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秀吉の兄に転生したけど、そんなの居ないよな   作者: 久之浜真輝(ひさのはままさてる)
21/27

一時の平和は一瞬で崩れ行く

皆様。おはようございます。またはこんにちわ。はたまたこんばんわ。作者でございます。


体調の方は如何でしょうか。


引き続きコロナに負けずに頑張りましょう。



1547年。元旦


毎年恒例となった洋上での初日の出の御来光を浴びてから伊勢神宮へと向かう秀高達。伊勢神宮に参拝した秀高達はいつもなら尾張に向かうのだが、今年は尾張には向かわずに堺に戻る。それはなかをはじめ、木下家の皆で伊勢神宮にて初詣をしたからである。その為、尾張に向かう行程が短縮になり秀高達は堺に戻るのが速くなったのである。



正月休みを終え仕事始めの日となった堺はとてつもなく賑やかになった。それはそれは賑やかすぎて夜な夜な苦情が出るほどまでだったとか。


そして秀高は新たに出来た堺城本丸表御殿の大広間にて家臣達、全国の使者達と挨拶を行っていた。


朝廷をはじめとして、公家、将軍家、大名家、全国の御用商人と次から次へと挨拶を交わす。


「ふぅ。今年も挨拶者が多いな」


『仕方ありますまい。日の本の商人を支配し、天下に近い御仁と言われていますからな』


三役である津田宗達が言うと


『いかにも。しかも殿は摂関家の鷹司の縁者。更に名声も増えるでしょうな』


『日の本だけではなく外国にも支配圏を伸ばしている殿は既に大名とは別の支配者でありましょう』


今井宗久、千宗易等も軽く皮肉を言い放つ。


「全く。誉めてるのか貶しているのかわからんな」


『『『殿に言われたくはありませぬ』』』


「そ、そんなに怒らなくても」



『御使者様、到着いたしました』


『案内せよ』


『北条氏康様の御使者にございます』


「北条殿か(たしか幻庵殿に日吉を預けていたな。日吉は元気だろうか。昨年は河越夜戦も起きたと報告があったし、無事なら良いのだが)」


大広間にて秀高達が待っていると北条家の使者が入ってきた。


「(二人?一人は幻庵殿だがもう一人は隠れてて見えんな)」



『新年おめでとうございます。北条家を代表しまして北条幻庵が御挨拶致します』


「幻庵殿。災息で何よりです。日吉は元気にやっておりましょうか?」


『はい。昨年の河越での戦にて見事初陣を果たしました』


「おぉぉ。そうでしたか。日吉はどうでしたか?しっかり動けたでしょうか?」



『日吉殿は大将格の将を討ち取りまして武功1番で御座います』


「何と。日吉がそこまで立派になっているとは北条殿には感謝しかありませんな。それと、本日は幻庵殿の他に誰か居るようですが」


『これはこれはご挨拶が遅れてしまいましたな。これ、挨拶を』


『はっ』


幻庵の後ろから立派な体格をした若者が現れる。


「お前は、もしや」


少し顔を見た秀高は立ち上がってしまった。


『お久しぶりで御座います兄上。某、木下日吉改め、木下藤吉郎秀吉で御座います。堺中将様に御拝謁出来たこと誠に感謝致します』


「秀吉、、、、幻庵殿。元服させたのですか」


『はい。早いですが、先の戦で武功1番となってしまったので仕方なく』


「まぁ。しょうがないですな。秀吉。災息で何より」


『兄上。兄上に言われた通り、関東の猛者達は凄く強いです。いい勉強になります』


「そうか。だが、武だけではいかんのは解っているな」


『はい。北条家の皆様方に色々と教えて頂いております』


「うむ。、、、幻庵殿。今後も秀吉の事、宜しくお願い致します」


『お任せくだされ。残りの7年で立派な武士に仕上げますゆへ。では、ご挨拶はこの辺で』


「はい。ありがとうございました。北条殿に宜しくお伝えください」


秀高は幻庵、秀吉の挨拶を終えると一息ついた。後日、秀高と秀吉で堺の町に繰り出しドンチャン騒ぎをして堺を更に盛り上げたのは別の話。



「日吉が秀吉か。あの日吉が立派に育ってきているな。これなら7年後には確りと織田家で活躍できるだろうな」


こうして仕事始めの挨拶が終わりその日は何事もなく事なきを得る予定だったが。夜の21時頃に忍が報告をしに秀高の寝所へと来た。



「何かあったか」


『火急の報せでございます。伊賀と近江の国境にて小さいながら紛争が発生いたしました』


「紛争の理由は」


『六角領と我々の差により耐えきれなくなったのかと』


「だろうな。ただでさえ我々の領地は栄えている。堺から街道一本で来れるように街道整備等を行い物の流れを良くしているからな。良くなれば良くなるほどその分、金が回るということだ他国からしたら喉から手が出るほど欲しいだろうな」


堺を始めとする物流網を簡単に説明しよう。


①堺→和泉→紀伊→伊勢→尾張(織田)→東海道

②堺→和泉→河内→大和→伊勢→尾張→東海道

③堺→河内→大和→伊賀→伊勢→尾張→東海道


と山城、近江等は物流網には入っていない。それにより堺の商品を取引するためにわざわざ足を運ばなければいけないのである。


「六角の動きは?」


『小競り合いにて我々が六角へ大義名分を与えるような事をするのを待ち望んでいるようです』



「そうか。しかたないな。誰か居るか」


『はっ、ここに』


「至急、兵部省へ赴き、国境警備を増やす事と略奪対策を行うように指示を出してくれ。これが、指令書だ」


『確かに、では』


「情報省にも同じ事を伝えよ。また各国の調査も人員を増やし事に当たるように」


『承知』



翌日



『殿。朝でございます』


「うん。今起きるんん?」


秀高の布団の中に何と小梅が寝息をたてて眠っていた。


「また、忍び込んだか。全く」


秀高は起こさないように布団を抜けて、着替えを済ませ部屋を出る。


「小梅がまた、ここで寝ておる。女中に伝えておいてくれ」


『はい。解りました』


秀高は小姓に伝えると小姓は忍び足で女中へ報告しに向かった。

女中が小梅を起こしている頃には秀高は朝食を食べる為、いつも通り台所横の食事部屋に入った。


秀高が入ると次々と朝膳が運ばれて来る。医食同源の考えのもと、バランスの良い朝膳である。そして運び終わる頃には小梅が元気良く入ってくる。



『おはようございます。秀高様』


「おはよう小梅。今日も元気で何よりだ。では、いただこうか」


『はい。いただきます』


2人の朝はこのようにして始まる。小梅と話ながら今後の予定や行動等も説明し朝食を終える。


秀高は朝食後に執務室に入り、各省庁からの報告書や決議書等に目を通していたが。


『殿。宜しいですか?』


「入れ」


『殿。昨日の国境でのいざこざの件で』


「何かあったか?」


『それが、どうやら一悶着あった模様です』


「そうか。三役と各省の長達を招集してくれ」


『承知しました』


大広間に三役と大蔵省を始めとする堺の重役達が集まった。



「皆、情報省より粗方連絡は受けていると思う。皆の意見を言って欲しい」


『大蔵省からはいつ戦になったとしても10年は余裕で続けられる事は確かですが。まだ小競り合い程度で済んでいる今は武ではなく文で当たるのが宜しいかと』


『兵部省は何時でも準備は出来ております。殿下からの指示を待ちます』


「やはりここは外交で抗議するか」


『それが1番無難かと。まだ、宣戦布告したわけでもなく、大義名分もありませんからな』


「解った。では六角に使者を送れ、外交省頼むぞ」


『承知いたしました』


この後、外交省担当と六角の間で話し合いが行われた。今回の小競り合いの原因が六角側にあったことから六角氏側は改めて領内の監督不行きの謝罪と、決して戦を仕掛けたいわけではないという事を改めて秀高に伝えて欲しいという事で決着となった。



この日を皮切りとして鷹司領内との国境にていざこざが度々起きると共に、他国からの移民者らとのトラブルが起き始めることとなる。


「(そろそろ経済戦争に痺れを切らしてきているな我々と織田、斎藤の経済力は大きくなってきている。周辺国はいい気がしない筈だな。何か企んでくるやもしれん)忍びは居るか」


『ここに』


「領内の国衆や城主。斎藤、織田に連絡せよ。周辺国や間者に注意されたし。だ」


『承知』


「何も起こらなければ良いのだが(ここまで時代が変わるともう歴史の知識は役に立たない所まで来てるな。この状態がいつまで続くか)」



この時、秀高達はこの後に起こる出来事を知るよしはなかった。




7ヶ月後


この7ヶ月の間、堺周辺と同盟国では戦は起こらず一際、平和な時を過ごしていた。


百姓は田畑を耕し

商人は金を回し

兵は鍛練に勤しむ


多少の小競り合いはあったが戦が半年も起こらなかったため、秀高達は内政に重点を置いて政務をこなしていた。



「領内からの目安箱は格段に浸透しているな。回収された意見書もこんなに増えてきた。そろそろ。各村から10通迄とかに制限をしないと俺が封殺されそうだ」



この7ヶ月の間、内政に重きを置いた事により領土の経済力は一段に増加し他国との差が明らかに開き始めた。その影響か流民や国許から逃げてきた者達等が入ってくるという事案が発生し多少の混乱があったものの争いには発展せずに時は過ぎていった。



しかし平和な時というのは一瞬にて消えてしまうのである。



『殿。火急の報せです。足利将軍様。三好様と一戦構える模様です』



『三河の松平様の嫡男、竹千代様が家臣達の寝返りにより誘拐。元家臣達は織田様のもとへ向かっている模様』



「義輝。いや、大御所の仕業だな。平和を維持出来んのか。後、松平。恐らく今川の策略だろうな。一気に尾張を平らげるつよりやもしれん」


『殿』


「国境警備を厳とせよ。また長達を緊急招集してくれ」


『はっ』


「また、天下が荒れるな。織田殿。道を間違えてはいけませぬぞ」



ーーーーーーーーーー




堺にて緊急会議が開かれているその頃、尾張では


『殿。これは今川の策略でありましょう。恐らく広忠は義元を頼るはず。そうなれば三河は今川の支配下となりましょう』


『それはそうだが。信長よ何かあるか?』


『父上。はっきり申しますとここは竹千代と元松平家臣が尾張に来る前に三河に還しましょう。さすれば無駄な争いをせずに済みます』


『そうか。他に意見のある者は。、、、、よし。では、即刻竹千代殿と松平家臣を国に入れぬようにせよ。そして三河に還すのだ』


『『はっ』』



織田のこの姿勢により三河の松平広忠は改めて感謝を示し両国の関係改善に取り組む事となる。しかしこの影響で今川派、織田派に分裂してしまう事とはまだこの時は誰も知らない。


今回の一件で苦渋を飲んだもう一人の男。今川義元


東海一の弓取りと呼ばれ、史実でも天下に近い男とも呼ばれていた。文武に長け、作法や所作も一流。公家達も駿河に下向する程の人望もある。正史では次の天下人と言われた逸材であるのは確かだ。


今回の竹千代誘拐未遂を画策したのも他でもない今川義元であった。織田に渡った竹千代を取り戻すために広忠は必ず今川を頼る。その際、松平を従属させ織田を倒し上洛する。ここまでのシナリオを師である太原雪斎と共に描きその行程の半分が完遂された。しかし残りの半分で行程が崩れた。織田が竹千代達の入国を拒否し松平に引き渡したのである。


広忠は織田によって竹千代を助けられた事により織田との交易を回復させ、織田、松平の関係は修好していくのだが、作戦が失敗した今川はこの計画に費やした人、物、金等を大損するのであった。


『おのれ、織田め。竹千代を獲れば三河が手に入ると知っておろうに』


『恐らく昨今の同盟が強力だったのでしょうな』


『マムシとの同盟がか』


『そこに堺も関わっております』


『堺中将か』


『はい。かの御仁を侮りなさるな』


『くそっ、仕方無いな。ひとまず三河攻略から入ろう』


『承知』


義元と雪斎はこの後、幾度となく戦略会議を繰り返す事となる。



東海の騒動が一先ず解決した頃、畿内にて三好と足利将軍家との戦が発生した。三好家は当主の長慶が指揮を執り、対して将軍家は大御所の義晴が指揮権を掌握し将軍である義輝は副大将として陣を構えていた。


本来ならばこの戦の大将は義輝の予定であったが義晴が難癖を付けて軍権を奪ってしまったのである。その為、足利軍は三好より兵の数は勝っているものの、義晴派と義輝派に分裂していたのである。その為、数的有利の戦が互角より少し不利の状態で開戦してしまう。


多少の不利を何するものぞ、と義晴派は攻勢に出ていた。三好軍の布陣を一つ一つ突破し長慶の本陣まで後3陣抜ければという所まで侵攻したそのときである。


『何事か~』


『き、奇襲です。両翼より三好方が攻めて参りました』


そう。長慶は自らを囮とし義晴を引き付け、残り3陣となった所で両翼より松永久秀隊、十河一存隊に奇襲を受けたのである。


『まずい。後退せよ。包囲される前に脱出する』


『正面より三好勢が向かってきます』



まんまと釣られ三方から包囲されつつあった義晴勢。


『この上は致し方なし。父上様方を救出する。者共我に続け~』


『『『おぉぉぉぉ』』』


戦を側で静観していた義輝は自軍を率いて義晴を救出するために三好勢に突撃する。しかしその突撃も長慶は上手く受け流し被害を最小限に押さえた。対して足利軍は被害が大きく撤退せざるをえなかった。


三好と足利の戦いは足利将軍家の敗北で決着となったのである。



この戦を皮切りに再び畿内やその周辺で戦が次々と発生するのであった。











誤字、脱字がありましたらご報告のほど宜しくお願い致します。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 正史では次の天下人と言われた逸材であるのは確かだ。 と有りますが現在の天下人は三好長慶と言う認識で宜しいですか? 長慶は義元より若く死没も後年だと思うんですが
[一言] またキナ臭い雰囲気になってきたか・・・。 乱世の時代なので仕方がないが、秀高はどう立ち回る事やら・・・。
[一言] 台詞の「催促」ですが文章的には「息災」の間違いではないでしょうか?
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