四話 波乱の予感
「合コン?」
「そう!!合コンしましょうよ」
お昼休み、隊長室にやってきたのは小町の部下である椿だ。彼女は、合コンなどがとても好きで毎回なにかとあれば小町を誘う。
「行きません」
「もぉ〜!!最近、本当に付き合い悪いわよぉ!!たまには、付き合いなさいな」
「お昼の隊長室で貴女は、なにをほざいているの?」
無糖生豆乳の小豆味を飲み、片手で仕事の書類を読みながら呟く小町。
「だって、隊長室って本当の大事な話しの時しか入れてくれないじゃない」
「隊長室ですもの」
「ね?!じゃあ、そう言うことで!!今夜、行きましょう!!」
「どういうことで?・・・行きません」
椿のええええ!!という声と共に入ってきたのは、小巻だ。
「椿さん、声が隊長室の外まで聞こえてきましたよ」
クスクス微笑みながら、小巻は追加の書類を小町に渡す。
「まぁた・・・?この書類の重さは・・・・二番隊」
「大正解です」
「賞品は?」
「はい、書類」
小町の広げた腕に、また大量な書類を渡す。やっぱりか・・・。と言わんばかりに、ガクンと頭を下げる。
「うわぁ・・・朝比奈隊長?」
「そうですね」
隊長室のソファーを我が物顔で伸びながら、頭を抱える小町に椿が昼寝をかます。睡眠時間が、最近仕事が忙しくて四時間睡眠の小町の癇に触る。
思わず、飲み終わった豆乳の箱を投げ付けるが、その時隊長室の扉が開く。
そこに現れたのは、一番隊隊長の如月と二番隊隊長の朝比奈だった。宙を舞った豆乳の箱は、如月の顔に見事に命中。
隊長室の空気が一気に凍る。
「あっ・・・はっはっはっ!!!顔面に当たってやんの!!だっっせ!!!瞬風の如月様が聞いて呆れるぜ!!!」
あーっ!!おかしい!!と、お腹を抱えながら笑う朝比奈は、ある意味勇者かもしれない。
隊長室には、朝比奈の笑い声以外聞こえない。すると、如月は笑顔で片肘で朝比奈の鳩尾に打撃を加える。一瞬で周りが静かになった。
「休憩時間中にすみません。また、このバカ・・・もとい朝比奈が迷惑を掛けたということだったので、謝らせに来ました」
如月の言葉に一瞬、お母さん感がでる。
「今、オレのことバカって言ったな・・・」
「まだ話せるのか、案外しぶといですね。ほら、そんなことより早く書類が遅れた理由を完結に述べなさい」
「えっと・・・風邪ひいて・・・」
「「頭の?」」
思わず、如月と小町の言葉が重なった。
「お前ら・・・。てか、なんで俺たち戦闘隊が書類雑務をやらないといけないんんだよ!!そもそもそれが間違ってっ!!!」
「次、その口開いたら泣かす」
前髪で目を隠してやってきた小巻と同い年ぐらいの男性は、持っていた書類の束を朝比奈の後頭部に打つける。
「あ、ホタルくん」
「うす、久しぶりじゃね?小巻」
隊長室に入って来たと思えば、小巻に近づくホタルと呼ばれた男性。
「うん!最近、死亡管理部行ってないからね!」
「小巻に会えないとか、オレ寂しいじゃん」
ホタルも小巻のファンの一人で、良く三番隊に昔は来ていたが、最近パッタリと来ていなかった。その意味を小巻は知らなかった。
「最近、仕事忙しくて・・・ホタルくんも最近来れなかったってことは、お仕事と忙しいかったの?」
ホタルは、目付きが鋭くこちらを睨んでいる小町の方を向き何もなかった様に再び、小巻の方に視線を戻す。
「少しな」
「そっか・・・?」
今の間は何だったのだろう?と、内心思いながら首を傾げた。
「おい、てめぇ・・・オレのこと誰だと思ってやがる」
「二番隊隊長、朝比奈。・・・だから?」
「死亡管理係が戦闘隊に向かってこの仕打ちいいと思ってのんか?」
「そうですよね・・・オレ、なんてことを・・・ごめんなさい・・もうしませんから」
深々と頭を下げるホタルに、少し戸惑う朝比奈。
「そこまで分かってるなら・・・」
「なんて言えばご満足か?」
顔を上げると一緒に人差し指を朝比奈に向ける。
「こンの!!!クソガキっ!!」
「なぁにしてるんですかぁ?ホタルさん、早くしてくださいよぉ・・・だからここに来るのは最後の方がイイって言ったんですよ」
二人の険悪な雰囲気を壊してくれたのは、ホタルの相方で後輩の「凛」だ。まるで、女性の様な美しい顔立ちをしているが、正真正銘の男だ。
「うるせーよ、後輩」
「へいへい。じゃあ、先に次の人・・・げっ、総隊長さんのところですね」
『総隊長』と言う単語に、思わず小町は反応する。
「私がいきましょうか?」
「お姉ちゃん?」
「ち、丁度総隊長に用事があって・・・」
「あ、じゃあお願いしますぅ」
「おい、後輩!!三番隊隊長だぞ!仕事頼むのは、やめろ」
「二番隊隊長には、書類の束をぶつけていいと思ってるのか!!?」
小町と自分の対応の違さに、腹を立てる朝比奈が怒声を上げる。
「うるせーよ。昔から、良く言うよな・・・弱い犬ほど良く叫ぶ」
「先輩、『叫ぶ』じゃなくて『吠える』です」
「あん?吠えようが叫ぼうが、声出すことには変わらねえだろ!」
「やっぱり、あんたバカだ」
凛は、ホタルの顔を見ないで小町に紅月に渡す書類を託した。そのまま、小町は隊長室を後にする。
「あ、小町・・・言っておけば良かったですね」
突風の如く居なくなった小町に声を掛けようとしたが、時すでに遅し。
「どうしたんですか?」
椿が首を傾げた。
「あ、いや・・・総隊長今・・・部屋に愛人連れて行ってるから辞めておいた方が良いですよって・・・」
「え・・・」
如月の言葉に苦い顔をする小巻であった。