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「こ……これは……?」
「な、ナターシャの、ど、ドレス……ぼ、ボクが選んだ」
そのアリストの言葉で、ナターシャは彼がどこに行っていたのか、ようやく理解した。
そう、アリストは、ナターシャのドレスを探しに、衣装屋に行っていたのだ。
どうしてもナターシャと一緒に建国式典に行きたかったアリストは、ならば早く準備をせねばと急いだわけだ。
ナターシャはアリストからそっとドレスを受け取ると、間近でそれを確認してみる。
見れば見るほど美しい。露出を控えた上品さと、女性らしい可憐さが融合した、淑女に相応しい衣装だ。
なによりナターシャが驚いたのは、あまりにも自分好みだったこと。
自分が衣装屋にいても、絶対にこれを選んだだろうと言いきれるくらい、色合いもデザインもドンピシャであった。
「……なんて素敵なドレスなのでしょう、わたくし、紫が大好きなんですの」
「ほ、ほんとっ?」
気に入られなかったらどうしようと、緊張していたアリストは、ナターシャの言葉にパッと顔を上げた。
するとナターシャはアリストと目を合わせて優しく微笑む。
「ええ、まるでわたくしの好みをご存知だったかのようですわ」
「な、ナターシャに似合うと思って……」
「嬉しいですわ、ありがとうございます、アリスト」
嬉しそうにするナターシャを見ていると、アリストは買ってきてよかったと心から思う。と同時に、心臓が早鐘を打って、顔がポポポと温かくなってくる。
こんなことは、ナターシャに会ってからだ。
恋愛経験皆無のアリストは、ボクはなにかの病気になってしまったのだろうかと、ボケたことを考える。
「き、気に入ってくれて、よ、よかった……こ、これで、い、一緒に、行けるね」
「そうですわね……ところで、アリストの衣装はどうしたんですの?」
ナターシャの問いかけに「あ」と短い声を漏らすアリスト。
ナターシャのことばかり考えていて、肝心な自分の衣装のことは頭から抜け落ちていた。
「……わ、忘れてた」
「まあ、わたくしの分だけ用意して、ご自分のを忘れるだなんて……ふふふっ」
ナターシャはドレスを抱きしめながら、しょうがない人ね、といったふうに穏やかに笑う。
バカにする感じはまったくない、毒のない親愛に満ちたそれに、アリストはなんだか嬉しくなって、照れながら自分の頬を人差し指で掻いた。
そんな二人の様子を、ナターシャの隣でガン見していたガネットは。
――なんか、お兄様とお姉様、いい感じ……?
ナターシャとアリストに交互に視線を巡らせながら、すでに女の勘を光らせていた。
そんなギラギラしたガネットの目に気づいたナターシャは、あることを思い出す。




