表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
碧~深き記憶~  作者: 美彩
プロローグ
1/9

プロローグ

第一章  プロローグ


プロローグ


出会いと別れは当たり前のようにやって来る。


当たり前だからその記憶もいつの間にか忘れ去られていく。

だからいっときの感情に流されることなく体裁を保って人は生きている。


そうしなければいけないし、そうする事が自分を守ることだと知っているから。


新しい出会いが自分を成長させてくれるなんて、本の中だけの事だし、そんな事を言う奴は大抵綺麗事を並べているだけだ。


いやもしかしたらそう言ってる人も自分を守るための言葉なんかもしれない。


だからこそ薄っぺらな表面だけの感情と体裁が私には似合っているし、私を守ってくれている。


記憶なんて何時かは消えてなくなってしまう物。


それなら今を楽しく生きればいい。


身の丈にあったごく普通の当たり前の現実の中で、私の薄っぺらな人生を送ることが今の私に見合った生き方。


だから情熱だの熱い心だのそんな物はどこかに捨ててしまって、私なりの道を歩いていく。


そう思っている。


一歩進むたびに増えていく何かにいつまでも怯えているのは辛く怖いから、何かに執着したり思いを深くすることは怖いから・・・・


あの碧い海のような深い感情は、私を苦しめ滅ぼすから・・・


だからこの平凡で薄っぺらい人生を歩んでいる。


そう信じて・・・・・

優しい春の風が頬をなでていく。

ふと見上げると、青く綺麗な春の快晴が空を埋め尽くしていた。

ザワザワと胸が高鳴り出す。

私は慌てて胸を抑え視線を地面に写した。

無機質なアスファルトが目に映る。


(・・・・・)


ひらりひらりと舞い落ちた桜の花びらが、私が視線を落とした先に舞い落ちる。

それは必死に抵抗する私を嘲るようで・・・


そんな情景なんて要らない。


今の私には必要ないもの。


春の陽気に浮かれ気味の人々が私の周りを通り過ぎていく。

優しい風も暖かい陽射しも綺麗な花びらでさえも、覚めた心を取り戻してはくれない。


あの日私は知ってしまったから。

深く強い感情は、自分を傷つけ心を壊す。


だから私はもう決してこの陽気のような感情は持たないと決めたから。


ゆっくりと顔を上げ視線を前に移す。

明るい陽射しも舞い落ちるピンクの花びらも、色あせ温もりを失っていく。

笑顔で通り過ぎていく人たちも・・・・


いつもの日常。

私の日常。


私はゆっくりと歩き出した。自分の一日を歩くために。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ