【興行】三宅美鈴、華山涼子デビュー戦
3月22日、東京、幸福園ホール大会
三宅美鈴・華山涼子デビュー戦 15分1本勝負
三宅美鈴 vs 華山涼子
「はじまりました幸福園ホール大会、実況は私瀬古、解説は週刊女子ゴングの吉田さんでお送りいたします。吉田女史、よろしくお願いします」
「はい、よろしくお願いします」
「まずは第1試合、デビュー戦の両名によるシングルマッチです。吉田さん、両選手の情報はお持ちでしょうか?」
「はい、取材してきましたよ。両名とも入団からデビューまで1年と、昨今の新人にしては遅いデビューですね。具体的に統計を取ったわけではないのですが、ここ10年ほどの女子プロレス界では入団から半年前後でデビューする選手が多いですからね」
「なるほど、下積みの長い両者というわけですね吉田さん!」
「そうですね。三宅選手が152センチ、華山選手が153センチ、体重もほぼ同じということで体格差はありません。すこし細いかなと思いますが、もしかすると体作りがうまく行かずデビューに時間が掛かったのかもしれませんね」
「なるほど。さあゴングが鳴ります」
新人らしくドロップキックやボディスラム正面からの組み合いなど、ベーシックな動きの組み立てで試合が進む。試合が動いたのは5分過ぎ。三宅がロープの反動を使ってのエルボーバットで華山を打ち倒す。そこから三宅がフォールに入るがこれはカウント2。ここで華山がゆらり、と立ち上がると、突然「アハハハハハハ!」と狂ったような笑いを上げて三宅にヘッドバッド、さらにコーナーに押し込んで連続ストンピングと攻勢をかける。最後はロープの勢いを利用したジャンピングニーバットを放ってフォール、カウント3が入った。
○華山涼子 (7分11秒、ジャンピングニーバット→片エビ固め) 三宅美鈴×
「ちょっと驚きましたね」
「それはどこがですか、吉田さん?」
「華山選手なんですが、道場ではどちらかというと大人しい、無口な子なんです。それがあの、まるで狂ったかのような笑いからのラフファイトを見せたところですね」
「なるほど、リングに上がると性格の変わるレスラーもいると聞きますが、華山選手がそれにあたるのかもしれませんね、他にはなにかありますか、吉田さん」
「二人とも基礎はしっかりしてたように見えました。これからに期待できそうです」
「ありがとうございます。では次の試合にいきましょう」
タッグマッチ20分1本勝負
望月登子&アヤメ vs MACHIKO&オリビア
「空手仕込みの強烈な蹴りを武器に若手戦線を牽引する望月選手、ここぞというところの畳み掛けに定評のあるアヤメ選手のチーム対、凶器攻撃を得意とするMACHIKO選手、オープンフィンガーグローブにキックレガースをつけたバチバチのストライカー、オリビア選手のチームという若手同士によるタッグマッチです」
「瀬古さん、一つおもしろい情報があるんですが」
「はい、なんでしょうか吉田さん」
「アヤメ選手は忍者風のコスチュームなわわけですが、この前の入団テストで、本物の忍術を学んだテスト生が入ってきたそうですよ」
「ほほう! それではアヤメ選手のいい後輩になりそうですね」
「キャラが被って食い合いになるか、共に進む同輩になるのか、はたまた別の結果が出てくるのか。興味があります」
「そうですね! さあ試合開始です!」
ドォン、と望月の重いミドルキックにMACHIKOの体がくの字に折れる。望月はMACHIKOの脚を払って尻餅をつかせると、さらにその胸板に向かって強烈な蹴りを叩き込む。
悶絶して場外に逃げるMACHIKOと入れ替えにオリビアがリングイン。望月はオリビアのパンチを掻い潜ってローキック、ミドルキック、ハイキックのコンビネーションでダウンを取っていく。
さらに逆エビ固めでオリビアを攻め立てる望月。MACHIKOがその背後から望月の後頭部にゴングを鳴らすための木槌を持ち出してきて振り下ろそうとするも、レフリーに見つかり注意されてしまう。木槌を取り上げられたMACHIKOだが、レフリーが木槌をリングサイドの本部席に戻すためにMACHIKOから目を離した瞬間にコスチュームの中からハサミを取り出し、刃を望月の額に押し付けて流血させていく。これには望月ファンから悲鳴とブーイングが飛ぶが、MACHIKOはむしろ誇らしげにブーイングを受けていった。
血が目に入った望月が一旦戦線離脱。アヤメが孤軍奮闘することになる。しかしフォールを取られそうになるとうまく切り返して逆にフォールし返すなど、押されながらも試合は決めさせないアヤメ。とうとう望月が復帰すると、蹴りの速射砲から、コーナーに飛び乗った勢いでそのままコーナーを蹴ってジャンプ。そのままMACHIKOの後頭部へ蹴りを叩き込む得意の三角飛び延髄蹴りで試合を決めた。
○望月登子 (12分9秒、三角飛び延髄蹴り→体固め) MACHIKO×
シングルマッチ20分1本勝負
豊嶋奈美 vs 前田麗子
「さて、同期のライバル対決です! どう見ますか吉田さん」
「そうですね、過去何度も組まれているこのカードですが、やや豊嶋に分がある結果となっています。しかし前田も負けず嫌いですから、負け越しているからこそ負けられないと気合いが入っているのではないでしょうか」
「なるほど」
「この二人は業界ナンバーワン団体の大日本女子プロレスからの移籍組。デビュー当初から才能を認められていましたが、シャングリラ旗揚げに際して大女からの移籍組。驚きの引き抜き劇と言われまして、移籍後も順調に力をつけ、今では上位陣に喰らいついています」
「そうですね、エースの座を狙いあう二人の意地がぶつかります。さあ試合が始まります!」
ゴングと共に両者走りこみ、互いにドロップキックを放つ。相打ちと見るやすぐさま起き上がってロックアップ。視線がバチバチと交錯する。
豊嶋の打点の高いドロップキックと、前田の飛距離の長いドロップキック。豊嶋のブリッジの利いたジャーマンスープレックスに前田の切れ味鋭いフライングニールキック。両者とも持ち味を活かして攻め、また攻撃を受けきる意地のぶつかり合い。試合の決着は技の引き出しが多い豊嶋のジャパニーズ・オーシャン・スープレックスホールドであった。
○豊嶋奈美 (14分39秒、JOスープレックスホールド) 前田麗子×
タッグマッチ30分1本勝負
ヴァイス高峯&ディアナ vs 松井香織、芹沢すずな
「セミファイナル、赤コーナーのヴァイス高峯とテキサスから参戦のディアナに対するは、松井香織と芹沢すずなの、お馴染みシャングリラ最強タッグ『ダブルドラゴン』です! 吉田さん、この試合の見所はどこでしょうか」
「そうですね、やはりチームワークではダブルドラゴンが圧倒的でしょう。高峯選手がどちらかというとタッグを苦手とする……というか、マイペースですので、ディアナ選手の頑張りが重要になるかと思います」
「ありがとうございます。さあ、選手入場です!」
積極的に技を繰り出していくディアナだが、優勢になりそうなところでツインドラゴンのカットが入り流れをつかめない。力任せに無理やりに狙ったデスバレーボムも芹沢に丸め込まれてしまうなど、攻めあぐねてしまう。そして最後は芹沢が、ダブルアームに固めてサイドに落とす変形の高角度DDT、レッドドラゴンドライバーで決着をつけた。
○芹沢すずな (14分48秒、レッドドラゴンドライバー→片エビ固め) ディアナ×
メインイベント タッグマッチ30分1本勝負
氷室いずみ&リリス渡部 vs ミシェル・インフェルノ&レーナ・グリフィス
「さあメインイベント。タッグマッチ、シャングリラ無差別級シングル王者の氷室が、前王者ミシェルとそのパートナーであるレーナとのタッグ、『セイクリッド・ファイア』を迎え撃ちます」
「渡部選手がこの中ではやや実力が落ちます。ただミシェル、グリフィス両選手の標的は氷室選手でしょうから、その隙をつけるかどうか、というところでしょうね」
「分かりました! 渡部選手の奮闘に期待しましょう!」
解説の予想に反して、序盤から渡部をいたぶるセイクリッド・ファイアの二人。しかしフォールには入らず氷室を挑発する。ぐったりとした渡部に悠々と近寄るミシェル。ところが一瞬の隙を突いて渡部が膝十字固めにとり、一矢報いていく。氷室はタッチを受けると、渡部の仇とばかりに蹴りを放ち、またマウントを取ってパンチを叩き込んでいく。
氷室は気を吐くが、序盤にやられすぎた渡部がカットに入れず、セイクリッド・ファイアにはカットを許してしまう苦しい展開。最後は氷室が場外でミシェルに捕まっている間に、グリフィスが得意のスコーピオン・デス・ドロップ(リバースDDT)で渡辺を沈めた。
○レーナ・グリフィス(16分22秒、スコーピオン・デス・ドロップ→片エビ固め)リリス渡部×
試合後のミシェルはマイクを持ち、「ワタシはシングルだけでなくタッグでも強い。ヒムロイズミ、お前もまともなパートナー無しで勝てると思うなよ?」と不敵にアピールを行っていた。
キャラクター名鑑 vol.4
リングネーム:望月登子 本名:望月登子 身長:159センチ 階級:中量級
得意技:三角飛び延髄蹴り、ハイキック 出身:神奈川県 スポーツ暦:空手
概要:シャングリラ1期生。重く鋭いキックを武器に、若手戦線で活躍を見せる期待の星。特撮ヒーローが好きで、日曜朝のヒーロータイムがなによりの楽しみ。