一話 使者
嗚呼、金木犀の香りがする。
山に囲まれた丘に彼女、小町はそこに座っていた。此処は、彼女の大好きな場所だ。
ここから、見る景色はとても綺麗で民家は勿論彼女が働いている所も一望できる。
「お姉ちゃん、そろそろ仕事だよ」
気配をわざと消して小町に近づいて来たのは、小町の妹の小巻だ。
「小巻……気配の消し方下手くそ」
「そうかな?上手くできたと思ったけど……」
小町は、スっと立ち上がり小巻とすれ違う。
「お姉ちゃん!隊長羽織と、刀!忘れてるよ!」
丘に置かれた羽織と、紫色の柄をした鈴がついている刀を慌てて拾い上げ、小町に渡す。
「ん……ありがとう。でも、小巻……お姉ちゃんじゃなくて、隊長でしょ」
「今は、勤務時間外だからお姉ちゃんで良いんです~」
「もう、あと少しで勤務時間よ」
「じゃあ、早く隊長会議に行かないと!!」
「はぁ……めんどくさい。小巻、隊長代わって」
「まぁた、そんなこと言って!ほぉら!行きますよ!隊長!」
彼女の重たい腰を押しながら、二人は仕事場へ向かう。
小町、小巻は人間ではない。
この世界では、病気、殺人、虐待、強姦。と、不幸が集まっている。彼女たちは、そんな人たちの神の命令により運命を変える。
『神の使者』なのだ。
人とは、違う者。
神とは、違う者。
人と人間の中間の者たち。
巫女装束を見に纏い、神から授かった刀、神刀を腰にさし。
自分たちの生命力を力に変えて、技を出す神覇を使い。
稀に動物の力を宿す使者もいる。それは、素晴らしい力であり宿した者は、使者の隊の隊長になれる。その力を神力と言う。
しかし、これらの力を使い過ぎると生命力が尽きる。その時に、使者を取り締まっている使者総隊長が『星のかけら』という物を渡す。それを口にすると少しずつ生命力が回復するのだ。
使者隊は、何ヶ所かの部署に別れていて。中でも、戦闘隊は過酷で神刀を授けて貰える部署なのだ。戦闘隊には、なかなか入れる者はおらず優秀の中の優秀がなれる。
小町、小巻は、その中の三番隊隊長、副隊長に任命されている。
姉の小町は、三番隊隊長。
妹の小巻は、三番隊副隊長に任命されていた。
月に一度や、なに下界に事件など起こる時戦闘隊の隊長、副隊長たちの会議が始まる。
会議室は、長方形の長い机に隊長たちが腰を下ろし、後ろに副隊長が立ち話しを聞く。
あと、会議まで十分。
「まだ、数名しかいないのね」
「あ、おはようございます。小町隊長、小巻副隊長」
彼女に話しを掛けてきたのは、小町より少し年上の男性、一番隊隊長 如月だ。
「如月お兄ちゃん!!」
「こら、小巻。如月隊長に失礼ですよ」
小町に言われて、ハッとなり思わず口を押さえる小巻に、クスクス微笑む如月。
「気にしなくて大丈夫なのに。本当に、小町隊長は、厳しいんですから」
「いえ、その様な事は……」
「もう少し、自分の気持ちに素直になりなさいな」
如月の優しい言葉に顔色一つ変えないで、睨みつける小町。
「おねえ……「小巻ぃ!!!」
いきなり、大声で小巻に抱きしめてきたのは、二番隊隊長の背のとても小さい男性、朝比奈。
「び、ビックリしたぁ!ひぃくん……」
「小巻、可愛いぃ!!」
「ひぃくん……くすぐったいから」
ウリウリと、小巻を抱きしめて離さない朝比奈に小巻の呆れ顔。
「小巻副隊長!!うちの隊長に勝手に変な名前付けないでください!!」
小巻の後ろに居たのは、二番隊副隊長の姫路という女性。とても美しい容姿だが口うるさい事で有名だ。
「だいたい!!副隊長の分際で!!隊長にタメ口なのも気に入りません!!」
「ご、ごめんなさい……」
「副隊長だからと言って、うちの副隊長を虐めるのはやめて頂きたいわ」
今にも泣きそうな顔をしている小巻を庇う様に、出てきたのは小町だ。
「あら、妹にはお優しいのですね。小町隊長は。」
「妹の前に、小巻は三番隊副隊長よ。ちゃんとそこを理解して欲しいものです。」
今にも、口喧嘩を始まりそうな所に。
「なにしてんねん、邪魔や邪魔。出口の前でそないな殺気出して、会議始められへんやろうが!!」
小町と、姫路の頭に鉄拳を食らわせたこの男こそ、戦闘隊総隊長 紅月だ。
歳は、如月と朝比奈と小町とは、変わらない。彼が歩く度にリンリンと、腰に差している刀の柄の鈴が鳴る。
「んじゃあ、会議……始めるで」