コミュ障とメイド喫茶
普通に生きることが普通だ
これまで『普通』という言葉を何も気にせずに使ってきた。
クリスマスの季節になり、駅の周りはイルミネーションでキレイになっていて、彼女のいない自分が少し場違いだと感じる。それにとても寒く外には出たくはなかったが、桜木が珍しく遊びに誘ってきたので、外に出た。
桜木と休日、遊ぶ時はほとんど俺から誘う。そしてほとんどに断る。理由はなにか予定があるとかではなく、「面倒くさい」だからである。それも桜木のある意味いいところだと思って受け入れている。
「それにしても、遅いな」
約束の時間はとっくに過ぎている。この寒い中、一人でいるの本当に辛い。近くのカフェで時間をつぶそうと考えたが、すでに席が埋まっていた。桜木は人前で笑うことがあまりない。それは、人に愛想笑いをあまりしないからと考えている。学校でグループワークするときも、愛想笑いをせず、もくもくと与えられたことをやる。俺は、それを「悪いこと」だと根拠もなく思っていた。ただ、最近はそれもありだと考えるようになった。
「自分が笑いたい時に笑えばいい」
誰にも聞こえない声でつぶやいた。
「何つぶやいて」
桜木がいきなり現れた。いつもどうりの下を向いたまま、話かけてきた。
「なにも言ってないよ、それより遅刻だ」
「電車のせい」
と悪気もなく言った。
「よし、行くか」
と目的地をい合わずに歩きだした。桜木がどこに俺を連れて行くのか、少しわくわくしていた。桜木は基本的に下を向いてたので、人にぶつかりそうになる。だがぶつからない。
メイド喫茶の前について、桜木は黙って入っていった。
「おい、桜木?」
「いらっしゃませ。ご主人様」
とメイド服をきた同年代であろう人達があいさつしてきた。そのあとはほとんど覚えていない。いや、あまり思い出したくない。正直楽しかったが、思い出したくない。
「ああ、楽しかった」
と桜木は言って、笑っていた。
「じゃ、帰るは」
と言って、桜木は駅へ消えていった。