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超強運  作者: コサキサク


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第9話 弟のトラジロウ

僕はもう少し詳細をレイに聞いた。

「マイナスってどのくらいマイナスなの?」

「−500ぐらいをウロウロって感じかな。-500ってかなり低いよ。パチスロ屋って運のないやつも結構来るところなんだけど、今日の客で一番低いやつで−600ぐらいだから。ウサミちゃんはそれとタメ張れるレベルわけで・・・」

当然、僕はすごく落ち込むことになった。

「こんなことならスロット打つ前に聞くんだった。今日の僕絶対彼女の運奪ってるよね。ああ、あと昨日の自販機とラインのくじでも奪っちゃってるかも・・・」

「まあ、奪ってたけど、ウサミちゃんは店員だから、さほど奪ってないよ。今日奪ったのは50ぐらいだよ」

「-500の子から50も奪っちゃダメでしょ・・・どうしよう。これじゃお店に行くどころか迂闊に話しかけることもできない。もう、忘れた方がいいかなあ。」

「まあまあ、だいたいの人間は日によって誤差あるし、今日たまたま低かった可能性もある。もう少し様子見ても遅くないって。」

「ちなみに、不慮の事故で亡くなるって、ぐらい運が低いとなるの?」

「それは、僕もわかんないんだよね。運が低いやつが通りかかって目の前で事故死したことなんて、さすがにないし。」 

「そっか・・・だよな・・・」


「それよりあの店上の階にいろいろあるんだろ?ちょっと遊んで行こうぜ。」

とレイが言い出した。ウサミちゃんが務めているパチスロ屋の上の階は、ゲームセンターやらカラオケやらボーリング場やらがあるのだ。レイがブリクラ撮ろうというのでとりあえずゲームセンターに向かった。土曜日だからかゲームセンターも結構人がいる。カップルとか家族連れとかいろいろ。

「アタルってこういうのも得意なの?」

UFOキャッチャーやメダルゲーム機を見ながらレイが尋ねた。

「うん、メダルゲームは無限に遊べるよ。UFOキャッチャーも時々いいのが取れるし。」

「へー、いいなあー。僕も無限にあそびたいなあ。」

「いいよ。メダルゲームやろっか。」

お金をメダルに交換し、メダルゲームを物色する。結構大きいゲームセンターなので見たことないゲームが結構ある。


そういえば、ユウトとコースケとソラともよくゲーセンで遊んだなあ。メダルゲームで無限に遊べたけど、結局実力勝負の格ゲーの方が盛り上がったっけ。


「アタルってゲーセンのスロットはやんないの?」

「そうだね。スロットは興味なくてやったことなかったなあ。」

「そっかあ。おい、あの子すごいな。ガキなのに超勝ってんじゃん。」

レイが指差したところを見ると、10歳ぐらいの子が一人でスロットをプレイしすごい量のメダルを獲得していた。だけど僕はメダルよりも、その子の顔を見てびっくりした。

「あの子、ウサミちゃんの弟だよ。トラジロウくん。」

「まじか!?姉弟揃ってスロット好きなのか!ていうかアタル、朗報だぞ。」

「なに?」

「弟、超運強い!」


僕はレイと顔を見合わせた。

「姉弟って運にそんなに差があるの?」

「ああ、案外あるもんだよ。あの弟は3000ちょいあるな。アタルの友達になれるぜ。」

「ということは・・・」 

「弟から攻略しようぜ。」

たしかに、仲の良さそうな姉弟だから、弟と仲良くなれればウサミちゃんの好感度は上がるだろう。


僕は早速トラジロウに声をかけた。トラジロウは僕の顔を見るなり軽く会釈した。

「一人で遊んでるの?」 

僕が尋ねると、トラジロウは頷いた。

「お姉ちゃんの仕事終わるの待ってるの。」

「そっか。」

この子いつもウサミちゃんといるけど、親御さんはどうしてるんだろう?

「なあ、お姉ちゃんの仕事終わるまでお兄ちゃん達と遊ぼうぜ!なんか対戦できるやつしない?」

とレイが言うと、トラジロウはスロットを切り上げてあっさりついてきた。


トラジロウは、相当このゲームセンターで遊んでいるのか、どのゲームも詳しく強い。ルールが複雑そうなゲームも僕とレイにわかりやすく解説してくれた。運も強いが頭もいいのだろう。運要素の強いゲームは僕かトラジロウが勝ってしまうのでレイがむくれてしまった。結局昔僕が友達と遊んでいたみたいに実力主義の格闘ゲームやリズムゲーム対決に落ちついた。しかし、

「なーんでアタルとトラジロウは格ゲーもリズムゲーも強いんだよ!!」 

レイがもっとむくれてしまった。

「いや、運ゲーでいつも勝ってると、だんだん格闘ゲームとかリズムゲームの方が面白く感じちゃって結局強くなっちゃうんだよね。」

トラジロウも共感できるのか頷いている。


「ちえー。あっそうだ。プリクラ撮ろうぜ。僕一応本業タレントだし!写真映りなら負けないから!」

「いいよ!・・・ってレイってタレントなの!?芸能人!?初耳なんだけど!!」 

「え?言ってなかったっけ?まあ芸能人って名乗れるほど売れてないけどな。今もネット番組のレギュラーがちょっとあるだけだし。」

「やっぱりスカウトとか?」

「うん、高校のときスカウトされてなんとなく事務所に入ったから。」

「へえー。本当にスカウトとかあるんだなあ。」

なんだか納得した。レイってすごく美形ってわけでもないけどオーラというか存在感がある。ファッションが派手だからでは片付けられない何かがあった。


というわけでトラジロウも巻き込んで三人でプリクラを撮った。レイは言うだけあって表情を作るのが上手かった。


気がついたら夕方になっていて、ウサミちゃんがトラジロウを迎えにゲームセンターにやってきた。

「アタルくんとレイくん!トラジロウと一緒だったの!?」

「うん。」

「一緒に遊んでくれたんだ。ありがとうね。」

「これから一緒に晩御飯食べない?アタルくんがスロットの儲けでおごってくれるって。」

レイが独断で提案した。

「そんな、トラジロウと遊んでもらった上にご飯まで」

ウサミちゃんは遠慮しかけていたが、

「いいよ。おごるよ。トラジロウ君の持ってたメダルで一日遊んじゃったし。そのお礼。トラジロウ君は何食べたい?」


トラジロウの希望で回転寿司に行くことになった。回転寿司屋に向かう道中でレイが僕にこっそり教えてくれた。

「アタル、喜べ。ウサミちゃん、トラジロウが横にいればだいぶ運上がるみたいだぞ。」

「ほんとに?」

「ああ、ウサミちゃんの運は今−50ぐらいまで回復してる。トラジロウは変わらないけど。あのトラジロウ、近くにいる人間の運気を上げられるみたいだな。姉弟限定かもしれないけど。」

「近くにいる人間の運を上げられる!?そんな人もいるの!?」

「うん。ていうか、運の強いやつってだいたいこのパターンで、アタルが特殊なんだけど・・・」

「いいな・・・僕もそれが良かった・・・」

「ははは、運10兆5億5千万あるやつが運3000を羨ましがるなんて皮肉だなあ。」

「10兆!?僕運そんなにあるの!?怖っ!!」

「そうだよ。アタルは奪いっぱなしで運が減ることなく増える一方だもん。はっきり言ってお前が一番すごいんだぞ。全然自覚ないけど。」

「そうかなあ。」

「とにかく、アタル、ウサミちゃんとトラジロウとセットでなら、一緒に過ごしても問題ねーぞ。恋愛となるとトラジロウと常にセットとはいかないからあれだけど・・・友達ならいけるぞ。」 

「そっか!!友達ならなれるんだ!!良かった!」

とりあえず友達で十分だ。恋愛なんて、ウサミちゃんと付き合えるかどうかもわからないし、今は友達でいい。僕はとりあえず一安心した。


四人で回転寿司を食べた後、ウサミちゃん姉弟と駅でお別れした。レイも今日は家に帰ると言うので一人で帰宅した。


寝る前にウサミちゃんからラインが来た。

「今日はトラジロウと遊んでくれた上、ご飯までごちそうになっちゃって、ありがとう。トラジロウ、あたし以外とはあんまり話さない子で、学校にも友達いないの。だから誰かと遊んでるのところなんて初めて見たの。ほんとうにほんとうにありがとう。」

という内容だった。僕は気になって思いきって尋ねた。

「ウサミちゃん以外って、お父さんとかお母さんは?」

「ああ、うち親両方亡くなってて、今はあたしとトラジロウ二人だけなんだ。」

と返ってきた。


ウサミちゃんは、ウサミちゃんとトラジロウの生活を一人で背負っていたのだ。















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