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7 依頼


ギルド員からのお話とやらは先の男に関係することだった。


ここ一月ほどの間に盗難被害が増えているということ。そして捕縛された盗難の加害者はほとんどが体のどこかに同じ刺青をしているそうだ。騒ぎを起こした男の手のひらにも刺青があった。

その刺青の模写を見せてもらったときすこし、エリスの肩が小さく震えた気がする。

刺青についてギルドが行った調査によるとかなり昔から存在している盗賊団のエンブレムだそうで。

なにか、エリスの過去に関係しているのかもしれない。


盗みを行っている集団については捕縛した者から拠点の洞窟を聞き出し、一週間前に一般依頼として討伐要請が出されたそうだ。それを銅等級のパーティー二組が受注。討伐に向かったものの帰らず。不審に思ったギルドが調査員を派遣すると、洞窟は魔物の巣窟。しかし人間が出入りした形跡もあり、依頼の難易度が一般向けから乙種難度依頼になったという話を聞かされた。

町の金等級冒険者は運悪く出払っており、実力が金等級に並ぶという王都の騎士団に所属する上級騎士団は都の守りの要。討伐には向かえないという。


この話が意味するところ。



「依頼を受けてくださいませんか?」

「断る」

「そんな……」

「用事があるんでな。ここで決めないだけだ。気が変わったらまた来る」

「……はい。お待ちしております」


「エリス。いこう」



エリスはずっと何かを考えているようで、ギルドに心残りがあるようだった。しかし後ろをついてきてくれている。面倒はいやだ。さっさと鑑定を済ませてしまおう。それが本来の目的だ。


その前に昼飯を食って行こう。そしてにジジイの店へ行こう。




___________________________________________________________





鍛冶屋への店を歩く。また路地だ。なんでこんな辺鄙なとこに店を構えたがるんだ。


路地の湿り気を帯びた薄暗さがエリスの白さを際立たせている。

ジジイの店で受け取った小物や防具まで全部を装備したエリスは真っ白だ。なんとなく高級感が漂っている。

その高級感に見合うだけの金はとられたが。

性能もいいみたいだし、簡単な付与やベルトもサービスしてくれたため後悔はない。



「いい買い物だったな」

「ありがとう」

「おう。金はあるからな」



いや……鍛冶屋ではせいぜい値切るとしよう。


鍛冶屋の前へ来ると中が騒がしいことがわかる。

工房のようになっていてけっこう分厚い壁の建物だったはずだが………。それにあいつは一人暮らしじゃなかったか。


しゃれた装飾のされた扉を開ける。



「なーーい! あの魔石もなくなっちゃってるよぉ~!!」

「主につくってもらっておったミスリルの槌もやられておるぞ!!」

「魔石類の類がほぼほぼ持っていかれてるんじゃないか……」


「……」

「なにこれは…………」



工房内では三人の男女が騒いでいた。


長身和装の黒い長髪の男。

引き締まった体に蒼い髪の道着の女。

杖に寝そべったまま宙に浮いている(?)薄い紫髪の女。


店に入ってきたエリスとリクには目もくれず叫んでいる。



「でもさ!! 甲殻とか皮素材とかはとられてないね!」

「これは金目のものだけを狙っているようだ」

「くぅー! 腹が立つのぅ!!!」

「おい。邪魔するぞ」

「……おじゃまします」


「「「!!?」」」

「ええ……、驚くのか」



そこで騒いでいた三人のなかの男が取り直すように咳払いをした。



「見苦しいところをみせた。客だな」

「ああ……。何かあったのか? それにここの店は女エルフの店だったと思うが」

「師匠の知り合いか。私はその女エルフ、壬生(みぶ)=クノカクの弟子だ。 とりあえず座ってくれ。そのことについても話そう」



そういって丸い石の円柱をすすめてきた。騒いでいた二人が座る。浮いている女はそのままだ。

どういう原理なんだろうか。

リクとエリスも座った。


あいつは弟子なんてとってたのか……。



「先ほども言った通り。私は師匠の弟子の壬生(みぶ)・ノクファイト。彼女らは私のパーティメンバーで、この工房に居候している」

「居候1!!あたしは龍人のヴァルカ・ハンニバル!」

「居候とは行ってもちゃんと働いておるがの……。わしはセネカ・エウスじゃ」

「リクだ」

「……エリス」


「何があったかだが、まぁ空き巣に入られてな。少しの間、王都から出て三人で素材集めに行ってたんだ。ついさっき帰ってきたら、物が無くなっていてな……」

「それで騒いでいたんだな」

「そうだ。あと師匠のことだが、放浪中でここにはいない」

「あいつは引きこもりだと思っていたんだが。ここを出ていくとは思いもしなかった」

「それについては同感だが、師匠は好奇心の塊でもあったから、置手紙に納得した。魔大陸の方面の戦線へ行ったそうだ。魔大陸産の武器でも見に行ったのだろう」

「あそこはまた戦線になっているのか?」

「知らないのか」



そんな世間話を続けて、一時間ほど。

最近の盗難のこと、その依頼がギルドで発行されていたことなども話した。


エリスとヴァルカ、セネカも何やら話をしていた。リクの時と違いすぐ打ち解けていた。

………………。


差がある。



「で、客としてきたんだろう?」



ノクファイトからやっと本題が出る。



「エリスの魔剣鑑定。それと俺の長剣の手入れをな。長剣はこれだ。エリスのは、」

「これ」



リクは長剣をノクファイトへ渡す。

エリスは少しためらっていたがやがて渡した。



「長剣は何とかしよう。この素材を持っているのは今では師匠くらいだろう。それに壬生の名も入っているな。師匠の手で打たれたものを持っているとは、親密なのか」

「付き合いが長いんだよ」

「ふむ、魔剣はわからない。すこし預からせてもらえないか。この素材、雰囲気、何もわからないかもしれないが、調べるだけ調べてみよう」

「どうだ? エリス」

「わかった」


「よし。それで対価だが____」



壬生の名を背負った鍛冶師は息を吸い込み、



「私たちと盗賊討伐を手伝ってくれ」



そう、面倒を口にした。



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