足利義晴 大御所屋敷にて暗殺。襲撃者は不明。
三好長慶 食事に毒を盛られるが一命を取り留める。暗殺者は不明。
美濃のマムシ、斎藤道三とその息子義龍、鷹狩り中に襲撃に会い死亡。襲撃者は土岐氏を始めとする反斎藤派によるとの疑い。
三河の松平広忠が家臣に切られ死亡。黒幕は不明。
この一連の出来事に各地の大名達の動きが活発となった。
先ず初めに動いたのは美濃の土岐氏であった。反道三を支持する家臣達と共に決起し美濃の7割以上を既に支配下に置いた。
残りの3割は道三の元家臣達により死守され信長が率いた救援が到着すると。道三の遺言によりその場で元家臣達は織田家の軍門に入る事となった。これにより織田と土岐の美濃を巡る争いが始まるのであった。
しかし織田家の情勢は思わしくなかった。三河の松平氏が今川の調略により今川に従属する事になってしまったのだ。織田は土岐と今川に挟まれる形となってしまったのである。
その一方で京都はそこまでの大騒ぎにはならなかった。元々、療養中であった義晴に代わり義輝が既に足利家の全権を掌握していたからである。義輝は首謀者は六角、尼子、大内、山名のいずれであろうと推測し調査を始めている。
そして、そんな騒動が起きている最中でも堺はいつも通りに賑わっていた。
「ふぁぁ〜。全く。畿内と尾張周辺はいろいろあるのに。ここはここで、いつも通りの商売繁盛」
『ふふ。旦那様。この私が一緒というのにまた仕事の話。妬けてしまいます』
「おふっ。全く。婚姻した途端にこれかよ」
『だって、今まで溜まっていた鬱憤をようやく晴らせるんですもの』
「そうか。じゃ、これで、お、し、ま、い、だ」
秀高必殺、擽りの刑発動。
『きゃははははは。くすぐったい。くすぐったいです』
「ふ〜。これで良しと。早く着替えて今日の仕事に遅れるなよ」
『わ、わかっていますわ』
秀高と小梅は婚姻以降、ボディタッチが激しくなっていた模様である。これまで以上にイチャイチャしている。
寝室から執務室に入った2人は各々の仕事に取り掛かりながら会話をする。
小梅は婚姻後は正式に文部省教育部門の長に任命し確りと仕事をさせている。
「さてと、日ノ本情勢複雑怪奇なりだな」
『戦国の世ですもの何が起きるかなんて未知数です。しかも本来は居ない私達も居るのですから』
「それは解ってるよ。まっ、俺達の堺を攻めて火傷しないやつなんかいないけどな」
秀高と小梅のいる堺城は未だ築城の真っ最中。現在は全国から石を集め始め、石垣を作事している。一応だが、この堺城の石垣は将来的には30m程の高さになる予定だ。
総石垣造りの巨城が完成するときが楽しみである。そして肝心の天守閣も鋭意検討中である。
「さてさて、燻った火種という火薬がいつ爆発するか楽しみだね〜」
『まさかと思いますけど仕組んだのですか?』
「そんな訳あるかい。と、言っても煽ったのは確かだな。ここまでになるとは俺も予想外だけどね」
『貴方様はどれだけ戦争がしたいのですか?』
「戦争は嫌だがこの世は弱肉強食の戦国時代だ。生半可な覚悟では生きていないよ」
『でも、わざわざ戦争を引き起こす様な事をしなくても』
『奥方様。殿は我々に噂を流す程度でいいと指示をしておりました』
『丹波。戻ったのですね。相変わらず突然出現するのは心臓に悪いですよ』
『申し訳ありません。情報省の情報は全て殿に報告するのが決まりですので』
『それでもです。私と殿が一緒の時は駄目です。いいですね』
『、、、、殿。宜しいですか』
「うん。報告を聞こうか」
『ちょっと〜』
「うるさい。丹波宜しく」
『では、近く足利と三好が接近する模様です。付きまして仲介を我々に頼んでくる可能性があります』
「なるほどな、三好と足利が手を組むか。さしずめ西を三好に東は足利で対処って感じかな」
『恐らくは。また、尾張では道三の忘れ形見である帰蝶姫と信長殿が婚姻が正式に執り行われる模様です』
「大義名分の結婚か。信長にしては嫌な婚姻だろうな」
『それがどうやらそうでもないようで。信長様と帰蝶姫はどうやら相思相愛のご様子』
「なら祝儀をたんまりと贈らんといかんな。丹波。外交省と大蔵省にこの指令書を渡してくれ。またお前たちは信長と帰蝶の身柄を守れ。いいな」
『主の仰せのままに』
報告が終わり、丹波が執務室から去ると秀高は立ち上がり背伸びをする。
「さて。煽りに煽って近江周辺の火薬がいつ爆発するか楽しみだな」
秀高の言葉は小梅には届かなかったがその表情を見た小梅は後にこう書き残す。
『あの時から、旦那様の魔王街道が始まった』
と。
そして2週間ほどの時間が経ったある日。
『殿。三好長慶様、足利義輝様より仲介役の御依頼書が届きました』
日本の王と日本の副王により当主会談が始まるのであった。
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