6 面倒
エリスとリクは王都の東に来ていた。特に決まった呼び名はない区域だ。ギルドの関連施設から、王都に務める兵士の訓練所や寮などもこの区画。他には娯楽施設なんかもちらほら経営されている。
ほぼ空になったリクの財布にお金を補充するため。リクはエリスを伴って王都ギルド本部へ。ちなみに王都ギルド支部は西側の区画にある。
ギルドホールの前、リクは
「ここで待っててくれ。フードは絶対に取らないようにな」
「わかってる」
エリスにそう告げるとギルド本部へ入って行った。
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久々に来た王都のギルド。昼飯時と言うにはまだ早いが、ギルド内の酒場には多くの冒険者がたむろしている。依頼を受けるには遅い時間だからか、掲示版には数人の人しかいない。
リクはカウンターへ行き、暇そうにしているギルド員に声をかけた。
「銀行を利用したい」
「はい。ご利用金額、それにプレートとチケットのご提示を」
金のプレートとギルドの印が押されたチケットを取り出す。そして引き出す金額を告げた。ジジイの店で使う分と鍛冶屋での分。そして路銀に困らない程度。あまり貯金は使いたくないが別に貯めてどうこうしようというわけではない。それに結構な金額が貯金されてあるため引き出してもあまり変わらないだろう。必要な分を引き出すには別に渋ったりなどしない。
プレートを見たギルド員の子が顔をあげてこちらを見つめてきた。金等級の面倒なところが出そうだ。
「金等級ですね。お話があるのですが__。 ?」
外が妙に騒がしいことに気づく。なんだろう。
大きな音を立て、急にギルドホールの扉が開いて男が入ってきた。静まり、いっせいにホール内にいた人の視線が向く。
「助けてくれっ! 急に白ずくめの女が殴りかかってきたんだ!」
だれも動かない。殴る殴られたなんて冒険者の中では助けるようなことではない。死にゃしないのだ。
なによりごつい体格をしたごろつきのような男がそんなことを言っているのが喜劇にしか思えない。やった白ずくめの女はエリスだろう。なにがあったのか。
またギルドホールの扉があきエリスが入ってきた。視線が向いているのを気にも留めずごつい男の首に後ろから手刀を叩き込む。結構な力がこもっていたようで男がくずおれる。失神してしまったみたいだ。エリスはそこでやっとギルドホール内の視線に気づいた。
「……気にしないで」
エリスの一言でホールに喧騒が戻る。どうでもいいことなのだ。そういうものだ。もっともリクにとってはそうではないが。
エリスの元へリクと会話していたのと別のギルド員が向かう。一応、話を聞くのだろう。
気になるな。
シラフのエリスは急に殴りかかるようなサイコ野郎ではないと思う。大丈夫だろう。男がなんかしたんだろうな。
「話はあとで聞く。金の引き出しも後でいいからすこし向こうの話に加わってくるぞ。あの女は連れでな」
「はい。わかりました」
カウンターのギルド員に話をつけ、リクはエリスの方へ向かう。
「なにがあったんだ?」
「エリスさんのお連れ様ですね」
「ああ、そうだ」
「……剣をスろうとしてきたから殴った」
「ということでして」
「この男の自業自得だな」
「はい。最近は空き巣やスリ、盗難などの報告が上がってきておりますので、その類でしょう。集団での犯行もあるようですし、お気をつけて」
「わかった。ありがとう」
「まだ金を引き出せていないんだ。もう面倒ごとが起きてもいけないから一緒にいるか。すぐ終わるだろうし」
「はい……」
床に倒れ伏している男へ視線を向ける。エリスの剣を狙うとは、【気配遮断の付与】が効かなかったのだろうか。それにお目が高いな。刀身を見れば魔剣とわかるが鞘に入れているのだ。まぁ、なんとなく盗ろうとしただけかもしれないけれど。
それにギルド職員も言っていたが多くの件数、問題が起きているのだろう。巻き込まれたくないな。
「お疲れ様です。ではこちらが引き出されたお金になります」
「おう」
「そしてお話なんですが……。聞いていただけますでしょうか」
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