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超強運  作者: コサキサク


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第4話 こんなもの、いらない

ソラが死んでしまったとわかったあとは、もう何もできなかった。もう、両親の七回忌も、ユウトの葬式にもコースケの葬式にもソラの葬式にも行くことが出来ず、ただ誰もいない自分の家で何も食べずテレビも見ずに仰向けになっていた。


ときどきスマホにメールが来たり電話が来たりしていたが、出る気力がなかった。


なにもせぬまま、夜になった。こんなときでもお腹が空くらしい。何か食べようと電気をつけ、家の中の冷蔵庫やカップラーメンを保存している棚を探した。数あるカップラーメンの中から、湯を注ぐだけで作れるカップラーメンを取り出し、電気ケトルで湯を沸かした。湯を注いで適当に待ったあと、蓋を開けると蓋の裏に

「大当たり」

と書かれていた。何かキャンペーン中だったらしく何か当たったようだ。


僕はふと、思った。そうだ、宝くじで一億当ててからというもの、何かがおかしい。こんなに短期間に、周りの人が不慮の事故と病気で亡くなるなんて、そんなのおかしくないか?もしかして、誰かに呪われたりしてるのか?例えば、誰か僕が一億当てたと知って妬みから呪ってる?僕から大事なものを奪おうと何かしてる?だけど、誰かがどうにかしようとしてこんなに綺麗に僕の両親と大事な友達だけ不慮の事故で殺せるか?いくら呪いでも難しいだろう。それに、僕を妬んだり、僕から一億欲しいのなら僕の命を狙えばいいじゃないか。なんで周りばかりなんだよ。


もしくは、一億当たるというので運を使い果たしてものすごく不運になったのかと考えた。だけどそれだと、今食べているカップラーメンの当たりを引いていないはずだ。多分、僕の運の強さは変わってない。いくら考えても結論は出なかった。


ただ、一つだけ、自分の運の強さを根拠に救われていることがあった。それは、これだけ周りの人間が運悪く死んでいても、次に僕が死ぬ、という展開はないと直感で確信していた。普通の人なら次は自分の番を想像すると思うが、僕はそれだけは感じなかった。だから、周りの人間が死んだ辛さは感じていても、恐怖はなかったのだ。この状況で僕が完全に気が狂わずに済んだのはやはり運に助けられていたと思う。



時計を見ると、もう夜の九時だった。


「父さんと母さん、遅いな。どこに出掛けてるんだろう。」

僕は無意識にそう呟いていた。そして現状を思い出し、また涙がこぼれた。だめだ。もう父さんも母さんも二度と帰ってこないこの家で、夜を過ごしたくない。僕は家を飛び出して夜の街を彷徨った。何をするわけでもなく徘徊した。


それでも、この街は両親や、ユウト、コースケ、ソラとともに過ごした場所ばかりで、歩くたびに涙が出た。夜の街で友達同士連れ立っている人が羨ましくてたまらない。まだ電車が動いている今のうちに、遠くの街に出ようと思った。駅まで来て、定期券を使って改札を抜ける。夜遅い時間の駅のホームは、人が少なく、静かだった。電車が来るまであと15分もある。


孤独から逃れたくて、電車に乗ろうとしたはずなのに、駅のホームで電車を待つ時間は僕を孤独に突き落とした。また涙がぼろぼろこぼれる。涙を拭っていると、スマホのメールの着信音がホームに響いた。僕は今日始めてまともにスマホに触る。今のメールはただのメルマガだった。ただ、その一軒手前のメールが目に止まった。

 

銀行からの入金通知だった。宝くじが当たったのを期に作ったあの口座に振り込みが行われたことを知らせるメールだった。「残高の確認はこちら」いうリンクをタップすると、




 100,000,000円




という残高が表示された。



「・・・こんなもの・・・」



こんなもの、ひとりで持ってて、なんになるの?



一緒に過ごしてくれる、家族も、友達も、もういないのに。




ねえ、なんになるの!?




「こんなものいらないから、父さんを、母さんを、ユウトを、コースケを、ソラを返してよ!!返してよ!!!うわあああああああ!!」




僕の叫び声がホームに響いた。




頭では、わかっている。生きていくのにお金が必要なことぐらい。この状況になってもお金の心配がないのはかなり恵まれていることも、一人ぼっちになっても構わないから、一億円欲しいって人がいることも。僕のことを甘ったれだと思いながらこれを読んでいる人がいることも。だけどだけどそれでも、僕はそれでもこのお金をありがたく思えなかった。





「こんなもの、いらない。」




本当に、いらない。



電車のライトが見えてきた。もうすぐホームに

電車が来る。




もう、死んでやる。身をもって、お金があっても生きる気力がなくなることを証明してやる。




一億円が入ったスマホはホームに置いていこう。誰か拾えばいい。





僕はスマホのホーム画面のメモを開き、




「残高一億円あります。誰か使ってください。僕は死にます。」



と入力し、スマホをホームに置いた。




僕は、電車が来るタイミング見計らい、ホームから飛び降りた。




やっほー。レイだよ。今からしばらく僕のパートね。


冒頭でも言ったけど、僕は、人がどのぐらい運を持っているかがわかる。なんとなくじゃなくて数値でだ。


人の運が見えるというのがどんな感じかというと、人の頭の上に運を現す数値が見えるんだ。

なんで、人の頭の上に表示されている数値が運とわかるかというと、まあ、この体質、遺伝なんだ。身内に同じ能力の人がいたから把握しているんだ。


運がいい人は1000ぐらいかな。逆にマイナス1000って人も案外いる。もちろん、みんな運というのは日々変動している。


僕はまだ20歳だから、そんなに多くの人の運を見たことはないんだけど、やっぱ運のいいやつは人生上手くいってるやつが多いよ。運がない、マイナスのやつはやっぱ上手くいってない場合が多いね。ただ、運のないやつは根性あるやつが多いかな?どうしても実力勝負になるからね。


ちなみに、僕は運が「0」なんだ。運よくいい思いもできないけど、不運な出来事とも無縁なタイプだ。しかも、他の人は運気に変動があるのに、僕はないんだぜ。いつも0なんだ。悲しいよね。レイって名前も運が0だからってつけられたのさ。 


自分の運が0だから、運の数値が見えても自分の人生にはちっとも反映できない。だからこの能力、邪魔なだけでいらないなー。と思ってた。あいつに会うまでは。




アタルのことを始めて見たとき、僕はびびった。あんなに運が強いやつ始めてみたからだ。もう他の人間とは桁違いだった。桁が一目では数え切れなかったんだよ。


しかも、アタルはあんなに運が強いのに、めちゃくちゃ不幸そうな顔で街を徘徊していた。結局のところ運と幸福はイコールと思っていた僕は、運と幸福度があそこまで反比例してるやつがいることを知り、衝撃を受けた。


いったい、何があってああなったのか、気になって後を付けた。アタルは電車に乗ろうとしているようだったので僕もついていった。アタルは何か叫んだあと、ホームから電車に飛び込もうとした。やばい、こんな特殊なやつに死なれてたまるか!なにがあったか教えてから死ねや!と思って、アタルの腕を引っ張って助けたんだ。


そりゃ、あんな運の強いやつ、あっさり死ねるわけないじゃんね。しかも僕のような特殊能力を持ってるやつに助けられるって、まじで持ってるよねー。



















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