【興行】鮮烈デビュー、久保渚
7月4日、博多サンレーン
第3試合 シングルマッチ20分1本勝負 前田麗子 vs 久保渚 ※久保渚デビュー戦
「さあ会場も盛り上がってきたところで第3試合がまもなくゴングです。この試合のゲスト解説は本日メインイベントを控えます松井香織選手にお願いしております。よろしくお願いします」
「よろしくお願いします」
「さて松井選手、まずはデビューの久保選手といえば、アマチュアレスリングではインターハイ、インターカレッジ共に制覇したアマレス界のホープ。その彼女をシャングリラがプロレスに引き抜いたと聞いております」
「はい、そうですね。久保のプロレスへの適正を見込んだウチのスカウトが、熱心に通いつめて説得したんですよ」
「よく説得しましたね」
「そう思います」
「松井選手から見て久保選手はどういったレスラーでしょうか?」
「アマレスの実績があるのは伊達ではないですね、特にグラウンドのスパーリングではキャリアの長いレスラーでも相手にならないくらいです」
「おお、さすがアマレス強者といったところでしょうか」
「他には筋トレが好きで放っておくといつまでもやってますね、入団してからはアマレスと違って体重制限がなくなったからか、かなり筋肉を増量させてます」
「パワーにも期待が持てる、ということですね」
「入団から3ヶ月少々でデビューにゴーサインが出たのは、それだけ体と技術がついているからです」
「期待いたしましょう。一方で迎え撃つ前田選手ですが」
「怒ってましたね」
「怒っていましたか。それはやはり?」
「ええ、デビュー戦の相手、しかもシングルですからね。自分がなぜ相手をしなければいけないんだと。確かに普通の新人ではなかなかないようなマッチングですが……」
「久保選手は普通ではない、と」
「ですね。前田も甘く見ていると足元をすくわれかねませんよ」
久保、前田双方がリングイン。久保がふてぶてしく握手を要求するが、前田はこれを無視する。久保は肩をすくめてコーナーに下がる。
「さあ握手を無視しました前田選手」
「まだ機嫌悪いみたいですね」
「そうですね。さあ今、ゴングが鳴りました! まずは正面からロックアップ! おおっと前田選手押し込まれる!」
「前田は確か体重が60キロ無いくらいだったかな?久保が70キロ越えていたはずだから、やはりこの体格差の影響は大きいですよ」
ロープまで前田を押し込んだ久保、ここはレフリーの指示に従ってクリーンブレイク。
「久保選手堂々とした立ち上がり、デビュー戦ですが固さは見られませんね」
「新人らしくないですね。おもしろくない」
「面白くない、ですか」
「前田にちょっと懲らしめてもらいたいですね。ふふっ」
松井の言葉通り、前田はアームドラッグで久保を放り投げると、起き上がった所にスピードの乗ったドロップキック、久保を場外に落とす。そして間髪いれずロープに走って反動をつけてのトペ・スイシーダ!
「素晴らしいスピードのトペです、前田麗子の空中殺法炸裂!」
「そうそう、それでいいのよそれで」
スピードと手数で押していく前田。一方的な試合になりかけていたが。
パァン、と高い音を立てて久保の逆水平チョップが前田の胸元に叩き込まれる。この一撃で動きを止められる前田。久保はその前田を捕まえると、アルゼンチンバックブリーカーに担ぎ上げる。
「さあ久保が担ぎ上げた前田を揺さぶっていく! さらにその体勢のままジャンプ、着地の衝撃で前田の背骨に大ダメージだ!! さあ、久保がフォールに入る!」
「ぬいぐるみ持ち上げてるのかってくらい軽々と上げてましたね、あの筋肉侮れないわ」
さらに畳み掛けようとする久保は、前田を引きずり起こすとロープで反動をつけてアックスボンバー! しかし前田、久保の腕をフロントキックで迎撃するとジャンピングハイキック、ファルコンアローと畳み掛ける。
序盤で攻め疲れたか久保は反撃するも単発にとどまり、最後は前田のフェイバリットホールド、バルキリースプラッシュが炸裂。久保、これは返せず3カウント。
ゆっくりと体を起こした前田は、久保に手を差し出す。大の字で大きく息をつく久保は上体を起こすと、にやりと笑みを見せてその手を取った。
「前田に対して臆することなく挑んだ久保、惜しくも破れましたが、いやあ新人とは思えない試合を見せてくれました」
「ほんとうですね。これは若手戦線に大きな爆弾が落ちてきたようなものでしょうから、今後が楽しみです」
「鮮烈デビューの久保渚に、会場からは大きな拍手が送られています」
○前田麗子 (9分10秒、バルキリースプラッシュ→体固め) 久保渚×
キャラクター名鑑 vol.7
リングネーム:久保渚 本名:久保渚 身長:168センチ 階級:重量級
出身:神奈川県 スポーツ暦:アマチュアレスリング
得意技:アックスボンバー、アルゼンチンバックブリーカードロップ、逆水平チョップ
概要:アマチュアレスリングではインターハイ、インターカレッジの体重別で優勝したアマレス界のホープ。だったが、そのスター性に目をつけたシャングリラがスカウトした。本人もアマレスよりさらに体をぶつけ合うプロレスというものに興味を抱き、入門にいたった。
可愛いぬいぐるみに目がない。