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「……さま……」
「え?」
「お姉様……! お姉様と呼ばせてくださいっ!!」
今までの偉そうな態度とは打って変わって、ガネットは顎の前で両手を組み合わせると、潤んだ瞳でナターシャにズイッと迫る。
パトリックは、その光景に見覚えがあった。
アリストがガネットを助けた時も、同じようなことをしていたからだ。どうやらガネットは、敬愛する相手はお兄様やお姉様と呼びたくなるらしい。
予想外の展開に、大きくした瞳をパチパチさせるナターシャ。しかし、その目はすぐに優しげに細まった。
「別に、かまいませんことよ」
「あ、ありがとうお姉様! わぁいっ、あたしにお兄様だけじゃなくお姉様もできたー!!」
ナターシャの了承を得たガネットは、喜びを爆発させるように彼女の胸に飛び込んだ。
ナターシャはその弾みで後ろによろけそうになったが、どうにか耐えて体勢を整えると、クスッと笑ってガネットをそっと抱きしめた。
妹がいれば、こんな感じなのだろうか。
前世も今世も一人娘のナターシャは、姉と呼ばれ懐かれて、悪くない気分だった。
そしてガネットの方はというと。
――は、ハァハァ、お、お姉様……良い匂いがする……お、おっぱい大きいぃぃ……!!
ナターシャの胸に抱かれながら、変態オヤジのようになっていた。
もちろんこれは性的な意味ではなく、初めて母性に包まれて気持ちが高ぶっているだけなのだが、喜び方が独特である。
アリストやパトリックといい、ここにいる連中は見た目は綺麗なのに中身の癖が強すぎる。
「ガネットまであっさり懐柔してしまうとは、なかなかのものですね」
すっかりナターシャに懐いた様子のガネットを見て、パトリックが感心したように言った。
ガネット『まで』……ということは、他のメンバーも指しているのだろう。そこにはアリストや、パトリック自身も含まれているのだろうか。
「人聞きの悪い言い方をしないでくださいな……ですが、ガネットがアリストを尊信している理由がわかりましたわ」
「ガネットだけではありませんよ、ロッドベリルのメンバーはみんな、団長に救われたり憧れたり……各々の強い意志を胸に入団した者ばかりです……まあ、その中でも最も団長に心酔しているのは当然私ですがね」
「ああ、そう」
「私がロッドベリルに入団したきっかけは深い理由がありましたから……知りたいですか?」
「いや、別に」
なんだか雲行きが怪しくなってきたと感じたナターシャは、面倒事を避けようと適当に話を受け流すが、パトリックの暴走はすでに止められないところまで来ていた。




