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その後も魔獣狩りで、ジオバールとアリストは何度か顔を合わせた。
しかし、やはりアリストが先に倒しているか、同時に戦い始めたとしても、アリストの方が素早く敵を片付けるの繰り返しで、ジオバールがアリストの前で活躍したことは一度たりともなかった。
五つも年下の、なんの権力もない魔術師に手柄を横取りされた、と思い込んでいるジオバールは勝手にアリストを目の敵にした。
そんな中、巻き起こったのが、サンタウォーリアの戦争だ。
ジオバールはテレスに、魔術師なんかに助けを求めるなとあれほど言ったのに、ロッドベリルは来てしまった。そして一瞬にして、戦況を覆したのだ。
本来はジオバールの立場なら、アリストに礼を言うべきだろう。国を守るミカエリアス聖騎士団長として『援軍感謝する、あなた方のおかげで国は守られた』と、恭しく頭を垂れて然るべき。
だが、ジオバールはアリストに感謝するどころか、また自尊心を踏み躙られたと逆恨みしている。
さらに、ティルバイトがアリストの領地になると、魔獣たちが集まり、ロッドベリルの者たちと共存を始めた。それにより魔獣の討伐依頼が減ったことも気に入らなかった。自身の活躍の場を奪われたと思ったからだ。
ジオバールにとって、大事なのは国ではなく、自分自身だけであった。
――アリストの野郎、このままで済むと思うなよ、絶対に一泡吹かせてやるからな……。
ジオバールが胸の内でそう宣った時、前方の廊下沿いにあるドアが静かに開いた。
中から現れた聖女服姿の女性は、部屋の方を振り向くと深々と礼をする。
そしてドアが閉まると、少し離れた場所から歩いてくるジオバールに気づいた。
視線が交わると、ジオバールは微かに目元を緩め、セシリアはニコッと微笑む。
ジオバールがセシリアの前で歩みを止めると、二人は向かい合う形になった。
「セシリア、王宮に来ていたのか」
王宮付きの大聖女であるセシリアは、たまに王族に呼ばれて宮中に足を運ぶこともある。
その理由のほとんどが、王の年老いた親族のケガや病の治療。足腰が悪いだの風邪を引いただの、ちょっとしたことでいちいち呼ばれ、ついでに世間話の相手までさせられるセシリアは、その都度イラついている。
だが、偶然ジオバールに会ったことで、怒りが鎮まり精神が安定する。
いつだって、自分の思い通りになる男の顔を見ると、セシリアは気分がよくなるのだ。
「ジオバール、こんなところで会えるだなんて、嬉しいわ」
以前のセシリアはジオバールに対して敬称と敬語を使っていたが、大聖女になった今は呼び捨てとタメ口になっている。
大聖女と騎士団長は同等の地位にあるため、これが自然なやり取りなのだ。
しかし、セシリアがにこやかに返事をしたというのに、ジオバールの方にはまだ不満そうな色が残っていた。
それを察したセシリアは、不思議そうに尋ねる。




