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1 不老不死

設定もプロットもぶれにぶれて、さらに見切り発車です。更新が長く止まったり、のちに大きく改変する可能性”大”です。大まかな流れしか考えておりませんが、よろしければ。

 

 一人の男がギルドの窓口で依頼の達成報告をしていた。


短く切りそろえられた暗い茶の髪。切れ長の目は鋭くも柔和さを感じさせる。茶黒い革で作られた装備品は古びた趣でよく使われているものだとわかる。同じく茶黒の革で作られた腰ベルト、それに吊った装飾の一つもないこれまた暗い色の鞘、納められた直剣。鯉口から垂に伸びた柄などは全くの黒。ただ一箇所、男の左手甲の白銀、美しくも飾らない装飾の施されたそれがただ、著しく光を反射していた。


「こちらが今回の報酬となります」


 ギルド職員が、貨幣の入った麻袋と複雑なギルドの印が押された紙を出した。男は紙だけを受け取る。この紙は男の達成報告した依頼難度特有の報酬で、各地のギルド支部より特殊な援助を受けたり、素材を交換するために必要なものだ。かさばらなくて良い。


「その金はギルドで管理を頼む。それで、次の乙種依頼は」


 これもその援助の一つ”銀行”だ。

 そして次の依頼について聞く。


「最近では甲種乙種ともに依頼が少ないので、次回の依頼は先になると思います。町ごとでギルド支部に寄っていただければ、依頼が出来次第ご連絡いたします。それと、以来とは関係ないのですが近くの森林で殺人が数件起こっておりますのでお気をつけて」

「ああ、わかった」


 男はそれだけ言うと、職員から金色のプレートと、その殺人鬼の指名手配書を受け取りギルドを出る。



「どうしたもんか。依頼がなければ休暇かね」


 ふと、腰に帯びた剣を思う。手入れはしているが、結構な間本職に見てもらっていない。頑丈な素材で仕立ててあるためその必要をあまり感じなかったのだが、今回の依頼の魔物は甲殻の硬い種だった。そろそろいい時かもしれない。

 王都では親友が鍛冶屋を営んでいる。腰に帯びた男の愛剣、これの生み親だ。何年も顔を出していない気がするが、顔を忘れられてはいないと信じたい。

 今の町から王都まで一本道、歩いてもそう時間はかからないだろう。


「王都まで行ってみるか」


 予定へ向け、男は夕の町中を宿場へ歩いた。




  ___________________________________________________________




 夜の森林。

 少し街道を外れたところ。

 周りには数体の魔物と二人の冒険者の死体があった。

 しかしそれは魔物によるものではない。



「っ……。やっ、やめてっぇ」


 小型剣の刃が肌に食い込んだ瞬間、血がにじみ出る間もなく冒険者は物言わぬ肉塊となる。


「…………」


 血走った目で凶器を携えた腕を振るった女は息を切らす。木々の隙間から覗く満月を仰ぎ一つ大きく息をつく。落ち着くことはない。

 身、魂を焼く焦燥。

 苛立ちから拳を木に打ちつける。何度も、木に拳をぶつける。拳の皮は破れ、血が。

 女は顔をしかめた。

 手の痛みではなく、それをはるかに上回る、誤魔化せない心の痛みに。


 奪った数だけ楽になれるはず、そう、楽になれているはずだ。


 拳と握りこまれた短剣に赤い光がまとわりつき、次の瞬間には女の拳は元通りになっていた。

 赤光しゃっこうを纏う、禍々しい魔剣を一振り携えたこの女は



 不死者であった。



 ___________________________________________________________




 朝日が顔を出し始める頃、男は宿を出た。この町の露店が並ぶ通りの朝は早い。

 そのまま専門店が並ぶ通りへ行き食料などを簡単に買いそろえる。そこまでの長旅にはならないだろうがすこし余裕をもった分量を買った。

 それでも一人であるためそこまでかさばらない。男は荷物を下げ、


「よし、いこうか」


 そうつぶやいて町の入り口を出た。行先は大陸最大の都市、王都。徒歩での移動だ。ここはある程度の大きさの町であるため徒歩で移動しなくとも馬車が出ているし、ギルドで馬を借りることも出来る。それでも男は徒歩を選ぶ。

 一人旅というものは気ままなものだ。パーティを組んでいない冒険者は気ままであるべきだ。ならば移動は自由なものだ。乙種依頼を終えたばかり、ゆったりと歩くのも悪くない。空は青いしこのあたりは危険な魔物もいない。いたとしても男にはかなわないだろう。なんとも気持ちのいいものだ。このまま晴天で何もなければ一週間もかからないだろう。


 例の殺人者にでも合わない限りは。



  ___________________________________________________________




「……」


 けだるげにした男の足元には血だらけの女が倒れていた。男はこの女を殺していない。頭をちょっと殴った。失神するくらいに。

 仕方がなかった。日が暮れかけの両脇を木々に挟まれた街道。そこで急に女が切りかかってきたのだから。


 しかたない。

 正当防衛だ。

 強かったんだ。


 鋭い剣旋だったから、手を抜けば切られていたろう。

 うん……仕方ないね。


 だがこの血はなんだろうか。殴ったときに血が出たわけではないだろうし、怪我をしている感じもない。


 それにこの血、固まっている。


 ふと思い立ちギルドで受け取った指名手配書をとりだし特徴をくらべていく。整った顔立ちで美人。銀色の髪が首まで。


 殺人犯。


 女の顔を覗き込む。殺人犯だと確信できる。まだ起きる様子はない。指名手配されているような犯罪者ならギルドに突き出さなきゃならないだろうが前の町に戻るのは面倒だった。それに背負っていくことになる。……だが面倒だからといってほっとくことはできないだろう。

 ……とりあえずは縛っておく。置いていきたいがもう日が落ちている。どちらにしろここで野宿をしなければならない。


 …………この殺人犯、やっぱり美人だな。だからなんだという話ではあるが。


 手配犯の獲物、変わった剣を奪って鞄にしまい込む。万が一の反撃を防ぐためだ。

 禍々しい緋色の刀身に雪白の柄という妖艶な雰囲気を感じさせる剣。鋭角的なデザインで、片刃の刀身にもかかわらず、ぱっと見では諸刃と見紛うほど。不思議な雰囲気、魔剣なのだろうか。しかし触っただけでは何もおこらなかった。奪っておけば危険はあるまい。……おそらく。

 大丈夫だろうな。縄で縛って、剣を奪い、女を木に括り付けた。

 よし。


 簡易的な食事をして、そしてなにもなく、眠りについた。




  ___________________________________________________________




「っ!」


 腹を貫く異物感。眠りから覚醒するとともに激痛に襲われた。寝ている状態で吐血したため大きくむせる。


「がッ、ごフォぁ!!」


 男は異物感の正体を求め自分の腹に眼をやる。そこには自分が鞄へしまったはずの、女の緋色の魔剣が突き立っている。剣を押し込む、目の前の暗い瞳で見詰めてくる女。

 痛みに呻きながらも女の首を狙い右手で貫手を繰り出す。

 しかし


「っ……?」


 女が訝しげな顔をすると後ろへ飛びのく。その時、腹に突き立っている魔剣が抜けて血が吹き出す、はずだった。しかし瞬時に傷口が赤光を発するとともに傷の穴が塞がった。


「……」

「はぁっはぁっ、そりゃこっちの反応だがな……」


 どうやって縄から抜け出したのか。

 いや、いまはそれよりも傷が治るところを見られてしまった。

 口封じに殺すしかないだろうか。まだ痛み自体はのこっているし、深く刺されたからか”中身”までは治りきっていない。男は顔をしかめながらも立ち上がり腰に帯びた剣に手をかけた。


 そんなことを考えながら女とにらみ合いを続けていたが、先に女のほうが動いた。左手に握りしめた魔剣を突くように繰り出してくる。まるで当たれば勝ちだとでもいうように最低限の防御すらされていない。隙だらけだ。すこし不気味なほど捨て身の攻撃。


 男は抜刀とともに、捨て身であるがゆえの鋭さを纏う女の突きを上へいなし、返す勢いとともにそのまま女の左手へ刃を繰り出した。女は突きをいなされ、大きな隙をみせているにもかかわらず、また刃を前に突き出す。当然、女の左手に男の刃が食い込んだ。食い込んだ刃で女の手をさらに深く切りつけようとした男が異変に気付き一瞬、動きを止めた。女がその一瞬の逃さず、男の刃から手を遠ざけ、お返しだとでもいうように剣を握る男の右手首を浅く切り裂きながら後ろへ下がった。


 相対する二人の間は殺気の波がぶつかっているかの様なプレッシャーがある。


 そんな中、先ほどと同じ赤光が斬りつけられた男の右手首から発せられる。

 男の気づいた異変____それは、女の握る魔剣から似たような光が漏れていたことだ。その光が漏れだした瞬間から、血を流していた女の左手の傷周りには魔剣の発する赤光によく似た帯がまとわりついていた。そして赤光が消えたとき、女の手首から血が止まっていた。



「不死の光……」



 男のつぶやき。そして男はあっさりと剣を鞘に戻した。男が両手を挙げて肩をすくめる。

 まるで「戦いはやめだ」とでも言うように。

 それを見た女は


「なぜ」

「……なぜって。死なないんだろう?」

「……………………………………」

「……」


 あたりを静寂が支配した後、女も魔剣を鞘に収めた。


「不死者に会ったのは初めてで、すこし混乱してるんだが……。名前は?」

「…………」


 女はそらしていた視線を男の方へむけると鋭くにらみつけた。


「俺はリクだ」

「……エリス」


 エリスは名乗るとともにそっぽを向いた。リクは下を向いて考え込む。




 これが______________…………………。







 

更新は不定期です。前後の話を調整しながら作っているので遅くなると思います。

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