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「……どうしたの? ご機嫌斜めね?」
「ああ、ちょっとな……」
ジオバールは言葉を濁した後、周りに人がいないか確認し、セシリアが出てきた部屋の二つ先にある部屋の前まで移動する。
そしてドアを開けると、セシリアを招いて、二人して室内に入っていった。
今は誰も使っていない衣装部屋で、ジオバールは閉めたドアを背に、セシリアは彼と対面する形で立った。
ジオバールは腕を組み、眉間に深い皺を刻みながら話し始める。
「テレスがアリストを今度の建国式典に呼ぶと言ってな」
「アリスト……って、ロッドベリルの団長、だったかしら?」
「ああ、そうだ、野蛮で不気味で……あんなキチガイのような奴を目にかけてる、テレスも頭がおかしいんだ」
「やだ……そんなおっかない人が来るだなんて、私怖いわ」
セシリアは大きな瞳を潤ませ、身体をくねらせて上目遣いにジオバールを見上げる。
するとジオバールは、セシリアに応えるようにその小さな身体を抱きしめた。
「安心しろ、セシリアはなにがあっても俺が守ってやるから」
「ありがとうジオバール、頼りにしているわ」
ジオバールの厚い胸板に体重を預けるセシリア。
二人の出会いは約四年前、ちょうどサンタウォーリアの戦争が終わった頃だった。
修道院の指導者である聖女たちは、たまに自分たちが目にかけている聖女見習いを連れて王宮に行くことがあった。
大聖女になる可能性を秘めた優秀な聖女見習いを、王や騎士たちに紹介するためである。
最も期待されていたセシリアは、毎度それに同行し、ジオバールと出会った。そして、他の騎士たちとも……。
「だけど、そのアリストは、そういう集まりは嫌いで参加しないと聞いたけど……」
「それが、ナターシャが一緒なら行くと言い出しやがったらしい」
「え……」
ナターシャ、という名前を聞いて、セシリアの顔色が変わる。
前世、セシルだった当時、貴族令嬢の間で流行していた本、その中の登場人物であった悪役令嬢にそっくりだったナタリー。
そのキャラクターと、意のままに生きる傲慢さを合わせて、いつしか『豪傑の悪役令嬢』と呼ばれるようになった。




