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第五話

ステータス画面の外へ連れ出された人は前世で享年30歳だった男性。

これからすこ~し、BL要素が入ります。

苦手な方は回れ右してください。


一人称(ステータスの中)私→(実体化)俺







システムの防壁が消滅した瞬間、俺、佐藤は久しぶりに「重力」を感じ、地面に叩きつけられる━━━━ことはなく、汚れたビジネススーツ越しに人の温もりを味わった。アルタの力強い腕がしっかりと俺を抱きしめたからだ。半透明のウィンドウではなく、血の通った、肉の塊としての体を。


「がはっ……げほっ、げほっ!」


喉が鳴る。肺が空気を吸い込む。肺に流れ込む生々しい空気の冷たさに、俺は激しくむせ込む。

目を開けると視界に映るのは、エラーを示す赤いウィンドウではなく、アルタの頼もしい胸。


「……あ……ああ、本当に……見つけた……そこにいたんだね、サトウさん……」


震える声と共に涙が上から降ってきた。

見上げれば、記憶を完全に取り戻したアルタが、ボロボロと涙をこぼしていた。


「つかまえた……。今度こそ、逃がさない……っ!」


「お、おい……アルタ……やめっ」


顔を横に向けて、鏡に映っている自分の姿を見る。


「……最悪だ。この姿かよ」


俺は掠れた声で毒づく。


鏡に映るっていたのは安物のスーツを着て怯える「30歳の佐藤」の姿だった。

夜遅く仕事を終えて、帰宅する途中。光り輝くトラックのライトを見た直前の姿。顔は連日の残業でクマがひどい。

細い美少女でも、神々しい女神でもない。30歳の男だ。



「驚いただろ!これが、勇者が夢にまで見た俺の正体だ。お前が恋焦がれてたのは、ただのくたびれた冴えないおっさんだ。……さあ、幻滅して、さっさと魔王を倒しに行け。さあ、早く――」


暴れてアルタから離れようとした。

30歳の運動不足の体は───まあ30歳出なくても──最強の勇者に力で叶うわけ無い。


言いかけた言葉が、力任せにさらに抱き寄せられた衝撃で消し飛ぶ。


彼は俺の背中に腕を回して、骨が軋むほどの力で抱きしめる。痛い、痛い……!!



「サトウさん……男の人だったんだね。……でも、関係ないよ。あなたが僕を助けてくれた、僕を叱ってくれた……あなたが、僕の愛した人なんだ。正体が男だろうがおじさんだろうが、そんなのどうでもいいんだ! 僕の頭の中にずっと響いてた、その『声』。……全部、僕のものだ!」


「だーかーら、落ち着けって。おい、放せっ! 30歳の男を抱きしめて何が楽しいんだよ!やめろ、これを!!」


俺は諦めず、腕をじたばた振り回す。


「ねえ、声で僕の名前を呼んでよ……。アルタ、って呼んで。……それだけで、僕は何だってできるん……ああ、なんて……なんて愛おしい人なんだ」


アルタの瞳は、真っ黒な執着の色に染まっていた。


「もう、画面の向こうには帰さない。……この世界に僕だけの佐藤さんを残しておくんだ」


「待て、これは拉致だぞ! ちょっと待て――!」


「サトウさん、暴れちゃ無駄だって。いい子にしてて?」


アルタは俺を片手でお姫様抱っこ(相手はおっさん)の状態に抱え直す。そして俺の首に手刀を落とした。



「……ちょっと寝ててね。魔王、倒してくるから。帰ったら、俺の愛の重さをたっぷり教えてあげる」


その声を最後に俺の意識は途切れた。
















 アルタは片手で佐藤を大切にお姫様抱っこして周りを15枚がけした結界を張る。そしてもう片方の手はしっかり聖剣を握り、魔王のいる部屋に突入した。


ドッカーン!!


 そこでは魔王、幹部2体、手下数十匹が待ち構えていた。


 魔王の側近が喋る。

〈勇者よ、よくここまで来れたな?今から魔王様がお前を倒……っっ!〉


「あーうるさいなー」

そう言いながら、剣を振るう。


〈グッ、グハッッツ……!〉

〈グッッ……ガァッッッ……!〉

〈〈〈〈〈〈…………ッッ…………ッッ…………………ッッ……………!!〉〉〉〉〉〉


一瞬にして、幹部と手下がやられる。





〈何っ…!?この勇者強すぎる!!しかも1人だぞ!!〉

とても豪華な玉座に座った魔王が、今まで出したことのない声をあげながら、恐ろしげに勇者を見る。



魔王軍の中でも最強の力を持っている魔王でもおそろい覇気や魔力などが周りに漂っていた。



ヒッ……!!

頭が働かない……!!


魔王はそう考えながら、できる限り精一杯勇者を睨みつけていると、ある一点が厳重な結界に覆われていることに気づいた。


勇者が何かを大切そうに担いでいる。

なんだ?人か?

今までに嗅いだことのない、とてもいい匂いがする。美味しそうだ。

ニヤッ

あいつを人質にして殺して食ったら、勇者の隙を着くことが出来る!!あんなご馳走を食べたら、格段と成長できるぞ!!


そうと決めたら、ヤルぞ…!!


美味しそうな人間に向かって魔王が触手を伸ばす。



魔王の狙いが腕に抱えている佐藤だとわかった途端、アルタのまとう空気がさらに険しくなった。



「魔王!!今、サトウさんを狙ったな!?魔王サマよー死ぬ覚悟は決まったか?手下たちと同じように一瞬で殺してやる……!!早く家に帰りたいし、佐藤さんをこんなところでなとこにいさせたくないしなー!!」



アレクがハイになって、キャラが少し壊れた状態で、片手で剣を振るう。



ザンッッ!!



〈グッ…グワーッッ………〉



アルタは魔王を真っ二つに切った。その後、念のために魔王を事細かに切り刻んだ。


アルタは、佐藤と早く家に帰りたいという思いで、本当に一撃だけで魔王との戦いを終わらすことができた。






「うう……ん…」

佐藤が唸り声をあげる、


アルタはハッとして佐藤を見る。


「わわわー。早くここから出ないとね。瘴気が充満してすごいすごい。佐藤さん、可愛いなあ。俺、魔王に勝ちましたよ。帰ったら褒めてくださいね。それじゃあ。安全なところに戻ろー!!」



 アルタは、一目散に魔王城から出て、途中、建物や残党を切り刻みながら、家に急いだ。










あったかい……


「うう~ん」と、唸り声をあげながら、俺、佐藤は目が覚めた。ここどこだ?ベットで寝ていたようだ。どこかで見た事はある気が……?久しぶりによく寝た気もする。


自分の手を眺めていると、あることに気がついた。


「うわ、裸!?」

俺は驚いて布団を精一杯かき寄せる。


「うっうう~ん」唸り声で気づいた。隣で誰か寝ていることに。


「うわー!!」


「うるさい…布団取らないでよ……

あっサトウさん、起きたんだ。よかった。目が覚めて。サトウさん、5日間ずっと眠っていたんだよ。死んじゃうかとドキドキした……」

そう言って、上裸のアルタに抱きつかれた。




アルタによると、アルタは俺を気絶させた後、しっかり魔王を倒して、魔王城を破壊させ、アルタがひとりで住んでいた家に俺をつれ帰ってきて、俺を寝かせたらしい。



「佐藤さん、寝顔、すごく可愛いかったよ」と言ったアルタは、俺が寝ている間ほとんどの時間を俺の顔を覗き込むことに使っていたらしい。



「……ところで、魔王城での話、覚えてる?サトウさん?」


「はっ!!」


そうだった忘れてた……!!!


「知ってると思うけど……俺、サトウさんのことが大好きなんだ。サトウさんは俺のことどう思って……」


アルタがグイグイ攻めてくる。


空気に耐えられなくて、俺は布団に顔だけ出した状態になって、声を絞り出す。


「ふ……き……くれ……く……て……れ」

「うん?サトウさん、なに?よく聞こえない」

「服き………させ…くれ!」

「服?」

「お前は早く服を着てくれ!そんで俺にも服を着させてくれよぉぉ……」

「わかった。服、着るね。サトウさんの服なんだけど……俺のサトウさんには大きすぎる服しかないけど、いい?」

「おう、とにかく何か着させてくれ……」

俺は懇願した。



アルタの服を着た後、「彼シャツ可愛い~!!」とアルタが彼氏でもないのにうるさく叫んでいた。




ちなみに、俺が着ていた前世のスーツはアルタがボロボロだと言って捨てようとしたが泣いて止めた。だから、現在はアルタの宝物庫に厳重保管されている。


「安物の布なんていらないよ。これからは俺が選んだ最高級のシルクと、俺の腕だけを纏っていればいいのに」ってよく分からないことを言っていた。


俺が起きた2日後には、アルタは俺にピッタリな服を買ってきてくれた。







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