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超強運  作者: コサキサク


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第8話 ウサミちゃんとの出会い

僕の百均ブームは相変わらず続いていた。大学の帰りに百均に寄り、掃除道具を見ていると、「よーし、今日はスロットで勝ったから好きなものを好きなだけ買うわよ!」

という元気な女の子の声が後ろから聞こえた。スロットで得たお金で百均で爆買いという行動に親近感が湧いた僕は声の主を見た。


その女の子は金髪で濃いメイクに、Tシャツにショーパンというわかりやすいギャルだった。メイクのおかげかもしれないがすごく可愛い顔で、華奢な子だ。つけまつげやシュシュ等メイク道具やアクセサリーを買い漁っている。僕はメイク道具は買わないのでこのコーナーはあまり見たことなかったが、結構いろいろあるようだ。それにしても、実に楽しそうに選んでいる。しばらく見ていると、10歳ぐらいの男の子がその女の子のところに来て、

「お姉ちゃん、これ買っていい?」

「いいわよ!」

というやりとりをしたあと男の子がお菓子を大量にカゴに入れる。その女の子と弟はレジに向かい、いかにもギャルが好きそうなゴテゴテした飾りが付いた財布から5000円出していた。僕もびっくりの爆買いだった。


次の日の朝、僕は大学に向かって歩いている道で財布を拾った。道で財布を拾うというのは僕の人生ではあるあるなんだけど、他の人はどうなんだろう?もちろん、いつも警察に届けるのだけど、持ち主が結局現れず財布に入っているお金全額僕がもらうパターンがほとんどだった。


しかし、今回はちょっと事情が違った。拾った財布は、ピンク色で大量のスパンコールが付いたゴテゴテした財布だ。明らかに見覚えがある。昨日百均にいたあのギャルの女の子が持っていた財布そっくりだ。いつもだったら警察に直行するのだが、持ち主に心当たりがあるので、周辺に本人がいないか探すことにした。

警察に届けてしまうと僕の場合全額受け取りになりかねない。それなら本人を探し出して全額返したいところだ。少し周辺をウロウロしていると、金髪のギャルがキョロキョロしながらこちらに向かってきた。間違いなくあの子だ。僕はその子に声をかける。

「あの、もしかして、これ探してます?」

「あたしの財布!!拾ってくれたの?ありがとう!助かったー!ていうか、よくあたしの財布だってわかったね!」

「なにか探している感じだったから・・・」

さすがに百均で見かけて心当たりがあるとは言いにくかった。

「そっか、ありがとう!ええっと、なんかお礼しなきゃ・・・たしかこういうとき、持ってるお金の一割だっけ?」

「いいですよ、お金なんて。」

僕一億円持ってるんで・・・

「そっかあ。だけど今財布に500円しか入ってなかったから50円渡してもしょうがないよね。でもなにかお礼したいなあ。あっ!あそこの自販機でなにかおごるよ。何がいい?」

女の子は近くの自販機に近づきお金を入れた。

「好きなの押してー。」

と言うので適当に選んで押した。自販機の下にあるデジタルの数字が揃って「オメデトウゴザイマス」と自販機が言った。

「すごーい!自販機の当たり初めて見た!あ、もう一本もらえるんだ。お兄さん、もう一個選んで!」

「いや、僕は一本で十分。もう一本は、君がもらって。」

「そう?まあこれはタダだしいいか。」

女の子はナタデココの入ったジュースを押した。

「今日は財布拾ってもらえた上、結局ジュースまでもらえちゃった。お兄さんのおかげで得したわ。ありがとう。あたしもう仕事だから行くね。それじゃ!」

女の子は駆け足で去っていった。


財布は手元に戻って来ただけだし、もともとあの子のお金で自販機でジュースを買ったんだから別に得はしていないんだけど、その子はそう思ったようだ。

 

ギャルとはいえ、可愛い子だったなあ。名前ぐらい聞いておけば良かったかも。百均好きみたいだし、また百均あたりで会えるといいけど。と僕は思った。


その後数日は百均に行った際にメイクコーナーを覗いたりしたが、その女の子に会うことはなかった。


だけど、予想外のところで再会を果たした。僕は、レイが遊びに来る日以外は夕食は外で食べている。この日は学食で食べることにした。実はここの学食、くじがあって、当たりを引くと学食タダ券がもらえるのだ。僕はここの学食のタダ券を大量に持っていた。


僕がうどんをすすっていると、

「あれ?こないだのお兄さん!ここの学生さんだったの?」

という声が後ろから聞こえた。振り向くとあの子が立っていた。しかもこないだ見た弟も一緒にいる。


「隣、座っていい?」

「どうぞ。」

僕は学食の隅のカウンターの端っこでいつも食べている。その女の子は僕の隣に座り、弟は女の子の隣に座った。僕は急に緊張してきた。よく考えたら女の子の隣でご飯を食べたのなんて転校前の小学校以来だ。大学内で声をかけてくるのって現在カナメ以外いないし。

「まさか僕と同じ大学だったなんて。びっくりしたよ。」

「え?やだなー。あたしここの学生じゃないよ。あたし勉強苦手だしこんなとこ入れないよー。」 

僕はうどんを吹きそうになった。

「違うの!?」

「うん。大学の学食って安いし誰でも入れるから、時々食べに来るんだー。一回弟連れてきたら、ここの学食気に入っちゃったみたいでさ。お兄さんはここの学生さん?」 

「うん。」

「だよね。そんな感じ!あ、あたしはウサミ。こっちは弟のトラジロウ。よろしくね。お兄さんは?なんて名前?」

「アタルです。」

「アタルくんね。よろしく。」



学食を出たあと、帰りの方向が途中まで同じだったので一緒に帰ることになりウサミちゃんと話した。


ウサミちゃんは学生さんではなくフリーターらしい。年齡は23歳だそうだ。同い年ぐらいかと思っていたが5歳も年上だった。トラジロウは11歳で、かなり年の離れた姉弟である。ウサミちゃんは明るくてよく話すが、弟のトラジロウはとてもおとなしい子だ。

「パチスロ屋でバイトしてるんだ。あたし元々パチスロ好きでね。アタルくんはパチスロはやらない?」

「えっと、ちょっとだけやるよ。」

「そうなんだ!うちの店にも遊びに来てよ!あ、そうだライン交換しようよ!」

とウサミちゃんが言ったのでラインを交換した。女の子とライン交換なんて生まれて初めてである。

「あ、僕はここから電車なんだ。」

「そっか。じゃあここでお別れだね。またね!家帰ったら何かラインするね!」


僕は家に着くと、ウサミちゃんからのラインが送られてくるのを真剣に待った。八時頃になって通知がなった。

「アタルくん、またどっかであったら声かけてね!」

というメッセージの下にくじがあった。


どうも当たりを引くとラインで使えるポイントがもらえるくじらしい。引いてみると当たりで一万円分のポイントがもらえた。お礼のラインを送ると、

「一万円も当たったの?すごーい!今度うちの店にも遊びに来てよ!アタルくんなら大儲けしそう!」

と返事が返ってきた。


僕は今度の休みにでも早速ウサミちゃんのお店に行ってみようと思った。だけどやはり気がかりなことがある。僕が行くと店員であるウサミちゃんの運まで奪ってしまうことだ。ウサミちゃんが運がある子なら心置きなく通えるから、ウサミちゃん自身の運が強いのかどうか知りたい。ウサミちゃんは明るいし運ありそうだけど、一応知っておきたかった。というわけで事情を話しレイも誘うことにした。


「ふっふっふ。とうとうアタルにも恋愛フラグ来ちゃったんだねえ。」

ウサミちゃんのお店に向かう途中、レイの最初の言葉がこれだった。いつにも増してにやにやしている。僕もレイがこういうリアクションをしてくるのは予想できたから、事情を話すのがかなり恥ずかしかった。しかもレイにウサミちゃんの顔を把握してもらうため、ラインのアイコンを見せるとさらに追い打ちをかけてきた。

「それにしてもアタルの初恋がこんなゴリゴリのギャルとはねえ。しかもこんなわかりやすい営業ラインにコロッと落ちて来店なんて、アタルが今後女の子に騙されないか僕心配だなあー。」

「まだ恋愛ってほどじゃないよ。友達になっても支障ないか見てって言ってるの。」

「はいはーい。」

早速ウサミちゃんが務めているパチスロ店に入る。僕達がこないだ行ったパチスロ店とは別のお店だ。僕の大学の近くだった。今日は土曜日だからかお客さんでいっぱいだ。僕はこないだ打ったのと同じ機種を選び座った。レイも横に座る。今日は僕がレイに最初の1000円をおごった。僕の都合で来てもらっているしね。


僕はまたしてもあっさり当たりを引き、続けていると、

「アタルくん!来てくれたんだ!しかも大当たりじゃん!すごーい!」

ウサミちゃんが僕のところにやってきた。ウサミちゃんはワゴンを押してコーヒーを売っていた。いつものギャルファッションのウサミちゃんは僕と同世代に見えたが、コーヒーレディの制服を来たウサミちゃんは大人っぽくて年相応に見えた。

「コーヒーいかが?」

と聞かれて当然買う。コーヒーはメダルで買えるから余裕で買えた。レイの分もおごった。

「ありがとう!」

ウサミちゃんはにっこり笑って、コーヒーを僕に渡した。ウサミちゃんは人気があるのか他の客もどんどんコーヒーを注文してくる。なのでウサミちゃんと話したのはそれだけだった。


「また1000円が18万って、お前ほんとすごいな。」

店を出たあとレイが言った。

「レイも損はしてないんでしょ?」

「まあね。すぐ当たってその後飲まれちゃったからプラマイゼロだね。さすが運0のレイだね。」

レイの自虐に笑った。

「後でお昼おごるよ。それで、ウサミちゃんの運、どうだった?」


「うん、それなんだけど・・・」

いつもはにやにやしていて表情豊かなレイが急に暗い顔になった。なんだか嫌な予感がする。


「ウサミちゃん、かなり運低いよ。僕より低い、マイナスだった。」






























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