6-21
漆黒のローブに身を包んだアリストと、純白の聖女服を纏ったナターシャ。
その色合いはアンバランスなようで、互いにない部分を補っているようにも見える。
身長差もちょうどよく、妙にしっくりくるような……ほんわかした空気に包まれる二人にガネットは思った。
「お兄様とお姉様って……すっごくお似合いだね!」
ガタンッ! と少し離れたキッチンから音がした。料理中のパトリックが手を滑らせたようだ。
ナターシャとアリストはしばし目を丸くしていたが、先にハッとしたアリストがフードを目深に被る。
お似合いという言葉は、男女のカップルに向けて使う台詞。それくらいアリストにもわかっていた。
――お、おにあい、オニアイ……ぼ、ボクとナターシャが……? な、ない、ない、絶対ない、ぼ、ボクは嬉しいけど、す、すんごく嬉しいけど、でも、な、ナターシャは……って、あれ? ぼ、ボク、ナターシャと、お似合いになりたいの……? ってことは……。
ものの数秒ほどで謎の解明に至ったアリストは、急速に気持ちを自覚して固まった、のち、うわーーー!! っとなる。
とはいえ、声に出しているわけではなく、頭の中で暴れているだけだ。
実際は背中を丸めて身体を縮こめ、フードで顔を隠してプルプル震えている。
まるで雨に打たれる捨て犬のようだ。
「……や、な、ナターシャには、ぼ、ボクなんか……」
「……わたくしはちっとも嫌ではありませんが」
「……へ?」
耳を疑ったアリストは、マヌケな声を漏らして、僅かに顔を傾ける。
するとフードから垣間見えたナターシャは、美しい姿勢で正面を向き、すでに口を結んでいた。
てっきり迷惑がられると思っていたアリストは、処理能力が追いつかずに脳みそがショートしそうだった。
ガネットの純粋な一言は、ナターシャにも思わぬ福音を招いていた。
――まいりましたわね、恋をするつもりなんてなかったのに……
ナターシャは自身の中に芽生えた感情を、刈り取るべきか育てるべきか迷う。
そのうちパトリックがフレンチのフルコース並みの料理を運んできたので、とりあえずみんなで食卓を囲むことにしたのだった。




