表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR

『素直になれてたら』

作者: ミオ
掲載日:2026/07/30

「愛してるよ。」


その一言は、結局最後まで言葉に出来なかった。


代わりに口から出てくるのは、文句、ため息、皮肉気味な冗談。


「別に。」

「好きにすれば?」

「あなたが悪いでしょ。」


本当は違った。


「もっと私を見て。」

「寂しい。」

「そばにいて。」


その全部を、いつも違う言葉で伝え続けた。


彼は何年も、その暗号を解こうと努力した。


けれど、


「やっぱり、私たち、あわないよね。」


その一言を聞いて、彼の中では全てが終わった。


離婚届に判を押した日も、

彼女はどこかで思っていた。


娘のために、この人は結局私から離れられない。


だから、いつか戻れる。


そう思っていたが、連絡はこなくなり、自分の用以外で、彼が私たちの前に顔を出すことはなかった。




しばらくして、

新しい彼氏ができた。


でも、心はどこか満たされなかった。


笑っていても、

誰かと旅行に行っても、

誕生日を祝ってもらっても。


ふとした瞬間に思い出す。


元夫なら、どう言っただろうか。


元夫なら、こんな時どんな顔で笑っただろう。


彼氏を好きなつもりだった。


でも、本当に欲しかったのは、失った居場所だった。


愛していたのか?


そう聞かれると、彼女はうまく答えられない。


愛だった。


でも同時に、執着、でもあった。


私を理解してくれているはずの人だった。


何をしても離れていかないと思っていた人だった。


その人が、自分のいない人生を幸せそうに歩いている。


受け入れられなかった。


彼氏が「愛してる」と言うたび、心のどこかで比べてしまう。


元夫は、もっと私を愛してくれていたよ。


その"過去の愛情"だけを抱きしめながら、今の恋人にも、自分の未来にも、ちゃんと向き合えないでいる。


失ったのは、夫ではない。


言葉にしなかった、私の中の愛だ。


けれど人は、愛を失って苦しむのではない。


人が苦しみ続けるのは、伝えることの出来なかった愛が、永遠に届くことはないと悟った時だ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ