災害援助と筒井家
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7月の大雨により畿内では様々な災害が発生した。堺は被害を免れたが、それを見て見ぬふりをすることが出来なかった秀高は災害救難部隊を編成し、畿内の国内にて炊き出しや救助活動等を行っていた。そして、食料、衣類等も全国から買い集め堺に残った輸送部隊が畿内各地に運び続けている。
「各地の状況は」
『山城は落ち着いた模様です。あと、摂津は三好様と本願寺の方々の協力もあり大事には至っておりません。しかし大和と和泉は』
「うむ、筒井殿と畠山殿の所か?」
『はっ。大和はなんとかなっておりますが。和泉の地は被害が増える一方で民の救済は手を付けておりませぬ』
「救難部隊の方は」
『はい。領内での活動は殿からの書状により活動許可はされておりますが』
「何か問題があるのか?」
『物資の支給や、救難活動等を我々堺が行っている事に国衆と民達から不満の声が出ております』
「うむ。時間が経てば支援の拒否を通達される可能性があると言うことだな」
『はい』
「わかった。引き続き頼む」
『承知』シュッン
「(取りあえず。活動は継続しよう。それと、義父上殿に復興支援金を送ろう。後は実際に見に行くか)誰か」
『はい。ここにおります』
「京の鷹司家に三万貫とこの手紙も添えて送ってくれ。あと、大和と和泉を視察する。準備を頼む」
『承知しました』
秀高は供回りを連れて先ずは大和へ向かう。
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大和国堺救難部隊本陣
『行方不明者は何人だ』
『現在確認しておりますが300人は下らないかと』
『急げ、総統の言っていた生存可能時間まであと1日もないぞ』
『報告。第4班生存者8名、しかし死者18名です』
『報告します。第5班生存者無し。死者30名です』
『くっ、1から3班からはまだか』
『そろそろ報告時間ですので、間も無く来るかと』
『失礼します。堺より火急の知らせです』
『何事か』
『こちらに殿が向かっている模様です』
『なんだと!』
『どうやら、救難活動の現地視察の様です』
『わかった。引き続き報告を頼む』
『はい』
『報告。1班から3班、生存者103名、死者64名です』
『時間がないぞ、手の空いている者は各班に増援するように』
『はっ』
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救難部隊が士気を上げて捜索をしている頃、大和領主の筒井城では
『殿、このままでは堺に民衆が流れてしまいますぞ』
『何を言う。我々は今、南部の方に部隊を出しているのだ。そこから北へは到底無理だ』
『それは詭弁だ。大和を南北に分断されると申しておるのだ。堺に侵略されていると同じだぞ』
『静まらんか』
上段から声が響く。その声は筒井家当主の筒井順昭である。
『堺殿とのやり取りで大和北部は堺衆が大和中央より南部は我々筒井が受け持つ事と決めておる。それは先んじてお主達に伝えたであろう』
『殿、そうは言いますが堺は二千人を領内に入れておるのですぞ。物資も豊富に持ち込んでいます。これでは筒井家の面目が』
『この豪雨災害で他家の力を借りている時点で我々は未熟者なのだ。それを理解し今後の糧としなければならんのだ。解ったか』
『『はっ』』
『ご報告致します』
『なんだ』
『堺少将様より書状が参りました』
『なんだと。早うこれへ』
小姓より順昭へ秀高からの書状が渡される。順昭は直ぐに書状を読み始める。
『なっ、なんと。、、、皆、堺少将様が大和に向かってきているらしい』
『それは』
『やはり侵略では』
『いや、少将様は大和の被害状況を確認した後に和泉に向かうらしい。しかも儂との会談も申し入れてきておる。また、宴会は不要との事だ』
『殿。殿は堺少将様とお話なさるので?』
『勿論だ。この度の救援の感謝も伝えなければならない。また、今後の協力体制についても話さねばならん』
『殿、それはどういう』
『儂はこの際、堺少将様に従属しようと思っている』
『『!!!!』』
『殿、まことに』
『大和をほぼ掌握したとはいえ、今回の災害で儂らは何も出来なかった。少将様から救援の話が来なければ更に民達が離れていく所だったのだ。しかも、堺少将様はこの天災を見て見ぬことはせずに動いている。聞いたところによると畿内全域に部隊を出しているとか。お主達にはその様な事は到底思い付くまい。儂はわかったのだ。天下を治める者とはこういう者なのではないかとな』
順昭の言葉に家臣達は黙って下を向くしかなかった。この後に正式に筒井家は秀高に従属をする決議を決定し、秀高が訪れるのを待つのみとなった。
そして肝心の秀高は大和との国境まで辿り着いていたのであった。
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