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「知りたいですか、そうですか、そんなに聞きたいなら教えて差し上げましょう。私の生まれは貧乏商人の家でして、望まれなかった四男ということもあり、それはもう適当に育てられました。こんな親と同じ道には進みたくないと、商人以外の生き方を考えた時、騎士か魔術師が選択肢に浮かびましたが、私には暑苦しい騎士は生理的に無理だと思い、魔術師になろうと決めたんです。それで魔術学校に行ったものの、現実は甘くなく、私の成績は底辺レベルでよくいじめられました。そんな時、偶然通りがかった団長が、私を助けてくださったんです。当時、十七歳だった私は七歳の団長に感銘を受け、すぐに弟子入りを申し出ました。あの時の団長の虫ケラを見るような目は、今でもゾクゾクして忘れられません……」
「わあっ、すごい! 綺麗になっちゃった!」
「浄化の魔法でこのくらいの汚れならすぐに消すことができるんですのよ」
口から生まれてきたようなパトリックは、ここぞとばかりに饒舌に己の過去を語るが、残念ながら誰も聞いていなかった。
パトリックが話し終わった時には、ナターシャとガネットはすでに砂浜に戻っていて、ナターシャの浄化魔法で汚れた衣類が綺麗になっていた。
それにしても、十七歳が七歳に冷たい目で見られて興奮するなんて、さすがは筋金入りの変態だ。ガネットの教育に悪そうなので、聞かなくて正解だったかもしれない。
「それでは綺麗になったことですし、魚釣りでもしましょうか」
「でもあたし、魔力使えないから……」
「魔法を使う必要はありませんわ。竿は木の枝で作れますし、服の糸を使って、虫や貝なんかを餌にすればよいかと」
「お、お姉様、すごい物知り……! そ、それならあたしにもできるかな?」
「できますとも。たくさん釣り上げて、アリストを驚かせましょう」
「はい!」
ナターシャはガネットに合わせて、本来の魚釣りのやり方を教えた。
前世で漁師から聞いた話の受け売りだが、試してみる価値はあるだろう。
そもそも魔力を使って魚釣りをするなんて邪道だ。面白そうだから、ガネットがいない時にやってみよう。
ナターシャがそう考えていると、隣にいるガネットが、ふと先ほど立っていた場所を振り返った。
そこには目を閉じて胸に手をあて、自分の世界に入り込んだままのパトリックがいる。
彼が自分の話を誰も聞いてなかったことを知るまで、三、二、一……
「パトリック!」
ガネットが名前を呼ぶと、パトリックはパチッと目を開け、辺りをキョロキョロした。
そして遠巻きにナターシャたちがいることに気づくと、急にキリッと真顔になって、颯爽と歩き出す。




