メシア
「あ~ぁ、なんて退屈な授業なんだ。」
みんなが、授業を真剣に聞く中、少年は、窓の外に
視線をやり、校庭から体育館そして駐輪場へと・・・その時
「お-い」
窓の外から少年を呼ぶ声が聞こえる。
教室のみんなには、聞こえないのか
それとも、授業に集中していて聞こうとも思わないのか?
そんな事を考えながら、少年は、その声の主を
必死に探すが見つからない。
「お-い、ここだよ!」
「えっ?」
「上だよ。ず~っと上!!」
少年は、フッと空を見上げると、そこには、UFOが浮上している。
しかも、そのUFOとは、誰もがみんな想像する程の
月並みで典型的なUFOだ。
その中から虹色の光線と共に出てくる生物も又
一昔前の映画に出てきそうな、タコ型の生物だ。
「・・・で、でも、宇宙人? いや、そんな事はない。
だって、もう既に22世紀に入り、太陽系は、もとより
その周り数億光年と地球の最先端テクノロジ-を駆使しても
見つからなかった宇宙人がなぜ?
しかも、なんで日本の、ましてや僕の所なんかに・・・」
「少年よ、何をゴチャゴチャと言ってるんだ。
現に私は、ここに居るし、ここに来た理由は、ある重大な指令
を受けて来たんだよ。」
「えっ!!じゃ-本物の宇宙人!?」
「ま-地球を基準に考えれば、宇宙人であるのは、確かだよ。」
「いっ・・いったい何をしに?何でここに?」
「ま-ま-、そんなに急ぐな。時間は、タップリとあるんだ。」
「え!時間?」
「いやいや、こっちの話しだよ。
いいか、少年よ、これから10分間だけ全世界の時間を止めてやる。
その間、お前は、地球の王様だ!誰に気兼ねする事なく、何をやっても
何処へ行こうが、お前の自由だ。」
「はぁ~?指令って、そんな事。」
「もちろんだ!」
「いったい何の利益が有って、こんな馬鹿げた事を?」
「ばっ馬鹿げた事だと!我々宇宙を基準に考えれば、お前達の学校や
会社それに朝起きて、夜に寝る行為こそ馬鹿げていて、何の利益にも
ならない事なんだぞ!!」
「ふ~ん。宇宙を基準にね~」
「まあいい。地球人には、この指令の重大な意味がわからないのは
当然だ。じゃ-存分に自由な時間を楽しむがいい。」
宇宙人は、話しが終わるか終わらないうちに、あっという間に空の彼方へ
と消えて行ってしまった。
「何か、忙しない宇宙人だったな-。本当に時間を止めたのかな?」
少年は、教室を一望する。
確かに誰もが、動かない。先生も黒板とお見合いをしたまんまだ。
黒板の上の時計は丁度「2時」を指している。
「あの時計が2時10分になるまでが、この世界の王様らしい。
と言っても10分間じゃ-せいぜい、この教室の王様でしかないけど。」
少年は席を立ち、隣の人の顔を覗き込も。
顔の前で手を振ってみるが、何の反応も無い。
「ヒュ-本当に動かないでやんの。へっへっへっ・・・この間に憧れの
ミッチャンのパンツでも覗いてやるか。しかし、しけた王様だよな。」
少年はミッチャンの元に近寄り、顔を覗きこむ。
みっちゃんは、無言のまま、ある一点を見つめている。
その時、少年の頭になにかが、よぎった。
「あっ!!待てよ。もしかして、みんな、動けないだけで意識は
ちゃんとあるんじゃないか!?もしそうだとしたら、ミッチャンは、おろか女子全員に軽蔑されてしまうじゃないか!?
で、でも、本当に時間が止まっているのかもしれないし?
クッ、クソ~これじゃ-王様といったて何の意味も無いじゃないか~!
時間だって、あまりにも少な過ぎる!だいたい、あと何分残って
るんだ?」
少年は、黒板の上の時計を見上げた。
「あっ・・あれ??時計は、まだ2時を指したまんまだ?
あれから、少なくても2、3分は、たっているはずなのに・・・・
もっもしかして!時間が止まるという事は、時計自体も止まってしまう
という事なの?
イヤ、時間そのものが・・・全ての時間が止まってしまうという事なの
か・・・
もし、そうだとしたら、一体何を基準にした10分間なんだ。
きっ・・基準!!
も・も・もしも宇宙を基準とした10分間だとしたら!?
な、なんて事だ!・・・
お~い。誰か~居ないのか!?
誰か~ 助けてくれよ~
頼むよ!・・・お~い・・・・・
・・・・・・・・・
「しかし、校長先生、何も巨額な資金を費やし、生徒一人の為に
あそこまで・・・」
「何をおしゃいますか!!これは、国家プロジェクトですよ!!
今や22世紀に入り、生徒達は、一切感情を持たずに退屈な授業も
真面目に聞いて、何の疑問も持たずに社会に出て
これまた、退屈な仕事も真面目にこなす。平均化された人間ばかり
じゃないですか。
このままでは、人間社会は崩壊ですよ。
そんな中、私は、何千人という生徒達から、ついに発見したのです。
退屈な授業を素直に退屈と感じる感受性。あのヘンテコなUFOや宇宙
人を本物と思い込む想像力。そして、本当に時間が止まったかどうかを
疑う猜疑心。
彼こそ、本物です。彼こそが、世界のメシアなのです!!」
これから、このビデオを文部省に提出して、彼を支援する組織会議を
開き、国家レベルで、この少年を育成しなければ。
さっ-忙しくなるぞ~!!」
学生時代に授業を受けながら
もしも、こんな事が実際におきたら!?なんて思いながら書きました。




