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セシリアは思う。こんなくだらない清貧な暮らしで、唯一いいことは、みんなが単純バカであることだと。
大聖女という肩書きだけで、清廉潔白だと信じて疑わない。
だから同じ建物に住んでいるというのに、マーラもリタも、セシリアの行いにまったく気づかない。
まさか、大聖女である彼女が、夜な夜な取っ替え引っ替え騎士たちを部屋に連れ込んでいるなんて、考えもしないのだ。
「ああ、可愛いね、セシリア、僕の大聖女」
ベッドの中で、セシリアはクスリと妖艶に笑う。
男だらけの詰め所で日夜厳しい訓練に励んでいる騎士たち、セシリアが擦り寄って靡かない者はいなかった。
とはいえ、セシリアが王宮に来てからまだ二、三日しか経っていない。
それなのにこの手慣れた様子は……つまり、今に始まったことでないということだ。
「本当に私を愛しいと思うなら……私のお願い、聞いてくれる?」
「ああ、ああ、もちろんだとも、君の望みならなんだって叶えよう」
自分だけが特別だと勘違いしている単細胞の男たちに、セシリアはお決まりの台詞を告げる。
「私……この国が欲しいの」
セシリアが大聖女になりたがっていたのは、決して国を守るためではない。
豪華な暮らしも多少は期待していたが、そんなものはオマケにすぎない。
一番の目的はソリスティリア王国を自分のものにすること。
女王や王妃、大聖女のままでもいい……とにかく誰も自分に逆らうことができない、贅を尽くせる権力者に上り詰めることが、セシリアの野望であった。
そして、セシリアはそれが叶うと信じて疑わなかった。
なぜなら、前世セシルであった頃、彼女はその野望を叶えたからだ。
前世の驕奢な暮らしに味をしめたセシリアは、転生した今世でもまた栄華を極めようと目論んでいる。
そう、セシリアはナターシャと同じく、前世の記憶を携えて生まれ変わったのだった。




