九話 ヒビ
大切な話しだということだったので、姉妹はそれぞれ別の個室へ移った。
残された椿と幸せの頂点から、愛しい小町を奪われた夜見は冷静ではいられなかった。
如月って、あの如月やろ・・・弄んできた女を笑顔で振るという。学生時代の時、毎回小町にちょっかいを出してるのを見て、居ても立っても居られない夜見は、何度か彼の私物を盗んではごみ箱へ捨てるという地味な嫌がらせをしていた。
「気になるわよねぇ~どっち気になる?私は、小巻の方」
「アタシの小町や!!じゃなくて、私は小町が気になる」
思わず、本音が溢れてしまい一瞬焦ったが、椿はかなり泥酔している為聞いていない。
いつも、思っとった・・・なんで椿ってこないに阿呆なんやろうって・・・でも思ったわ、阿呆で良かった。
とりあえず、二人は各部屋へのマークを始めた。まずは、小町だ。
「なんです?勤務時間外に・・・」
如月は、テーブルに頬杖をつきながらいつもの笑顔で呟く。
「紅月と別れたんだって?」
「ぶぅうぅぅぅぅうっっっぅうっぅう!!・・・ゴッホゴホゴホ・・・・なんでアナタがそれを!!!!?」
「あははは。本当に貴女は分かりやすいですね。見たんでしょ?金魚さん」
「名前は聞いたことあるけど、昨日いたのが金魚さんだったのは初めて知ったわ。で?そんなくだらない事を聞きにわざわざ来たの?暇なのかしら」
「相変わらず、気が強いですね」
如月は、徐々に小町との距離を縮めていき彼女の肩を抱く。
「別れていれば話は早いです」
「は?」
「俺と付き合ってみませんか?」
「・・・え?」
もう一方はというと。
「あのぉ・・・ひぃくん?私、用がないならお姉ちゃんの所に帰っても良いかな?」
机の前で、正座をしたまま動かない朝比奈に酔いが覚める小巻。
「あっ!!それは・・・その・・・」
「え?」
言えよっ!!さっき、散々如月の野郎を相手に屈辱に耐えながら告白の練習しただろうオレ!!!
何度も何度も、いろんなシュチュエーションでも大丈夫なように如月が教えてくれた。
何度も何度も笑われて、殺してやろうかと思ったが。
「ひぃくん?」
「お、オレっな!!・・・ずっと小巻のことそのす・・・」
真っ赤な顔をして、前を向くとそこには偽笑顔を貼り付けた悪魔のような使者ではなくて、本物の天使がそこにはいた。
「す、す、す・・・」
「す?」
「すごーくいいやつだと思ってるんだぜ」
「あ、ありがとう?」
ダメだと諦めた朝比奈の口は、勝手に動く。
「あの口うるさい小町隊長にも、ちゃんと愛想よくしてて尊敬するな。オレなら、あんな過保護な姉居たら気が狂うっ」
バシャっ
自分がお酒を書けられていると気づくのにそう時間は、掛からなかった。
「先に謝っておきます。勤務時間外だとしても、隊長格の方にお酒を掛けるなんてこととんでもないことだって理解してます。でも、私にも、誇りがあるんです。それが、姉です。私の誇りを傷つけるような発言は、今後一切やめて下さい。お姉ちゃんは、私の家族なんです・・・」
ポロポロと、涙が溢れだす小巻。
「こ、小巻っ?!!」
「ひぃくんがそんな人だとは思ってもいなかった・・・最低、大っ嫌い!!!」
そのまま、彼女は席を立ち秋白から出ていってしまった。
扉を開く際に、通りすがった椿。
話は、おおよそ立ち聞きしていたので分かっていた。
「アンタって、本当にバカね。小巻が小町のことどんだけ大切に思ってるのか知ってるんじゃないの?何十年一緒にいんのよ。小巻のこと好き好き思ってて、小巻のことなんも知らないのね・・・ガキかよ」
椿の言葉を聞いて心に何かが刺さった朝比奈。
スッ・・・と立ち上がる。
「追いかけんの?」
「いんや、帰るよ」
「どこまで、ガキなのかね」
そのまま、朝比奈は自分の隊舎へと帰った。