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コミュ障と大学生活  作者: 片嶋 耕也
3/5

コミュ障とグループワーク

 教室で後ろの奥に座っていた桜木は、機嫌がいいのかわるいのとも言える顔で本を読んでいた。

「おはよう」

「今週の『ガクソウ』面白かったな」と俺の挨拶を無視して、アニメの話をしてきた。桜木と俺はアニメ鑑賞という共通の趣味があることを仲良くなっていくうちに知った。そのおかげか分からないが、桜木から話題を振ってくるようになった。

「今季いちのアニメだよ、あれは本当に。あぁぁ、どうしようグッズ買おうかな、いや買う」

携帯を取り出し、桜木はグッズ探しに夢中になってしまった。こうなってからは、話かけても無視されるのがおちだ。だから俺は本を読んだりして会話はしない。俺はこいつの横ではあまり本を読みたくない。なぜなら「本をそんなに読んでも意味あるの」と小ばかに桜木がしてくるからである。桜木もよく本を読むのにだ。ただ今は、グッズ探しに夢中になっているので遠慮なく読める。俺がバックから本を取り出そうとしたとき

「あっそうだ、今度アニ研に行こう、なかなかよさそうなところだよ」

と桜木がグッズ探しをしながら言ってきた。俺と桜木はまだサークルを決めていなかった。今までいろんなサークルを見てみてよさそなのがなかった。(もちろん、俺と桜木にとって良いものがなかっただけである)俺はもうサークルに入ること自体を諦めていた。だから断った。

「なんで、どうせ今日暇だろう」

「暇だけど、サークルはいいやもう」

「ふーん、わかった一人でいくよ」

講義が始まり、この会話は終わってしまった。


 今回の講義はグループワークである。これは「コミュ力」必要である。そのグループで「コミュ力」が高い人が1人いればたいていは失敗はしない。このグループワークでは、それぞれのグループに任された時事問題をまとめ、解決策をグループで見つけて提出することが課題である。

「じゃ、まず自己紹介しよう」

といかにもリーダーシップを取りそうな人が切り出した。彼は、別に気取ることもなくうまく進めていっていた。

 その中で桜木は意見は言っていたが、下を向いていて人と顔を合わせよとしなかった。俺は桜木のこの態度に慣れていたが他の人はそうではない。

「桜木君、大丈夫?ずっと下向いてるけど」とジャージ姿の女子学生が桜木に聞いた。もちろんその子に悪意はなかった。

「平気、続けよう」

と桜木は素気なく答えた。その答えと答え方に他のグループメンバーは、少し苛立っていた。少し気まずい空気になり、グループワークが止まりそうになったので

「俺はこの問題はほかの視点から考えてみるべきだと思う」

と俺は無理矢理、課題の方向に持っていた。そのあとは、リーダーがうまくまとめ課題を終えることができた。

 「はぁー、桜木、もう少し人と話すときぐらい、下むくのやめな」

「なんで」と苛立ちを隠さずに言ってきた。

「みんなやってるから」

「みんなやっているから正しいって意味?」

「まぁそうかな」

「おれはそうは思わない。別に下向いていようがきちんとグループワークはできるしなんも支障はない。」

「いや、あったしそこは問題じゃない」

と学食で昼休憩が終わるまで話した。


 その日桜木は一人でその研究会に行き、そこのサークルに入った。ただ一週間も続かなかった。その理聞くと「合わなかった」と言った。

 しかし俺は、桜木はそのサークルに自身を合わせようしなかったのが一番の理由だと思った。桜木は人やグループに簡単に合わせよとしない。これが「コミュ障」の一つの特徴だと思う。合わせたらより人間関係が良好になれると俺は考えている。しかし、桜木と話しているとこの考え方は何か違う気がしてくる。桜木は別に不幸ではないのだ。「コミュ障=不幸」ではない。俺はそう考えるようになっていた。


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