12 依頼道中④
お、お久しぶりです……。
前回の前書きはどこへ行ったのかという状況ですね……。
木漏れ日があふれる暖かい景色。聴覚には遠くから聞こえてくる水の落ちる音が、この渓流に滝があることを示している。
昨日の森とは大違いだ。魔素が少ないのだろうか?雰囲気からか、実際にそうなのかは分からないが空気も澄んでいるように思う。癒える。
今は全員が馬車を降りて獣道のような、人が作ったような、そんな隙間を歩いていた。獣臭さがないため盗賊が作ったのかもしれない。なれば洞窟は近いだろう。
「それ……便利だな」
「そうじゃろ。重いぶん疲れるがのぅ」
「……ありがとう」
「気にしなくていいよ! 重いのはあたしの手甲だし!」
「ヴァルカは気にせんか。それはホントの事じゃぞ」
セネカが馬車に積んでいた荷物を運んでくれているのだ。……宙に浮かせて。
その上にセネカが寝そべって移動している。
ノクファイトはまともなんだが、なんともアンバランスなパーティだな。
セネカは器用に、浮かせた手甲をヴァルカの頭にぶつけた。痛そうな音がする。
「もぉ……。持てばいいのー? 持てばいいのーー??」
「重いのは別にいいんじゃがのー。持ってくれなくてもいいんじゃがのー」
「うー、あーりーがーとー」
「良し良し」
原理は分からないが宙で嬉しそうに跳ねた手甲が荷物に混ざる。
見たことのない魔法だ。
魔法について深く理解すれば、見ただけで何をしているのかわかるのかもしれない。例えば賢者だったり、研究していたり、学校にでも行っていればな。
魔法とは魔力を使い"何かの現象"を起こすことだ。
魔法はからきしなのでそれくらいしか知らない。
だから原理も分からない。昔、昔に誰かが「魔力は外と中で別だ」とか「直接的に物体へ干渉するのは難しいものだ」とか語って聞かせてくれた気がする。完璧に理解できていないためただの受け売りだが。
しかし、そうだとすれば宙にものを浮かせて跳ねまわし、人の頭を小突き、そのうえで寝そべり移動する、というのは……。いったいどんな精密な魔力操作なのだろう。案外と賢者の孫だったりするのかもしれないな。
そう考えるとノクファイトが一番弱いというのは本当かもしれない。
ちょっと見た感じ冒険者の中での腕は間違いなく優良なんだけどな。
自信を失うことのないように頑張ってほしい。




