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第三話「武力100一騎当千VSアーケードゲーマー 月下の死闘」その三

金曜更新。時間はランダム。一発で見つけたら貴方ラッキーよ。♪ヽ(´▽`)/


『まるでボス戦でHP1、MP0味方全員死亡の状態なんだよ。せめて薬草があればまだ粘れるのに』

「だから、異国の情報を言ったって私には理解できないっちゃよ!」


 敵が減って大分見渡しがよくなり低空移動が難しくなったヴァージニアは、周囲の敵を一蹴し自らの足で立つ。

 わざと間合いをとる為に広間の端へ陣取るが、オーガ族であるソンゲンにとっては大した距離ではない。


「わはは、残念だな。もうネズミみたく逃げる場所はないのである」

『こいつは仲間にも情はないのか?』


 ソンゲンは躊躇なく殆どの味方を殺し逃げ場を潰した。魔族の成せる業なのか、それとも本人の業の深さなのか。立案したハルトも思わず敵に同情する。


 先頃ヴァージニアと戦って圧倒的な力の差を見せつけているので、相手は絶対の自信がある。そこにハルトは勝機があると、「それはどうだっちゃか」事前に準備を打合せした次の罠を張って強欲な鬼へと挑発した。


「虚勢を張りやがって!」

『虚勢じゃない』

「虚勢じゃないだっちゃ」


 怒りで偉そうな言葉が荒くなる。ヴァージニアもハルトに言われた通りに話しているだけなので、内心は穏やかではない。


 ヴァージニアはアイテムボックスを介して渡された容器に入っている謎の液体を染み込ませたティッシュと、擦ったマッチで火をつけ前へ投げ捨てた。硫黄と油の匂いと共に尋常じゃない速さと威力で十を数えるまでもなく燃え広がり、枯れ草はチリと化す。予想より大きく燃えたので発案者のハルトも気が気ではなかった。


「何の真似だ?」

『これを逃げている間に周囲にばら撒いた。どういうことなのか聡明な魔族の方々なら分かるでしょ?』

「これを逃げている間に周囲にばら撒いた。どういうことなのか聡明な魔族の方々なら分かるだっちゃ?」


 と再び、マッチに火を灯しながらヴァージニアも復唱する。

 もちろんこの言動はフェイク。だが、絶対の勝者が敗者に回ったのである。この人間ならやりかねないと恐怖を植え付けるには十分であった。

 科学の授業で使うから持ち歩いていたプラスチック容器に入れていたおいた廃油が、機転で思い付いた敵を追い詰めるアイテムに様変わり。漂ってくる菜種油の香ばしい匂いに、空腹な騎士様のお腹が豪快に鳴った。


「おのれぇこしゃくな真似を! 誇り高き魔界貴族がこんな事で屈すると思ったか!」

「お前は本当に自分の事しか考えていないんだっちゃね。無論低脳なオーガ単体に向かって脅した訳じゃない」

「何だと?」


 この子供のまま成長せず大人になった愚か者へ答えを口に出す前に、


「ぎゃぁぁぁァ!」

「もう、いやだァ!」

「こんな奴に勝てるわけがなイ!」


 ハルトの狙いが当たり、周囲は騒然となる。

 逃げ惑うゴブリン達をソンゲンはことごとくフルスイング、「貴様ら逃げるのは許さん!」残存していた兵士達を次々と追い掛け撲殺する。今逃げられてはバクリュウキョウに知られてしまう。それだけは何としてでも避けたかった。

 ――そして敵はとうとう愚か者一人になった。


「くそがぁぁ! こうなったら仕方がねえな。てめぇを八つ裂きにしてバクリュウドの敵対勢力へ寝返るしかねぇぜ! あいつは奴隷からの成り上がりだから、貴族にとっては鼻摘み者だからな」

「来たよ」


 ソンゲンは一直線に呆れたヴァージニア目掛けて猛牛のように突っ込んでくる。


「勝算は?」

『100パー。でもそもそも、スクロール型ではない場面が固定されたアクションゲームは、ある程度雑魚を倒すとボスが出現するのがセオリーなんだよね』

「また、訳のわからないことを……。その根拠のない自信、何処から来るんだっちゃか」


 実は体力ゲージが危険な状態にある今、ハルトでも勝算は戦ってみないと判断出来ない。それでも、彼女では全く太刀打ち出来なかった事実がコンディションにどう影響を与えるか分からない今、本音は極力避けて誤魔化すしか思い付かなかった。


 何か対処法はないかと目的もなくコンソールを弄っていると、偶然、スキル一覧表を開いてしまう。

 ハルトは無課金勢なのでスキルは一切内容は知らなかった。興味がなかったと言っては嘘になるが、知ってしまってはお金を無尽蔵に投資してしまうので、スキルシステムはスルーしていた。何となく目を通すと、魅惑のラインナップに目を奪われる。


《強運》


 運がアップする。(副作用として、男の場合頭から終始タライ、女性の場合、足下にバナナの皮)

 

『……』


 ハルトはイタズラ心でレベル1に上げてしまう。ガチャとかに使う有償変換ポイントが無いから無効となると判断したからだというのもある。

 不安から意味がなくても、藁にもつかみたい気持ちがハルトにはあった。


 冷静さを欠いたソンゲンが、種族の文字通り鬼の形相で突進してくる。

 残機無しのワンチャンスプレイ。ハルトは秒針一回が1分に感じるほど止まった刻に、武者震いとはこういう瞬間を指すのかと、仮想では味わえない恐怖を体感していた。


 だが、物語というものは常に平坦ではない。見せ場また急展開というものが必ずある。勿論、この常識はずれで大根役者揃いの三文芝居にも、それ相応の展開がいるかどうか分からない神によって用意されていた。

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