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第二話「そして、僕らは一つになった」その五


「もしかしてお前はゴーストの類いなのか?」


 当然ながら困惑する。

 一時的とはいえ、いきなり体の自由を奪われたのだ。取り憑かれたと考えるのは仕方ない。


『ち、違うよ!』

「じゃ、魔導士?」

『否定!』

「悪魔?」

『ノー!』

「疫病神?」

『ではない!』

「女の下着で恍惚してしまう変態?」

『なんでやねーん!』


 ハルトはどんな状況でもツッコミは忘れない。

 出会いが出会いなだけに、あながち間違っていないが、時間が無いのでヴァージニアもそこら辺は改めて問いただすつもりもなかった。


「じゃ、何なんだっちゃ?」

『原理は分からないけど、君を動かす事が出来たんだ』

「はぁ、悪夢の中にいる気分だっちゃ……」


 ヴァージニアは口を動かしながらも、じりじりと敵の間合いに入らないように場所移動を繰り返していた。


『一つだけ言えるのは、これで隊長さんを目の前で見殺しにしなくて済むという事だよ』

「どういう事だっちゃ?」

『こういうこと!』


 ヴァージニアは低くかがんで、背後からのひと突きをやり過ごす。そのまま横っ跳びして転がり、数度の矢と斬撃をなんなく躱しながら剣を回収。そのまま攻撃を対処しやすくする為に一時大岩に背中を預ける。

 この一連の動作は全てハルトが操作したものだ。ディスプレイで全方位を把握しているので造作もないことだった。


「奴らの連携を封じたのか?」

『そう、全方向から攻撃されるより、一対多数の場合こちらの方が防げる』

「でも、追い詰められている様にしか見えないっちゃ……」

『確かに……。通常なら一方的に蹂躙だよ。でも、この剣なら対応出来る。こういう風に』

 

 間合いに入った敵達と矢を一斉に薙ぎ払う。油断して初撃を食らった一匹は露出部位だったのが幸いして胴を切り離す事に成功した。

 

「偶然?」

『一応は狙ったよ。ゲームみたくコンボは無理だったけど……。でも、まずはスコア1』

「お前が言うと楽に聞こえるっちゃ」

『いやいや、気分は初心者救済システム無しの激ムズレトロゲーだよ。今回は幸運にも似たような武器を使用した事があるから攻略法を知っていたってだけ』

「変態語で喋るなっちゃ! 分からん」

『うーんと、要は油断出来ないって事かな』


 当然ながら残機は勿論、チュートリアルやオープニングデモもない。せめてリセットとポーズは欲しいなと呟く。

 

「変態、実践経験あるだっちゃか?」

『ない。でも、経験はあると言えばある』


 ゲームだけど……、と呟く。


「模擬戦闘だっちゃか?」

『まぁ、そんな感じ』


 ハルトの態度は白々しい感じもするが、この世界では一般人でも訓練は受けるので不思議はなかった。


「でも、余計なことを。別に変態の助けなってなくても私一人でなんとかなったちゃ」


 この戦いが始まってから何回死にそうになったか。基礎の型しか出来ないから、兵法とか駆引きなんて全然分からないだったゃ――、とは騎士のプライドがあるので言えなかった。


『じゃ、どうやって切り抜けようとしていたの?』

「む、勿論、騎士道と根性とガッツとファイト!」

『好きな言葉は?』

「突撃と突貫!」

『……』


 師匠がとうとう匙を投げた時、この要領が悪い不出来な弟子に教えた言葉だ。

 大体意味が同じって事に何故気付かないのだろうと、ハルトは多分ノイローゼになった師匠に同情する。


 道理で戦い方が猪武者だったわけだ。この隊長さんなら、騎士道とは死ぬ事と見つけたりとか言いそうだと、聞こえないように再び口に出す。

 

 更に画面に表示されている体力ゲージが桁外れに高い事が、彼女が脳筋系と立証するのに十分な証拠だった。


「まぁ、騎士として礼だけは言っておく。ありがたく思うだっちゃよ」


 知り合ったばかりの得たいの知れない男だが、命懸けの勇気ある行動に僅かながら信頼が生まれる。

 そして、まるでそれがトリガーだったみたいに、どういうカラクリか理解出来ていないがコックピット内とシンクロに成功。命の恩人の誇らしげな姿が見れずに残念だという想いが、神に届いたのだろうか。


「うぇ……」


 だが、脳内ビジョンに映った救世主は、残念ながら英雄ではなく、初めてエロ本を開いた少年の様にニヤついていたお猿さんだった。

 心情的には、恋する前に千年の恋から覚めた乙女かもしれない。

 

「よくも仲間をヤったナ!」

「すぐに殺してやル!」

『残念ながらレバーを握った僕には、チート勢と重課金勢以外、誰も勝てない』


 ハルトは不敵に憎たらしく口元を吊り上げた。

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