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「天災なんか滅多に起こるかっつーの、戦争なんて騎士がやりゃあいいことだし、魔獣狩りだってもうほとんど依頼もないのにさぁ、必死に修練しちゃってバッカみたい」
組んだ足に片肘をつき、頬杖しながら鼻で笑うセシリア。
これでも魔力はかなり高く、上級魔法も難なく使いこなす、優秀であるからこそタチが悪い。
だからこそ周りの者たちは揃ってセシリアを褒め称える。
特に先ほどいた先住の聖女……元大聖女であるマーラとリタは、セシリアに期待と信頼を寄せていた。
大聖女は同じ時に二人と存在しない、だからこそ価値があるのだ。
魔力テストは毎年行われているが、大聖女並みの魔力を持つ者は滅多に現れない。
だから一度大聖女になると、数年……長ければ数十年に渡ってその役を担うことになる。
次の大聖女が誕生すると、ようやくお役御免となるわけだ。
とはいえ、大聖女を退任しても、新たな大聖女のサポート役として、礼拝堂での暮らしは続く。
純潔を失うと魔力も消えると言い伝えられているため、結婚することも許されない。
つまり、大聖女になることは、一生を国に捧げるに等しかった。
「ほんと、くだらない制度よねぇ、聖女服も地味で貧乏くさいし……こんなの私に相応しくないわ」
セシリアは聖女服の胸元を摘んで見てみると、改めてつまらなさそうにため息をつく。
大聖女の衣装は他の聖女の衣装に比べて、装飾やデザインもやや豪華だが、この程度ではセシリアは満足できなかった。
だが、悪いことばかりではない。
――コン、コン、コン、コン
不意に訪れた気配が、礼拝堂の扉をノックする。
規則正しく四回鳴らされた音に、セシリアは口角を上げて教壇から降りた。
ノックの仕方で誰だかわかる。セシリアが関係を持った相手に、二人だけの秘密の合図だと言ってお願いしているから。
実際は、どの男が自分に会いに来たのか、即座に判断するための材料に過ぎないが。
セシリアは先ほどまでの不遜な態度を隠し、天使の仮面を被ると扉を開く。
すると、そこに立っていたのは、ミカエリアス騎士団の副団長、ジェレミオだった。
青年は礼拝堂に足を踏み入れるなり、セシリアを抱きしめ、熱っぽく囁く。
「ああ、セシリア、会いたかったよ」
「ふふ……私もよ、さあ、部屋に行きましょう」
セシリアは青年の抱擁を受け止めると、階段を上って当然のように三階にある自室へ招き入れる。




