二話 素直
「以上や、今月も全隊気張るように!!」
約一時間で、会議は終わった。
それと同時に各々の隊長が、立ち上がり帰る。
「小町隊長は、ちょっと残り」
紅月の言葉にあからさまに嫌そうな表情を浮かべて睨みつける。
「そない、嫌そうな顔せんでもええやろ」
「これが、私の真顔です。小巻、先に戻ってて」
「はい!」
「ごめんな、小巻ちゃん。あ、冬夜も、先に帰ってええで。なんなら、小巻ちゃんを送ってやり」
「かしこまりました。」
「え!私なら大丈夫ですよ!」
「隊長命令だ。気にするな」
そのまま、小巻は今回まとめた資料を持ち会議室を出て行った。会議室には、小町と紅月の二人きり。
「なんですか?」
「恋人にそれはないやろ?」
その言葉にいち早く反応した小町は、急いで空いていた会議室の扉を閉じた。
そして、真っ赤な顔で口をとんがらせて先程までの冷静沈着な小町は、何処かへ消えて行った。
「なぁんや?俺は、別に隠してるつもりないで?」
「ダメ!!!……あ、ごっほん。そんな総隊長とお付き合いしてるなんて話しが回ったら……一番驚くのは小巻です。それに、隊の乱れにもなるし……。」
「かったいなぁ〜小町は。そないなの俺が、護ってやるっちゅうに」
「私は、護られる様な弱い使者じゃないわ。話しは、それだけ?なら、失礼しますよ。総、隊、長」
会議室の扉を開け様と、手を伸ばした手を掴みそのまま後ろから抱きしめる暁。
「お前を護れるのは、俺だけやろ?」
「だ、だから!私は、そんな弱い使者じゃ!」
「使者の前に……小町は、俺の女や」
小町は、この紅月の黄金の瞳に弱い。真っ直ぐ彼女を見つめ一瞬のブレも何も無いこの瞳に。
「愛してるで」
「……ずるい、人です。暁さんは。」
握っていた扉のノブを手放し、紅月の胸に飛び込む。
「そんな俺が好きやろ?」
この人は、ずるい。そんなこと言われてしまったら、なんにも言えなくなってしまうではないか。
「愛してるで」
彼女に腰を優しく抱くこの手が、彼女を見つめるこの瞳が冷静沈着な小町を狂わせる。
二人の唇が重なった時、彼女の体は熱くなる。
「続きはまた今度」
「もう、本当に意地悪なんですから」
プイッ。と、そっぽを向く小町の顔をこちらを向けと言わんばかりに彼の手がそれを拒ませるのだ。
「そんな俺が好きなくせに」
これが、彼の口癖だ。
しかし、不思議と嫌ではない。
コレが、素直になるというこのなのだろうか。
愛おしい……。
たまには、素直になろうかと思った。




