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第4話「無償コインでステータス&スキルアップ」その1

不定期です。


『……』


 ヴァージニアを操っているハルトと強者バクリュウキョウは互いを直視しながら大きく右旋回。これからの勝敗を大きく左右する第一撃目をどう繰り出そうか、既に始まっている無言の駆け引きに、体を貸している騎士も気が気ではなかった。


 だが、そんな心境など露知らず、操縦側のハルトは不謹慎ながら内心は高揚、期待に胸を弾ませていた。日頃から修練を積んできた腕前が何処まで通用するのかと。

 この間にも、ヴァージニアのライフポイントを頭に入れながら、数十手先まで視野まで入れてシミュレーションしていた。

 これが世界レベルのゲーマーの標準スタイルである。遊びは一般まで、直感はアマチュアまで、本気のゲーマーは今までの戦闘データーを念頭に置き、事前に一分一秒残さず使いきり戦略を練る。


「ウオオオオオオ!」

「せいやあああ!」


 一合。


 二合。


 三合。


 四合。


 五合。


 六合。


 七合。


 互いの目線が合わさると、開戦の合図ともとれる咆哮を皮切りに、まるで強力な電磁場に引き寄せられる様に激しく合わさる剣と戟。何度も二つの魂の心情を表すような火花が辺りに飛び散る。

 初手は基本。お互い力量を推し測るように、正攻法で真正面から刃同士を重ねる。

 

「ヴァージニア・ウイル・ソード。本当にさっきのチビか?」

「驚いたか!?」

「ああ」


 バクリュウキョウは剣を交えただけで、ヴァージニアの変化に勘づく。初戦は刃を交えず一撃で空間を支配する事が出来た。だが、今回は状況が違う。自慢の昆さばきが一切合切弾き返された。


(うそん!? 変態ってこんなに強かっただっちゃか?)


 しかし、それは当の本人も同じ。想像した以上の成果に驚嘆、心中穏やかではない。初めてドレスに袖を通したダンスで王族のボンボンを泣かして、センセーショナルに社交界デビューしたと同等の衝撃がここにあった。


 八合。


 九合。


 十合。


 十一合。


 十二合。


 十三合。


 しかし実践経験の差、リザードマンが一歩一歩徐々に押していく。

 矛から発生した武器だけあって、リーチ的に圧倒的にこちらが不利。しかも切ると突く機能を備えているので、変幻自在な攻撃に一号一号ヴァージニアを追い詰めていく。


「流石は魔王軍一二を争う天下無双の戟使い。私なんかじゃ歯が立たないっちゃ」

「いや、初戦と違い武器特性を完全に掌握している。こんな短時間で武芸が成長するなんて聞いたことがない」

「お前を倒す為に悪魔に魂を売ったっちゃ」


 リザードマンの疑問に騎士は言い切る。


『酷い! 僕は悪魔じゃないよぉ!』

「言葉のあやだっちゃ」


 ハルトはそう言いながらも、押されつつある相手の攻撃パターンを探りながら勝機を分析していた。こちらからのアタックは極力抑え、慣れることを最優先にする。体力はまだ減ってない。序盤の想定通りの展開にほくそ笑んだ。


 敵の軌道が変化する攻撃に、今までの経験から導き出される答えを、操縦桿を巧みに操り実演する。

 セカンドギアでも手強い相手にハルトは、久しぶりに世界上位ランカーとかプロプレイヤーに当たったぐらい興奮と高揚していた。


 十四合。


 十五合。


 十六合。

 

 十七合。


 十八合。


 十九合。


 二十合。

 

 激しい攻防は続く。打ち合いは怯んだ方が負け。ハルトの操作と同調しているヴァージニアは根気比べに気迫で食い下がる。


『まだまだ!』

「おいおい、ここまで俺の攻撃を真っ向から防げるまるなんて、この前の歴戦の戦士を相手にしているみたいな感じだぞ!」

「それはどうもだっちゃ!」


 目が慣れたハルトは相手の動きを読んで、劣勢だったのを五分にまでV字回復。

 バクリュウキョウはハルトの存在を認識していないが、まるで合わせるように口元が本能に従って綻んだ。鋭い牙は獲物を補食するようにてらついているようだった。


 二十一合。


 二十二号。


 二十三号。


 二十四号。


 二十五号。


 二十六号。


 二十七号。


 二十八号。


 二十九号。


 三十合。


 四十合。


 五十合。


 ハルトは矢継早に迫ってくる刃に、音ゲーで鍛えた乱れ太鼓並の連打でどんどん合わせ打ち返す。

 不意にバクリュウキョウがワンテンポ振り遅れてオーバーアクションになるも、これは隙を見せた所をカウンターする誘いだと見抜きわざと無視。逆に基本と応用技とフェイクを織り混ぜ、ハルトはここで初めて防戦一辺倒だった攻守を入れ替え主導権を得る。


「はぁはぁ、どうだっちゃ!」

『よし!』


 格下の認識を改めたのか、「ヴァージニア・ウイル・ソード、面白い面白いぞ!」バクリュウキョウは昆の構え方を片手から両手に切り替えた。バトンガールなど敵わないヘリコプターのような気合の入った速い戟の回転に空気が切られる。

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