3 二人の話
文章がだんだん読みやすくなればいいな〜と思います。修行作品です。
衝撃の寝起きを遂げたリクがエリスをシャワーを浴びるように促したあと。
リクとエリスは自分たちの体について語らった。
夜の宿の二人部屋。
シングルベッドが離れた場所に置いてある部屋。その窓際に置いてあるベッドの上に、二人が並んで座っていた。
体について語らった、とはいっても別にやましい意味ではない。
自分の体、つまり不老不死について話し合ったのだ。
そう、別にやましい意味ではない。
「エリスの不老不死はその剣が媒体、つまりは元になってるんだよな」
「たぶん……そう。でも体は変わっていないと思う」
「体の改変具合は把握が難しいからな。しかし魔剣が原因なのは予想がつく。仕組みは……わかってたら苦労しないな。わかってることはないか?」
「この魔剣で斬りつけると大抵の生き物は一傷で絶命する。そして殺しただけ私の寿命が伸びる」
「……【即死の付与】? 不老不死になるための媒介にしては重い付与だな」
付与、というのは無機物に対する特異能力の追加だ。伝説の魔剣や聖剣、魔道具というのは一際強力な付与がされたもののこと。
そして素材となる無機物ごとにある程度、決まったキャパシティがある。
ただの木剣のキャパシティが10だとすると、10を越えるコストの付与はできない。例えると10の中に1コストの付与は10個までできるし5コストならば2つ。5と6コストならばどちらか片方しかできない。
即死の付与だと思うのだが、やはり詳しくはわからない。
この魔剣の素材のキャパシティがどれだけ巨大だったとしても【即死の付与】と【不老不死になるための付与】の2つの付与、と考えると流石に入り切らないだろう。
生命に干渉する術法はそれだけコストが重い。そのような効果が付与されているということは不老不死に何か関係する付与なのだろうか。
「うむ、わからない。まあ、悩んで答えが出るようなら王都へ来る必要はなかったんだが」
「……そう。王都に来た理由は私の剣の鑑定のため」
「ああ、俺の知り合いに鍛冶師がいてな。武具なんかに関しちゃ博識なやつで」
「そんな人と知り合いでもリクの不死の原理はわかっていない……」
「そういうことだな。尖ってる面々に顔は広いと思うんが、全く手がかりがない。魔道具が原因ではないんだ。何らかの術や呪いが体にかけられているんだろうが……」
「かけられた覚えがある?」
「ある。でもかけたやつがどこへいるのか」
「そう……」
エリスとリクの不老不死の原因は根本的に違ったのかもしれない。謎、近づいたと思えばすぐに離れてしまった。うまくいかない。
「さっき俺は顔が広いと思う、って言ったよな。エリスはどうなんだ? 不老不死として長く生きてたら知り合いなんかは増えるものだと思うが」
「……………………いない」
「そうか」
静かになった。
部屋の中は窓から入ってくる月明かりのみで照らされている。
薄暗い部屋に佇むエリスはとても美しかった。
水を浴びることによって洗われた肌はどこまでも白い。
髪も同じように、出会った時とは比べ物にならないほど艶やかだ。窓からの微風にそよぎ、月の光を反射する白銀の髪。
そして吸い寄せられそうになる、それほどに澄んだ、まるで不死の赤光を水晶に封じ込めたかのように輝く。そんな赤く澄んだ瞳。
多くの人を殺めてきた人間の目には、とても、とても見えなかった。
こんなことを思うのはおかしいのだろうか。殺しにかかってきた犯罪者に美人だ美人だと、そんなことを思うのは。自分の命に対する思いが軽くなっているのだろうか。
……なっているのだろう。
「不老不死になって、心の変化はないか?」
「……………………不死になってからずっと苦しい。……家族や仲間はみんな死んだ」
「そうか」
澄んだ瞳を哀しげに俯かせた。
多くの大切を失ったのだろう。
エリスが指名手配されていたのもそれが原因なのかもしれない。
心が壊れるなんてきっと珍しいことではない。知り合いがいつどんな死に方をするかもわからない。
リクにだって大切な人はいた。そして、人間という種はあまりに脆かった。そしてそれは、冒険者に身をやつしている者としてしかたのないことでもあった。
真夜中、月が照らす王都はとても綺麗だ。そんな窓の外を眺めながらエリスに言う。
「話くらいいつでも聞くからな。共有できる思いもあるだろう」
「………………」
返事がない。
エリスは寝ていた。
疲れていたんだろうな。
リクは息をつき布団をかけてやる。
誰かと相部屋の宿なんて何年ぶりだろう。
十年どころではないかもしれない。
何かが変わればいいな。
書きたいように書いてるんですけど、このままだとイベントが何もないような気がして。ちょっと危機を感じてます。