表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/2

未来予想図が見つからない

 十字三丁目のドーナツカフェの天井――空にみたてた天蓋からは、作り物の月やら猫やら気球船がぶら下げられている。僕は玩具の猫の黄色い眼を睨み付けながら、盛大な溜息をついた。

 まるで、世界中の不幸がここに吐き出されたみたい。

「まるで、この世が終わっちゃうみたいな溜息ね」

 見上げると、赤い髪の背の高いウェイトレスが僕を見詰めて笑っていた。

「えっと、ゆりあさん?」

「残念。ゆりあはあっち」そう言って、彼女は楽しそうな顔をしながら、親指で後ろの方を指差した。

「あたしはまりあ」

 違いがわからない。

 もう何度目の間違いだろう。このカフェにウェイトレスは五人いるのだが、五人全員が同じ容姿なのだった。店主は顔を覚えるのが苦手らしく、同じ顔の五つ子のウェイトレスに大満足のようだ。

「どっち行ったらいいんだろう」

 僕はまた溜息をついた。

「場所がわからないなら、交番いきなさいよ。店出て右側だから」

「違うんです。僕の正しい道はどこなんだろう、って。……明日進路相談なんです。僕はどこに行ったらいいでしょうか」

「なるほどね、でも、それはきいちゃダメよ。少年が正しいって思うことが正しいのよ」

「どういう意味、ですか?」

 僕は眉をひそめた。

「確かに犯罪に手を染めちゃう人は正しいとは言えないわよ?でもね、そうじゃなかったら、正しい正しくない生き方なんてないの。自分が良いか悪いかじゃないかしら」

「そういうものなのかな」

「ところで、良い男の見分け方って知ってる?」まりあさんは腰を屈め、僕に耳打ちした。

 何故ここで良い男の見分け方?

 だいたい、僕にわかる訳ない。

「お金持ちとか、優しいとか……?」

「話して心地よい声かどうか、よ。いくらお金持ちでも、器量がよくても、一緒にいて安らがないなら、その人にとっては良い男とは言えない訳。いくら、回りが良い人って言ってもね」

「たしかに、そうかも……」

「少年の将来にしてもね、立派な肩書きのある職業につくのが正しいとも限らないのよ。自分で正しいと感じるものを選ぶしかないの。手助けは出来るけれどね」

 まりあさんはにっこり笑った。

「さっき、僕の将来を占ってもらったんです。同じ学校の占い少女に」

 僕は目の前のココアの入ったカップに触れながら言った。

「うん?アリエちゃんだっけ?」

「はい、あたしに聞くな、って怒られちゃいました」

「まぁ、ね。人間って誰かに決めてもらうと安心なのよね」

 まりあさんは思い当たるふしがあるのか、ゆっくり頷いた。

「去り際、不機嫌そうに、“あなたは将来、必ず死にます”って言われました」

「確かにっ……」

 まりあさんは思い切り笑いを堪えている。

「じゃあ、それまでになんとかしなきゃね」

 僕は笑顔を作りながら頷いた。




 三十分後、僕が席を離れ会計にカウンターの前に立った。お釣を僕の手に落としながらウェイトレスが僕に話しかけてきた。

「道案内はお姉さんの得意分野だけどね。目的地がなきゃ出来ないの」

「君が行きたいのは何処なのか。それがまず、問題」


――僕が行きたい場所。


 僕にしかわからない素敵な場所。それを、探していかなきゃいけないんだ。

「そうですね」

 僕は笑顔で大きく頷くと、軽い足取りで街中へかけていった。


(未来予想図が見つからない/了)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ