10話 隠蔽
最愛の姉の悪口を言われた小巻は、暗闇の中走った。息が上がって、辛くなり足を止め後ろを振り返る。
朝比奈が追いかけてくれているとミジンコ一匹分でも思ってしまっていた小巻は、自分を責めた。
「ひぃくんのバカ・・・」
確かに、小町は口うるさいし隊の間では冷たい性格から『つらら』と悪口をいう人もいる。
なんで?誰も、本当のお姉ちゃんのこと知らないくせに悪口ばかり言うの?お姉ちゃんは、本当は優しくて思いやりがあって・・・誰よりも自分の隊のことを愛してる。本当の家族のように。
でも、隊長各のみなさんはきっと分かってくれていると思っていた。一番、分かっていて欲しかった・・・朝比奈には特に分かっていて欲しかった。
好きだったから。ちゃんと、理解してくれていると思っていたから、だからあの言葉は本当に悲しかった。
誰も追ってこない寂しい路地に、まるで暗闇の中に一人ポツンと取り残されているように感じた。
涙が出てきた。
すると、前から聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「なにしてんの?小巻」
前を向くと、そこに立っていたのは。
「ホタルくん・・・」
丁度、二番隊に届ける書類が合ったからかこの路地を通っていたホタルと偶然にも、出会う。
「泣いてんの?」
「わからなくなって・・・」
「なにが?」
「お姉ちゃんが一体、私に何を隠しているのか・・・。本当に私たちは家族なのか・・・分からないの・・・」
ヒックヒックと、涙を流している小巻は続けてこう呟く。
「私・・・お姉ちゃんが何を考えているのか、何もかもわからないの・・・でも、これだけは言える・・・私のお姉ちゃんはただ一人小町だもん。」
涙が止まらない小巻に、ホタルは口を開く。
「小巻さ・・・現実聴く覚悟ある?」
「え?ホタルくんは、知ってるの?!」
「・・・ああ。でも、これだけは言える。お前の姉さんはかっこいいよ」
「どういう意味?」
「いずれ・・・分かる時がくる。ほら、お迎えきたぞ」
「え?」
後ろを振り返るとそこには、小町が立っていた。
「お姉ちゃん・・・」
「椿から、ある程度の話は聞いたわ。さぁ、帰りましょう」
両手を広げる姉の大きな胸に飛び込む。
「ホタル・・・アンタ・・・」
「お生憎様。なんにも余計なことは言ってません」
んじゃあ・・・また明日。と、去るホタル。
「お姉ちゃん・・・お願い、もう本当のことを教えて?」
「なにを?」
「私って、本当にお姉ちゃんと姉妹なの?」
「そうよ」
「じゃあ、なんで・・・私には前世の記憶がないのにお姉ちゃんにはあるの?」
小巻の質問に思わず、黙ってしまう小町。
「それは・・・」
「なんで話してくれないの?・・・まさか、本当に記憶の隠蔽なの?」
この前の朝礼の時に、冬夜に言われたあの言葉が思い出される。
「え?」
「お姉ちゃんは、私を騙してるの?」
「ちがっ・・・!!・・・・でも、確かにそう思われていても仕方のないことね」
「ここまで、言われてもなんに話してくれないんだね!?もう、お姉ちゃんのこと信じられないよ・・・ううん、誰も信じられないよ」
「でも、小巻・・・私はっ・・・」
最後まで、話そうとした途中で小町は吐血をして片足を地面につく。
「お姉ちゃん・・・?!!」




