表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
食材世界  作者: 坂戸樹水&十月由弥
3/4

 それからの私は忙しかった。

晴れた日には光をいっぱい浴びなきゃならないし、ハウスの皆との親睦会とか目白押しで、

赤に磨きはかかったけれど、やっぱり『お前は甘いだけだ!』とレモン上司に怒られて、

それでも時間があれば、たまごチャンとたまご君の事を考えた。しつこいけど。

彼らは私の大事な友達だから。


 でも、それは取り越し苦労でした。



「私達、付き合う事になったの!」



 たまごチャンからの報告。

突然の事に私は面食らった。ちょっとだけ、青褪めた。


「……えっとぉ、たまご君と?」

「ええ!」


 他に誰もいないのだけど。聞くまでもないのだけど。

暫くの激務で良い具合に赤く染まったと云うのに、天辺の部分が少しだけ黄色に戻ってしまった。

たまごチャンはそれに気づいてない様子だから良いけど……

ただ、すごく驚いたんだ。だって、


「たまご君とは会って間も無いけど、告白された時は驚いたけど、

きっと仲良くなれると思ったから、付き合う事にしたの。

これも全部、プチトマトちゃんのお陰! 本当にアリガトウ!」

「ぃ、いえ……それは、何よりです……」


 驚き冷めやらず、上っ面だけの私。


 恋愛に時間は関係ないとは思うけど、たまごチャンとたまご君は出会って2週間で、2人きりで会ったのはたったの2回程。


 だから、何と云うか……


 ――浅はかだな。と。


 勿論、たまごチャンと たまご君は良い人だ。とっても良い人だ。

私みたいなプチとも仲良くしてくれる、美しいたまご達だ。

だから、直ぐに魅かれ合うのは分かる。解かるんだ。


 だけどね、



『やっぱり、私の中身を分かって貰いたいわ』



 この言葉が、私の小さな胸に引っかかるんだ。


 たった2週間で中身を分かって貰えたのかな?

たまご業界の1日って、野菜業界より長いのかな?

いや、そんな事より……意外に、たまごは中身が無いのかも知れない。

いや、違くて……中身を解かって貰ってから付き合うのか、

中身を解かって貰う為に付き合うのか、その違いなんだろうな。


 私は、出来るだけ解かって貰ってから付き合いたいかな。

だって、そうしないと、別れた時には『相手が自分を解かってくれなかったから』……何て、自己中な事を思ってしまいそうだから。

まぁ、これはあくまで私の考えで、恋人として付き合いながらお互いを知るのも、発見の多い楽しい交際の1つだと思ったりもする。


「これから、楽しい時間を過ごせると良いですね!」


 冴えない祝辞だけど、『きっと上手くいきますよ』とまでは云えないから。


 たまごチャンとたまご君の事は、

 たまごチャンとたまご君よりも、

 友達として付き合いの長い私の方が知っているくらいなのだから。


 考える度、グジュグジュと音を立てて、緑色に変色して行く。急速に。

もしかしたら、私の中身は緑色の気持ち悪い物体が詰まっているのかも知れない。

そう考えたら気持ち悪くなった。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ